３０話 静電気と極限集中状態
（あっ……やっべえ……）
前方と両脇から飛竜の鋭い凶悪な爪が迫りくる。
背後は村の切れ目。
ここは巨木の樹上、踏み外せば、即、地面に真っ逆さまだ。
両脇からの鉤爪を回避しながら、この窮地を突破するには前に進むしかない。
失敗すれば死しか待っていない。
大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
前方の飛竜を倒すことに集中する。
勝負は一瞬だ。
「雷槍」
思えば牛頭人王の時もそうだ。
いつも窮地をこいつが救ってくれた。
右手にぎゅっと力を入れて、前方にいる飛竜と対峙する。
はぁ……ふぅ……。
もう一度深呼吸する。
感覚が研ぎ澄まされていく。
周囲の景色が灰色になり、目に映るのは今にも襲い掛かろうとする飛竜の鉤爪。
一歩前に踏み出す、体が軽い。
今迄にあった、体の動きと意識の違いがなくなり、自然に体が動き出す。
すげえ。なんだこれ。
思い通りに体が動く。
それに周りがゆっくり動いてる。
俺だけ時間がゆっくり流れているみたいだ。
あっ、右脚が動き始めた。
これ、俺の頭狙ってやがるな。
ちょっと右に頭傾けてっと。
ん？ 翼も後ろに下がってるし、頭がら空きじゃん。
なんかライダーキックしてるみたいでウケるなこいつ。
ちょっと《雷槍》を進行方向に構えてやれば……っと、ほら見ろ。
うはは、どんどん頭に突き刺さっていくぞ。
槍を前に突き出してるだけだから、楽ちんだな。
む、引っこ抜くのめんどくさいな一回解除するか。
おしおし。
んじゃあ、お次は左側のこいつだ。
「雷槍」
横側に移動してっと。
ぷっ。なんだこいつ。
着地の瞬間だからか、う〇こ座りしてるみたいだな。
首が丸出しだよーん。
それじゃあ、下から槍を構えましてっと。
上に向けて振り上げましょう。
よしよし、勢いもあったからよかったな。
バターみたいに、ぬるっと切れる。
最後はこいつだな。
むむ。
生意気にも飛び立とうとしてるな。
逃がさないよ～。
上から振り下ろしてっと。
あぁ……そんなに勢いよく首を挙げると切れちゃいますよー……って遅かったか。
よしよし、これで全部だな。
あっ畜生！
埃が目に入った。
こいつら足場を壊しやがって！
埃が舞うじゃねーか！
埃を取り去るように目を擦ると、先程とは違う光景が目に飛び込んできた。
時間がゆっくり流れているような感覚は消えていた。
五十メートルほど先には、花ちゃんとライラたシフロム族の面々がこちらを見ていた。
「おーい花ちゃーん！ そっちは大丈夫かー」
あぁそうか。
花ちゃんは触れてないと会話できないんだった。
巨木の上から飛び降りる。
高さは十五メートルほどあったが、何となく大丈夫な気がしたので飛び降りた。
無事に着地し、体にはどこにも異常はない。
不思議な体験だったな。
なんかスポーツ選手とかがよく言う《極限集中状態》ってやつかも。
脳が研ぎ澄まされているような感覚だった。
脳って神経幹細胞の情報伝達は電流で伝えられてるんだっけ。
意識して脳内に電気信号を流せばこの状態って作り出せるのかな。
こんな感じか？
脳内で電気が行き来するのをイメージしてっと……。
ついでに目をつむってーっと。
魔力で電力の流れを高速操作する。
目や耳、鼻、口、皮膚、筋肉、肺、心臓、etc……。
むむ。むむむ。
感覚神経が研ぎ澄まされていくのがわかる。
花ちゃんやライラたちの動きがゆっくりに見えるぞ！
忘れないうちに名前つけて、スキル化しておこう。
「極限集中状態」
その後、滅茶苦茶、鼻血噴いた。
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名前 別宮洋也 年齢 27
職業 D級冒険者 魔物調教師：魔界草変異体
身分 ―――
能力値 Lv61
【体力】B+
【魔力】A+
【筋力】B+
【敏捷】S
【頑丈】B
【知性】G
【ユニークスキル】
静電気Ex（MAX） 魔法創造
【パッシブアビリティ】
異世界言語 体質強化 魔力操作Ex（MAX）
【アクティブアビリティ】
放電Ex（MAX）魔法：雷銃Ex（MAX） 魔法：雷槍Lv4 魔法：雷装鎧Lv3 魔法：電弧放電Lv2 魔法：神の裁きLv１ 身体強化魔法：極限集中状態Lv１
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