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204話

 


「もしかしてお前、それが原因で花ちゃんが居なくなったと思ってんのか?」


 ライアはコクリと頷いた。


(なるほど……)


 よくよく考えれば、全く動く事のできない繭の状態の花ちゃんを、危険蔓延るドルガレオ大陸に放置出来るわけがない。


 誰かがその場で見張っていたからこそ、ライアが俺たちと行動を共に出来ていた、と言う事だった訳か。

 ライアはその事を後悔している。

 合わせなければ花ちゃんが魔王になることはなかった、と。

 

 だが──、


「それは違うと思うぞ。ここ数日、花ちゃんが居なくなった原因を俺も考えてみたんだよ。花ちゃんと俺がスウマーに昔会ったことあるって言ったよな?」

「あぁ、ボラルスの近くの迷宮で会ったって言ってたな」

「多分、俺らとアイツはもっと前から出会ってるんだよ」

「もっと前に?」

「正確には出会ってないんだけど出会ってるんだよ」

「は? 言ってる意味がわからないぞ」


 俺と花ちゃんの出逢いはあの戦場跡地だ。

 今でも鮮明に覚えている。

 あの盆地に咲いた色とりどりの草花の中で、ひっそりと咲いていた花ちゃんの姿を。

 初めて俺の事をパパと呼んだあの日の事を。


「花ちゃんは、俺が小鬼王と戦った場所に咲いていたんだよ。戦場に散らばった小鬼たちの血肉と、俺の魔力を吸って変異したんだ」

「つまり?」

「つまり、その小鬼王はスウマーの造王薬で強化された魔物だったって事」

「あっ」

「そう、わかった? 造王薬はアイツの血液を使って作られてるんだろ? じゃあ花ちゃんがその血を吸っていてもおかしくないし、遅かれ早かれアイツの魔法なら、血を吸った花ちゃんを操ることが出来たって事なんだよ」

「そうか……」

「だから花ちゃんが居なくなったのだって、魔王と呼ばれてるのだってお前のせいじゃない。気にするなよ。どうせドルガレオ大陸の何処かにいるんだろうしな」


 魔族の赤い目や花ちゃんの姿はこの大陸じゃ目立つ。

 ライアの様に容姿を変えられる魔法を使えるなら別だが、そうじゃなければ慣れ親しんだ土地にいるはずだ。


「恐らくだがマノス城の跡地にいると思う」

「オーケーオーケー。マノス城な。そうと決まれば連れ戻しに行くか! 確か城跡って大陸の中心だよな?」

「馬鹿! 連れ戻しに行くかじゃない! あの時は運良く助かったけど、そう何度も幸運は続かないよ。あんな戦い方してたら命がいくつあっても足りないよ。学校で属性について何学んだんだい!」


 湯船から飛沫をあげて立ち上がるライア。

 またしても豊満な双子山が揺れ存在を主張する。


「あー!! だから立ち上がるな! おっぱ! おっぱ!」

「何を恥ずかしがってるんだ。この童貞が! あたしの胸より見ておかなきゃいけないものがあるだろ!」


 少しばかり元気を取り戻した彼女は、どこか明るい笑顔でこの間の戦闘の反省会を始めだした。

 ララが気を利かせて飲み物を持ってくる。

 黄色で炭酸の効いた飲み物をグビリと口に含んだライアが語る。


「いいかベック。 属性の相関関係って言うのはだな? 一方の属性の威力が──」


 ……これは長風呂になりそうだ。





 ⌘





 そこは栄華を極めた夢の跡地、ドルガレオ大陸の中心にて魔族の手によって栄えていたマノス王国の王城があった場所。


 その城の煤けた応接間には複数の影が見え、今は崩れ見る影もない石造りの椅子に座った少女と、それに傅く黒衣の男の姿。


 崩れかけた城の応接間には日差しが差し込み、薄っすらとその場を照らすと、その明かりは少女の両側にいる、人ならざる姿をした何かをはっきりと映し出した。


 一人は汪溢たる業焔、炎の精霊神フレイ。

 時折青く揺らめく焔は周囲を明るく照らすが、不思議と熱を感じず怪しく揺らめくのみ。


 一人は静謐なる清流、水の精霊神アウラ。

 淀みなく流れる人の形をした水は、全てを包み込む様に悠然と佇み波紋を起こす。


 一人は荘厳なる大地、土の精霊神ガイア。

 全身に根を張った木々、隆起した岩肌は床を打ち鳴らし、肥沃な土の香りを周囲に匂わせている。


 一人は暴慢たる剛風、風の精霊神ストーム。

 荒々しく吹き荒れる風が風化しかけたカーテンを崩し、石柱を刃物で斬り裂いた。


 目の前にいる人智を超えた存在の前に、黒衣の男は額に浮かべた汗を床に落とし頭を垂れた。


 応接間を埋め尽くす圧倒的な存在感と魔力の奔流。


 この寂れた応接間、黒衣の男の向かい側には四体の精霊神と少女の姿をした魔王が居た。


「申し訳ございません、魔王様」

「気にするな」


 圧のある、低い男の声が応接間に響く。

 続いて、甲高い声が崩れた玉座の横から聴こえ、透明な水分がスウマーの頬を撫でた。

 水の精霊神アウラその人だ。


「あれだけ言ったのに、何で余計な事するかなぁ〜。スウマー?」

「たかが人間相手に戦って、おめおめ戻ってくるとは情け無い」


 先程まで頬を撫でていた水はゆっくりとスウマーの首を絞めていく。スウマーは徐々に絞まりゆく自身の首を意識しつつも、謝罪の言葉を述べた。


「も、申し訳ございません。アウラ様、ストーム様。ミニーが余計な事をしたばかりに……」

「二人ともよせ、無事に戻っただけで何よりだ」

「魔王様……、お心遣い感謝いたします……」

「だが、次はない。そこの所を覚悟しておけ」

「ははっ」

「時は満ちた……。スウマー、全世界へ宣戦布告せよ。そして知らしめるのだ、あの日人族が我々にした事を」


 少女の口から発せられた似つかわしくない言葉。

 その言葉は応接間の暗がりに解ける様に響き消えていった。


次回更新は2019年6月5日になります。

よろしくお願いします。

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