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173話 静電気と太陽鱏

3/22 12時39分 後半部分に描写追加しました。



火山の中にある教会を抜け、祭壇の奥に隠されていた洞窟を抜ける。眼前に現れた拓けた平地には、膝から下が埋まった状態の灰で煤けた女神像が天を仰いでいた。


その女神像は何かに祈りを捧げる様に手を胸の前で組み合わせている。


火山の麓にいた時よりも近くなった第七十九階層の上空には、硫黄の匂いと火山灰が紛れた漆黒の闇が広がり、深々と雪のように黒い灰を周囲に積もらせている。


火口に近いこの平地は肌が焼けるような暑さがあり、空に広がるその黒雲はすべての光を吸収しているかのように暗く、吸い込まれれば二度と出てくる事が出来ない黒洞のようにも見えた。火口から立ち昇る噴煙は階層の上空を余す所なく包み込み、より一層不気味な存在感を発していた。


「……ん?」


一歩足を踏み出し女神像を調べようとした時、頭上から得も言われぬ重圧を感じ、俺は女神像のように天を仰いだ。

変化は直ぐに現れた。上空に眼を凝らすと暗雲の一部が徐々に明るみを帯びていったのだ。


それは初め、小さな丸い点のように見えていたのだが、その小さな点は時間の経過とともに目に見えて巨大になっていく。


その光源は天頂で輝きを最大化させ、暗雲の壁を切り裂きながら姿を現した。大きく黒雲が割れたそこには、燦々と燃え盛る太陽が此方を見降ろしていたのだ。


下から見える丸い胴体の後方には細長い尾ビレ。

全身が燃え上がる怪物が雲を切り裂きながら現れた。




──ギャオオオオオオオオオオオ!!!!!!





空をも覆うような巨大な太陽が吼える。

太陽が顎を開くその様はまるで日蝕。

暗闇の広がる沼底のような口腔からあげられた咆哮は大気を震わし、突風が巻き起こる事で地面に降り積もる火山灰が周囲に飛散した。

それだけでは無い。滞空するその姿はまさに海を泳ぐ(エイ)そのもの。波のように畝るそのヒレは立っていられない程の風圧を起こし、長大な紅蓮の尾ビレは身の丈ほどの火山岩を打ち砕く。


俺は《魔障壁》で降りかかる岩石を防ぎながら、


(馬鹿デケェ……それにあっちい。太陽みたいな魚だな。魚種は鱏みたいだ。さしずめ太陽鱏(ソルレイ)ってところか?」


と、半ば放心しながら目の前の……、いや、頭上の魔物を見つめた。


発火するその表皮は流れ出た直後の赤熱した溶岩のように赤く、時折表皮からは太陽面爆発(太陽フレア)の如く火炎が舞い上がり空や地面を焼いている。


それは地面だけではなく、俺自身にも降りかかってくる。

咄嗟に《魔障壁》で 太陽鱏から放たれた火炎を防ぎながら、沈黙する火口にも意識を割いた。


「戦うにしても、逃げるにしても、早くしないとやばいな」


第七十九階層に再度きて六時間ほど。

つまり前回の噴火から五時間立っている。


地面の溶岩は黒く冷え、落ち着いた状態だが次にいつ噴火するかわからない以上、いつまでもここでのんびりとしているわけにはいかない。いつまたこの直ぐそばにある火口が噴火し、マグマが溢れ出てくるかわからないからだ。




──グパァッ



再度、太陽鱏(ソルレイ)の大岩も飲み込むような口腔が開かれた。


口腔内の暗闇に火が灯る。

一瞬にして大きくなった小さなもう一つの太陽のような火球が地面に向かって放たれた。


その火球から感じる余りの熱量に《魔障壁》での防御の選択肢は一瞬で捨て、後方へ大きく飛び退いて回避すると──、




ドゴオオオオオオオオオオオオ!!!!




轟音と爆炎が発生し、着弾地点にクレーターができた。

冷えて黒くなっていた溶岩が再度熱を帯び赤く発熱する。


「こんなの食らったらたまったもんじゃない……。魔障壁で防げても熱量で蒸し焼きになっちまいそうだな」


続け様に太陽鱏の口腔内に死の火炎が再装填される。


「まじかよ……連続で撃てるのか!」





──ドオオオオオオン!


  ──ドゴオオオオオン!!


     ──ドゴオオオオン!!!





矢継ぎ早に放たれる火球が平坦な火口付近の地形を変えて行く。それはまさに爆撃とも言える攻撃だった。

その後も長い尾を打ち付け、上空から火球を落とし此方を攻撃する太陽鱏。

此方も負けじと反撃することに決める。


「やられてばかりじゃいられないんだよね」


思わず口角が釣り上がる。

不安も恐怖も感じない。

あるのは興味だけ。

新技を大型に試すチャンスだ。


「《雷公招来・花蕾》」


両腕にいくつもの雷の花が咲き乱れる。


花弁が開閉し、まるで種を吐き出すように小さな雷球が周囲に放たれると、吸い寄せられるように太陽鱏に纏わりつき始めた。


太陽鱏は煩わしそうにその巨体を揺するも、雷球はぴたりと張り付いて離れない。


その小さな雷球は一つ一つは取るに足らないものだ。それこそ静電気ほどの電力しか有していないだろう。しかし、それは滞空する巨体を満遍なく包み込み──、


「迎合」


と言う俺の一言で雷球は一瞬にして花を咲かせ、放電された電力は鎖のようにがっちりと連なった。

異変を感じた太陽鱏も暴れ逃れようともがくが、魔力を練り込まれた雷の鎖はそれを許さない。

動けば動くほど雷球同士が接触し新たな鎖となって対象を締め付ける。


「やっぱり効きにくいか。小さな魔物だったら麻痺くらいはさせられるんだけど」


この《雷公招来・花蕾迎合》はマーカー兼足止め用の魔法だ。

ドルガレオ大陸で多くの樹喰虫と戦った時、味方に被害が及ばない広範囲攻撃の必要性を感じ考え出した魔法だ。

これから撃つ、特大の雷を確実に敵へと当てる為の。


雷化した両腕を前に出し狙いをつける。

狙うは上空に燦々と輝く太陽鱏。

最後の悪あがきのように火球を放とうと口を開くも、その動きで更に締め付けられる、哀れな魚。




バリ、バリ、バリ──、


    ──バリバリバリバリ!!!




生半可な攻撃じゃ効かないと判断し俺はありったけの電力を込めようと電力を振り絞る。


「なッ!? 止んねぇ!」


すると突然、雷化が止まらなくなり極限まで練り上げた《雷公招来(エネルカ)》は制御が効かなくなる。

それは両腕だけでなく胴、下半身、そして頭部までも侵食して行った。


「ガッ! グウウウウウウ!!!」


まだ全身の雷化は身に余る魔法なのだろうか。放電の無理が祟り、両腕以上が雷化を始めた途端、瞬く間に広がってゆく雷化部位に激痛が走る。


なんとか痛みを堪えながらも、照準を合わせ最大まで練り上げられた雷を放った瞬間辺りが白光に包まれ、俺の意識は暗転し何もかも分からなくなった。


山頂付近には黒焦げになった太陽鱏と、祈りを捧げる女神像だけが残っていた。

投稿遅れてすいません。

次回から物語が大きく動きますので、執筆に少しお時間をいただければと思います。

次回更新は2019/03/27となりますので宜しくお願い致します。

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