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199話 魔女と魔法使い

おはようございます。

 


 ベックとニミーの戦いが始まった頃、雷鳴轟くその場所から少し離れたところで、睨み合う二つの影が草原にあった。


 激しくぶつかり合う二人とは対照的に、月明かりに照らされた二人の立ち姿はとても静かなものだった。


「助けに行かなくて宜しいので? このままではあの小僧、ミニーの前に屍を晒す事になりかねませんよ」


 心にもない事を言うスウマーのその言葉を受けて、雷光煌めく戦場にライアは目を凝らした。


 その眼に映るのは危なげない様子で、巨狼の攻撃を避けるベックの姿。

 戦況を何とか捉える事のできた彼女の双眸には、圧倒的にベックが優位である様に写っていた。


「敵の心配とは随分余裕だな。 あいつを甘く見たダークエルフがどうなったか覚えてないのか?」


 それを見たライアは言い返した。

 皮肉たっぷり、に。


「相変わらず口の減らないお方だ。まぁ、あちらの決着はすぐ着くでしょう。その時、貴女の顔が絶望に染まってゆく姿を見るのもまた一興」

「あいつは強いよ。そう簡単にやられはしない」


 現に今、恐ろしい程に早く動く、巨大な狼を完全に翻弄している。


「随分と信頼しているようですが、あの小僧は人間です。つまり奴は我々の敵の筈。貴女ともあろう方が、人間に何をされたのかお忘れですか?」


 スウマーの言葉に、一瞬だけ心臓の鼓動が跳ね上がる。

 思い出されるのは、好いた男の優しい笑顔。


「忘れてない。忘れられるはずがないだろう!」

「だとしたら何故!」

「何度も説明させないでくれ……。復讐は何も生まない。それを私は今更になって理解したのだ。あの男のお陰でな」


 ライアは夜空に幾度となく飛び立つ、目が眩むほどの雷光をじっと見つめた。





 ⌘





 その光を見つめる、亡国の女王の顔は、憑き物が落ちたかの様な晴れやかなものだった。

 しかしそれはスウマーにとって、酷く滑稽で許せないものに見えて仕方がなかった。


『裏切り者』


 スウマーの心をどす黒い何かが満たす。


 自分が今まで、どんな思いでこの日を待ちわびていたか。

 敬愛する王を守れなかった夜。

 血が滲む程に拳を握りしめ、復讐を誓った夜。

 共に声を上げ泣いた夜。

 燃え行く国を、死に行く民を守れない、自身の力の無さを呪った夜。


 いくつもの夜を乗り越えてきた。


 辛酸を舐めた日がいくつあった?


 魔界と呼ばれるドルガレオ大陸の過酷な環境で、魔物を食らい、泥水を啜って生き延びてきた。


 自身の血液でもって人族を、否、フォレスターレ王国、オレガルド大陸を滅ぼす為に造王薬を研究し、ようやくここまで来た。


 それを、それをこの女は台無しにしようとしている。

 いつの間にか情にほだされ、あまつさえ、魔族の仇であるはずの人族に肩入れしているではないか。


(許せない……)


 苦しかった日々も、復讐の為なら耐えることが出来た。


『王の無念を晴らす』


 ただその事だけを考えてきた。


 数百年間、消えることのなかったこの憎悪の炎は日に日に大きくなり、そして今日、この日を迎えた。


 魔族の再興。

 迫害されてきた一族の復讐を成し、この豊かな地で、魔族の手で国を再興させる。

 その宿願が、もう目の前までやってきているのだ。

 ここで引くわけにはいかない。


「新しい魔王様の元、マノス王国を再建する。その為だけに我輩は今日まで生きてきたのです。最終勧告です。女王陛下。国を再興させましょう」


 そう話しかけると、女王陛下は俯き、首を左右に振った。


「やり方が間違っているの、スウマー。一つの国を滅ぼし、そこに新たな国を成しても意味がないのよ。力づくで国を手に入れても、人族は恐怖で支配された生活を送るうちに、きっと昔と同じ様に我々を迫害し、新しく建国された国も、マノス王国と同じ道を辿ることになる。フォレスターレ王国を滅ぼして建国しても、きっと他の国が攻め入ってくる。暴力は暴力しか生まないのよ。それがわからないうちは平穏な生活なんて送ることが出来ないのよ」

「そうなったら戦えばいいだけの事。優しかった王は、それが出来なかったからマノス王国は滅びたのです。だが新たな王は違う。我々の宿願を達成することが出来るほどの力がある」

「……スウマー……。私には出来ない」

「……そうですか、ではここでお別れです。ライア様には新しい国の贄となって頂きましょう。安心してください、殺しはしません。貴女には、子を成していただかなくてはいけませんから。なぁに、私の操血魔法で孕み袋になって頂きますよ。そう、小鬼に捕まった哀れな弱者の様にね」

「なっ!? なんだ……とっ!?」




 その時──、地面が揺れた。




 地中から水柱が噴き上がり、生意気な小僧の全身を包み込んだ。

 どうやらニミーはうまくやってくれた様だ。


「ベック!」

「よそ見している暇はありませんよ!」


 裏切り者を捕獲する為に闇の棘を飛ばす。

 最悪手足は無くたっていい。

 魔族を再興させる、その為だけに存在して貰うのです。


次回更新は、2019/05/21になります。

よろしくお願いします。

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