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48話 静電気と《探知》

 


(《探知(サーチ)》)



 第一階層はやっぱり魔法が制限されている感覚だな。

 探知できる範囲が非常に狭い。

 前回と同様、《ロテックモイの逆さ塔》の第一階層は一本道だった。



(あまり教頭先生に魔法見せないほうがいいか。いちいち驚かれたり、質問されたりしても困るしな……)



 第一階層目に出てくるのは小鬼(ゴブリン)だけだ。

 花ちゃんに任せれば大丈夫だろう。



『花ちゃん、道中の魔物はお願いできるかな?』


『ちょうどお腹空いてたんだよねっ!』


『どんどん食べちゃいなー』



 あー……、出会う小鬼、出会う小鬼を蔓で巻き取って片っ端から丸齧りか。美味しそうに食べてるから何も言うつもりはないけど、う○い棒を食うみたいにサクサクと小鬼食べるのはどうなんだろうね。



 ちょうど夕飯時だったから相当お腹空いてたのかな。

 右肩でごりごりと噛み砕くような咀嚼音をさせながら食事をするのをやめてもらいたいところだ。

 俺の精神衛生上、非常に良くないと思う。



 間違いなく、「見せられないよっ!」っていう案件だ。

 たまに右頬に食い溢れの生肉がくっつくしな……。



「これがB等級冒険者ブラッティローズ……凄まじい食いっぷり……いや、戦いっぷりですね」



 ……また勘違いが広がってしまいそうだ……。



「下層への階段が見えてきましたね」



 昼間来た第一階層の最奥にある広場には変わらず、薄暗い下層へと続く階段が伸びていた。地下から吹き上がってくる風には腐臭が含まれており、非常に不快な臭いが鼻を蹂躙していく。





 ◇





『花ちゃん!右から大鬼人(オーガ)が二匹!』



 襤褸い布を身に纏い、頭部に二本の黒い角が生えた肌の赤い人型の魔物が、斧を片手に襲いかかってくる。

 その体躯は、俺の身長を遥かに上回っており、全身に纏う筋肉の鎧は、その恐ろしさをより一層際立たせている。



『はぁい! 《碧の鉄拳(ぐりーんちゃんくっ)》!』



 花ちゃんの蔓を幾重にも纏めた巨大な碧の拳は、斧を振り上げる大鬼人の頭部を捉え、拳と迷宮の壁面に挟み込まれた頭部は脳漿を撒き散らしながら砕け散る。

 次いで踊りかかって来た大鬼人は、振り下ろされた碧の鉄拳によって、潰れたカエルのように圧殺された。



「ふぅ……そんなに数は多くないですね」



 俺は基本的に何もしてないが、なんか疲れた気がする。

 《探知(サーチ)》で気を張ってるからだな!



「そうですね……五階層目までは大鬼人や豚頭人(オーク)などの人型の魔物が出てきますが、数はそこまで多くはありません。もしかしたらセーフティエリアのある五階層目まで、上手く逃げ延びてくれているかもしれません……」



 人型ね。豚頭人(オーク)はまだ良いんだけど、大鬼人(オーガ)は、本当に人に近いから、倒すのにしてもかなりの嫌悪感を伴うんだよな……。



 まぁ花ちゃんがあれよあれよと言う前に処理してくれるから、スプラッタ映画をみているくらいの気持ちで収まっているけど……。



 取り敢えずはこの辺の魔物なら花ちゃんだけで充分だな。

 教頭先生も何度かこの迷宮に来たことがあるようで、次の階層までの道案内を買って出てくれているので、俺は魔物の動向だけに注意している。



 先生は土魔術が得意らしい。タイミングよく盾のような土壁の魔法で敵の動きを阻害したり、地面から突き出る岩の棘で攻撃をしてくれる。



 確か《アースウォール》と《アースニードル》だったかな?

 なかなかの魔法だった。流石は教頭先生だ。



「この階層にもいないようですね……」



 既に四階層目までの探索を終えてしまった。

 次はセーフティエリアがあるという五階層目だ



「くっ……! どうか無事でいてくれ……」



 教頭先生も焦りが募って行くようだ。

 しかしここまで手がかりの一つもない。

 これが無事に生き延びてくれている証拠だと良いのだが……。



 第五階層に降り、教頭先生の案内の元、奥へ奥へと進む。



「おかしいですね……五階層目に入ってからそれなりに時間が経ちましたが、魔物が一匹もいません」



 言われてみれば確かにそうだ。

 先程から《探知》に引っかかるのは一匹の大型の魔物の反応だけ。生徒を含め、そのほかの反応も一切ない。



「確かに妙ですけど、生徒たちの反応もありませんね」



「そうですか……。後はこの階層の端にあるセーフティエリアに賭けるしかないですね……」



「教頭先生、彼等がすぐ引き返して、帰ったってことはありませんか?」



 正直言うとここまで探していないとなるとその可能性の方が高いようにも思われる。

 《ロテックモイの逆さ塔》から魔法都市までは馬車で半日の距離だ。もしかしたら入れ違いになっているんじゃなかろうか。



「その可能性もあります。いや、そうであって欲しいのですが……。それにここ五階層目はボスフロアです。ボスを倒さないと更に下層に行く事はできないので、彼等にこれ以上進むことができるとは思えません。なのでこの階層を調べ終わったら一旦戻りましょうか……」



 引き続き探索を続けたが、結局セーフティエリアにも生徒たちの姿はなかった。

 とは言っても《探知》で全体を見てるので、行っても行かなくても居ないのはわかっていたんだけどな。



 その後も上手く、徘徊している大型の魔物を避けながら、何か手がかりが無いかと五階層目を探索したが、やはり痕跡は見つからなかった。



 心の何処かで生徒たちは既に、亡き者になっている可能性も考えたが、血液や装備はおろか髪の毛一本でさえ迷宮の中では見つけることができなかったのだ。



「やっぱり居ませんね……。仕方ないです。地上に戻りましょう。無事に魔術学校まで帰ってくれているといいのですが……」



『花ちゃん、もどるよー』



『………………』



『花ちゃん? どうした〜?』



 返事がない、ただの屍の……って違う違う!

 あれ〜? ちょくちょく動いてはいるから寝てるのかな。

 この階層に来てからは、戦闘も無かったし四階層目までに食いまくってたからお眠の時間かもしれない。



「ベックさんどうかしました?」



「いえ、花ちゃんが寝ちゃったみたいで」



「そうですか」と柔和な笑顔で俺の右肩にいる花ちゃんを撫でる教頭先生。



「じゃあ戻りましょうか」



 俺が四階層目の階段に向かって歩き出そうとすると、



「あっ、すいません。戻る前にちょっと用をたして来ても宜しいですか? ちょっとそこの角部屋で……直ぐに戻って来ますので」



「了解です。じゃあここで待ってますね」



 まぁ五階層目は一匹しか魔物はいないし、それも離れてるから大丈夫だろう。それに角部屋は、セーフティエリアだ。魔物も出ることはないだろうしな。



 あっ《探知》しっ放しだと、何してるか分かっちゃうな。

 おっさんの大便シーンや放尿シーンなんて見たくもないから切っておくか。



 ん? 待てよ。という事は、だ。

 街中でも《探知》付けっ放しにしておけば!

 誰がどんな事をしてるかよくわかるな……。

 xxx的な事やxxx的な事ができるかもしれん!

 いや、しかし、俺にも良心の呵責っていうもんがある。

 公序良俗に反する事はあまりしたくはないが……。

 帰ったら試してみますかね! グヘヘ。



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