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27話 静電気と森の民人 ②

 

「ベック、起きてるかい?」



 扉の向こう側から聞こえる声の主は、銀色の髪が美しい褐色肌の美女、ライラだ。



 昨晩、夜更けに俺の宿泊している空き家に訪れた彼女は、「父さんを探すのを手伝ってほしい」と頼まれた。



 初めはすわ夜這いか!と思いちょっとドキッとしたがエロい事はなにもなかった。アニメじゃあるまいし、そんな展開はなかなかないのだ。



 ライラの父親たち、ヌウォル族の狩人であり、職人でもある彼らがいなくなったのは一週間前の事だ。その彼らを探す手伝いをする事になった。



「おはようございます。今開けますね」



 カンヌキを抜いて扉を開ける。

 昨日夜とはうって変わって、虎の頭付きの毛皮のマントを羽織った、狩人姿のライラがたっていた。



「おはよう。昨日はよく眠れた? もし良かったら朝食一緒にどうだい?」



「大したものは出せないけどね」と、苦笑いするライラ。



 外に出て辺りを見回すと、昨日は気が付かなかったが、住居の他に、狩猟した獲物を解体する解体場や、解体した獲物を加工したり皮を鞣したりする作業場、洗濯や身体を浄めるための水場や、食料庫などが見て取れる。



 村の中心部分には食堂があり、そこには、女子供が二十名程集まって食事をしている様だ。



 食事はお世辞にも旨いと言えるものではなく、豆と少量の肉を煮込んで、塩で味をつけただけのスープのみだった。



 食堂の空気は重く、黙々と食事をしている。



 食事を終えた者から一人一人と席を立つ中、髪をお団子状にまとめた八歳位の女の子がポツリと、それこそ小さく溜息を吐くように「もっと食べたい」と言った。



 目線をライラに向けると、慌てて「我慢しなさい」となだめる様に言った。



「食料……足りてないんですか?」



 ライラは「ちょっとね……」と困ったように、バツが悪いように呟いた。



 俺は無言で立ち上がり、食堂の外に出ると腰にぶら下げてあるマジックバッグから、森林狼や森林虎を数匹、そして買い溜めしておいたちょっと硬いパンを取り出した。



「ちょっ、ちょっと! そんなものどこに持ってたんだい!?」


 ライラは大きく目を見開いて驚いている。


「俺が馬鹿でした。狩りに行けないって事は、買い出しにも行けないって事ですよね……それなのに、貴重な朝食だって頂いちゃって……」



「アンタ本当に何者なんだい? 森林虎なんてうちの熟練の狩人達が、大人数で追い込んでやっと一匹狩れるか狩れないかの獲物だよ。しかもこの量をこんなに綺麗な状態で、狩れるなんて只者じゃないよ……」



 今出した、魔物は俺が《雷銃》で頭部を一撃で撃ち抜いた魔物だから、比較的損傷は少ない。

 迷宮とは違い、壁や地面に吸収されることもないので、花ちゃんのご飯としてマジックバッグに確保していたやつだ。



 マジックバッグの中には花ちゃんが仕留めた魔物も入っているが《凶悪な蔓(ローズウィップ)》によってズタズタになっているので、出すのはやめておいた。



 魔物の肉は、魔物が強ければ強いほど旨い。

 それは魔力が関係しているようだが、詳しいことはわからない。多分だがこのムエスマ大森林の魔物はボラルス周辺のウルフなんかよりずっと手強いため、きっと不味くはないはずだ。



 俺は「ただのD級冒険者ですよ」とカッコつけておいた。

 いつか言って見たかったんだよね。このセリフ。

 決まったかな? グヘヘ。



 先程「もっと食べたい」と呟いた女の子が駆け寄って来る。



「これ……食べても良いの?」と麻袋に入ったパンを持って聞いてくる。



「もちろん!まだまだいっぱいあるよ!皆さんも是非」



 俺がそう言うと周りで様子を見ていた子供達や女性陣も駆け寄ってきて、お祭り騒ぎだ。



 ライラは「本当にいいのかい?」と聞き直してくるが、俺が「カッコつけさせてください」と言うと周囲にいた女性陣達に指示を飛ばす。



「みんな!ありがたく頂戴しよう!パンは食堂に!魔物は解体場だ!昼食には間に合わせるよ!」



 そう言うと村が一気に活気付き、今まであった暗い雰囲気はどこかに飛んでいった。



『花ちゃんのご飯。ごめんな? パパまた頑張って魔物倒すから』



『パパ、凄くかっこいいよ』



 涙が出そうになった。



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