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192話 雷雨

 


 蒼白い雷光が戦場を横切ると、黒兎を取り囲んでいた多くの魔物達がバタバタと倒れ始めた。


 斧を振り上げていた小鬼王(ゴブリンキング)は口から煙を吐いて膝をつき、兎足に食いつこうとしていた豚頭人王(オークキング)はその身に詰まらせた贅肉を爆散させる。正面門の半分を占める巨大な四足歩行の大きな蜥蜴は、雷撃により四肢と尾の先を炭化させ達磨になった。


 広範囲に広がった稲妻が次々と魔物を焼き払い、周囲に肉の焼ける匂いが立ち込めると、冒険者からの歓声が上がった。


「《雷帝》だ! 雷帝ベックが来てくれたぞ!!」

「助かった! これで百人力だ!」

「今のうちにギルマスを治療しろ! ギルマスが復活すればこの戦い勝利したも同然だ!」

「いくゾォ!! 雷帝の攻撃に巻き込まれるなよ!!」


「「「「おう!!!!!」」」」


 勢いづいた冒険者たちは、各々の仕事を全うするため駆け出してゆく。


 《探知》を最大まで広げ、戦場全体の状況を把握する。

 危ない冒険者には助け舟を出しながら、造王薬の影響で何倍にも強力になった筈の魔物達を肉塊に変えていった。


「おーいノーチェ生きてるかー!」

「生きてるわッ! 勝手に殺すな!」


 自身にもたれ掛かる豚頭人王を蹴り飛ばし、魔物の山の中から黒い耳がぴょこんと現れた。


「お前半年間もどこいってたんだよ! お前のせいで花ちゃん家出して帰ってこないんだからな!」


 どこって聞かれでもなぁ……。

 神様に会ってたなんて言っても信じて貰えないだろうし……。

 適当にスルーしておこう。


 いや、そもそもこの世界における神様の立ち位置ってどんなもんなんだ? なんか精霊神の方が崇められているような気がするんだが、この世界に顕現しているかしていないかって話なのだろうか。


 信仰対象になりそうな女神像だって、《海底火山》のあの階層以外に見たことないし。


 ……遠くの有名店より近くのコンビニみたいなもんかな。

 いきなり社長に呼び出されるより、部長に呼び出された方がドキドキするもんな。まぁ間違いなく会話にならない気がするわ。


「あぁ、その話はライアに聞いたよ。こいつらさっさと始末して、家出娘を探しにいかねぇとな」

「始末って……、そんなに簡単にはいかねぇぞ。まず、この魔物の大群をなんとかしねぇといけないし、こいつらを倒すことが出来ても奥にはヤベェ奴等が三人も居る。特に黒いローブの男はヤベェ。ありゃ別次元だよ。思い出すだけで嫌な汗がとまらねぇ」


 ノーチェはそう言うとブルリと身体を震わせた。

 その目には若干の恐怖の色が見えており、視線の先、魔物を超えた奥には三人が動き無くどっしりと構えているのが見える。


「そいつはライアがなんとかする。俺たちは魔物と残りの二人をなんとかしようぜ」

「ライアさんが? ライアさんもすげぇ魔法使いだけど流石にあいつには勝てるとは思えないんだが……。ギルマスもあんな状態だし、まだまだきついのには変わりねぇよ」

「なんだよノーチェ。ライアの本気、見たことないのか? あいつはおっかねー女だぞ」


 俺が震えるような素振りをすると、背後から「おいベックよ。聞こえているぞ」と言う声が聞こえてきた。


 直後、突風が吹いたかのように魔力が膨れ上がり、ライアを中心に魔力の奔流が生まれ始める。


 その膨大な魔力は、まるで砂漠で見える蜃気楼のようにライアの周りで揺らめき、本来見えない筈の魔力を可視化させる程だった。


 その圧倒的な魔力にノーチェを含む冒険者達はごくりと息を呑み、額からは大粒の汗を流した。特に驚きの表情を見せていたのは魔法使いたちだ。攻撃の手は止まり、ライアをただただじっと見つめている。より魔力に敏感な魔法使いだからこその反応なのだろう。


「相変わらずすげぇ魔力だな。魔法学校の時を思い出すよ」

「今更褒めても許さん。これが終わったら覚えておけよ」

「ライアさん、今まで本気じゃなかったのかよ」

「そんな訳では無いがな。まぁ今回は流石に目に余る。しっかりとけじめをつけてくるとするよ」

「よっしゃ! いっちょ気合い入れて魔物を倒すとすっか!」


 ノーチェは脚甲で地面を蹴ると、冒険者達を鼓舞するように「いくぞ! お前等!」と大声を上げた。


「そんじゃまぁ、俺も行くとするかねぇ」


 右手を前に突き出し放電する。

 バタバタと倒れていく魔物たちを見ながら、自身の確かな成長を確かめていた。

 雷化を経験してからと言うもの、身体を思った通りに動かせるようになった気がする。


 放電した電力を自在に変化させ、様々な形を作る。

 剣、斧、槍、鞭、弓、盾など瞬時にイメージ通りに変化させ魔物を屠っていく。


 魔法名の詠唱すら必要としないこの変化は非常に役に立つ。


(電力を溜めて、解放するイメージ……。地面に叩きつけるように……)


 魔物たちの頭上、遥か上空に蒼白い太陽が浮かび周囲を照らす。


 ゴロゴロと雷鳴を轟かせ、上空の雨雲を焼きながら大きくなっていく雷球が天で弾けた。


「千火万雷」


 城壁の外、魔物の大群に雷の雨が降り注いだ。

次回の更新は2019/04/30になります。

まだ仕事が忙しく安定しません(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

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