191話 合流
荒波のように押し寄せる魔物の群れ。
ひっきりなしに正面門に殺到する、凶悪な魔物達。
街中に入れない様に大勢の冒険者で迎撃する。
正面門には魔物の死体が積み上げられるも、魔物達は気にする様子もなくそれを踏みつけながら進んでいく。
まるで何かに怯え、逃げる様にただひたすら前を向いて襲い掛かってくるのだ。
ぐちゃり、ばきり。ぐちゃり、ばきり。
一歩一歩と魔物が歩を進めるたびに、肉が潰れ、骨が折れる音が聞こえてくる。
戦場は地獄絵図とも言える様な様相を呈していた。
「くっ! キリがねぇ! この魔物、後どんくらいいるんだよ!!」
「ここからじゃ正門の奥は見えねぇ!」
「弱音吐く前に戦え!! このままじゃこの国が滅びるぞ!!」
「そのデカイのに気を付けろ! 酸を飛ばしてくる! ローブに穴が空いちまった!!」
「負傷したやつは下がれ! 治癒士は防御魔法と負傷者の手当てを!」
「ギルマスの治療を急げ!! 《薬師》のフォローをするんだ!」
斬っても、砕いても、貫いても、躊躇なく仲間の屍を踏み越え、そして踏み躙りながら進む魔物に、屈強な冒険者達の顔に恐怖が見え始めた。それでもなんとか身体を奮い立て、徒党を組み、声を掛け合う事で冒険者達は戦線を維持しながら戦う。
(どこ見てんだこいつ……)
先程まで激昂していた勇者アキラ=ハカマダは、空の一点を見つめたまま動かなくなった。
(このまま動かないならそれで良い。ボッーっとしてるならほっときゃ良いさ)
ノーチェは視線を魔物に飛ばした。
最大の障害だった勇者アキラが動かないのならば、今のうちに攻め入ってくる魔物達の数を減らすだけだ。
正門に攻め入ってくる魔物は一匹一匹が強力な魔物だった。
小鬼の最上位種である小鬼王を始めとした、普段この地域では見かけないような迷宮中層以降のボスクラスの魔物がウヨウヨしていた。
正門が魔物で詰まっている今が、少しでも魔物を倒すことが出来るチャンスだった。
(ここは絶対に突破されちゃいけねぇ!)
一匹でも魔物を減らす為、駆け出そうとした時、
ブルリッ。
急激に背筋が冷たくなり、思わず身慄いをした。
目の前で相対する勇者アキラからでは無い何かから、身の毛が弥立つような悪寒を感じる。
手入れの行き届いた艶のある黒い体毛が、ひっくり返ったように逆立ち、腕にボツボツと鳥肌が立つのがわかった。
(なんだ!? 何か来る!)
王城の天辺に雷が落ちてから数分。
一点を見つめて動かなくなったアキラの足元に、不自然に蠢く影が広がった。
その濃い影からズズッと漆黒の外套を羽織った男が現れた。
「アキラ、随分と醜い姿になったものだな」
(新手か!?)
低い嗄れた声が聞こえる。
激しい戦闘音と、魔物の遠吠え、そして冒険者達の怒号が飛び交うこの戦場で、その声は不自然なほどはっきりと聞こえてくるのであった。
(もしかしてライアさんやられちまったのか!?)
王城へ向かった筈のライアが居ない。
そこに現れた現れた圧倒的強者。
その考えが頭を過るのは必然的だった。
「ウルゼェ、しゴドはしたぞ。はやぐあいヅらを──」
「たかがエルフを一匹倒したくらいで何を言っている? 残念な事に厄介なのが戻ってきた。お前はそれの相手をしてもらおう」
「ヂッ」
「ニミーと合流する。後ろへ行くぞ」
再度、二人の足元に影が現れ、二人を飲み込んでいった。
「ッハァ……!」
黒衣の男が消えた瞬間、全身から嫌な汗が噴き出した。
「アイツはやばすぎる……。別次元だ……」
近くに居た冒険者達も同じ気持ちを味わったのか、強面だった表情は青ざめ、大粒の汗を滴らせていた。
「「「「「「グオオオオオオオ!!」」」」」」
魔物達が咆哮する。
動きはより激化し、圧力が増す。
終わりの見えない戦いが精神を削り取っていく。
戦線が崩壊するのも時間の問題かと思われた。
一人、また一人と倒れて行く冒険者を横目に、迫り来る凶爪を避け、蹴りを入れ魔物を倒していくも、徐々に押し込まれていく現状に焦る気持ちが致命的な油断を作り出してしまった。
「グハッ!」
「兄さん!!」
吹き飛ばされ、地面を転がるノーチェに凶暴化した魔物が襲い掛かっていく。
周囲にいた冒険者は息を呑み、容易に想像できる結末に目を逸らした。
その時だった。
「待たせたな、ニエヴェ」
「ノーチェの奴食われそうになってんじゃねーか!!」
懐かしい声が聞こえた直後一筋の雷光が瞬く。
ノーチェの周囲にいた魔物達が崩れ落ちていく。
たった一撃、一瞬の出来事だった。
「ぷハァ!! おせーぞベック!」
「ヒーローは遅れてやってくるんだよ!」
雷帝と呼ばれた冒険者と、頼もしい仲間が合流した。
次回更新は2019/04/27になります。
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