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172話 静電気と海底神殿⑩



火山の中に広がる洞窟はまさに迷宮だった。

上下左右に洞窟が入り乱れ、時折火山中央つまり火口付近と思われる場所に近づくと横穴からはマグマが漏れだし洞窟内部を赤く照らしていた。


その洞窟内部の熱量は凄まじく、ゴツゴツとした壁面には見たことのない鉱石が、まさに生えていると言った表現が出来そうな程顔を覗かせている。

青や赤、緑、そして鉄色や銀色といった拳大以上の大きさのその鉱石は、赤く発光したマグマの光に当てられ、怪しくそして色とりどりに輝いていた。

こっそりと目印がわりに、鉱石を回収しながら洞窟を進んでいく。


規則性の無い洞窟の中をひたすら彷徨い、既に自分がこの火山の中のどの位置にいるかもわからない。


《探知》で周囲を調べてみても、それでわかるのは自分を中心に半径五百メートルほど。

まるで富士山のように巨大な活火山には全くと言っていいほど探知できる範囲が足りなかった。そしてその火山の上に行ったり下に行ったりと複雑に絡み合った通路は、俺の判断を鈍らせる二つある原因のうちの一つとなっていた。







そしてもう一つあるその原因は……、















   ガシャン──、

 

     ガシャンガシャン──、


        ガシャンガシャン──、


     ガシャンガシャン──、


  ガシャンガシャン──、


    ガシャンガシャン──、


      ガシャンガシャン──、


        ガシャンガシャン──、


  骨骨骨        ガシャン──。

 骨 骨 骨

 骨骨骨骨骨

  骨骨骨    骨骨骨骨骨      骨骨骨

       骨骨骨骨骨骨骨骨骨   骨 骨 骨

      骨骨骨骨骨骨骨骨骨骨骨  骨骨骨骨骨

     骨骨骨 骨骨骨骨骨 骨骨骨  骨骨骨

     骨骨   骨骨骨   骨骨

     骨骨   骨骨骨   骨骨

     骨骨骨 骨骨骨骨骨 骨骨骨

      骨骨骨骨骨骨骨骨骨骨骨

       骨骨 骨骨骨 骨骨

       骨骨 骨骨骨 骨骨  骨骨骨

  骨骨骨   骨骨骨 骨骨骨  骨 骨 骨

 骨 骨 骨  骨骨骨骨骨骨骨  骨骨骨骨骨

 骨骨骨骨骨            骨骨骨

  骨骨骨
















──背後から迫る魔物の存在である。


「ヒエェ〜、しつけぇ〜!」


背後からは聖騎士の鎧を纏った、黒骸骨オブシディアンパラディンの集団が、鎧を打ち鳴らしながら追いかけてきていた。


洞窟の進み具合はというと、追いかけられながらも体感的にはどんどん頂上に向けて登って行っている筈だ。

その証拠かどうかはわからないが、進むにつれて魔物の強さが強力になっている。


後ろから追いかけてきている豪華な鎧を着込んだ骸骨たちは、どうやら雷の攻撃が効きにくいようだ。おそらく白銀に輝くあの鎧や手に持っている祈りを捧げる女性の姿が刻み込まれた盾は、強力な魔法耐性のある素材で出来ていると思われる。


鎧はどこかで見た記憶がある気がするが、今は思い出せない。


渾身の雷腕で貫こうとしたが、ばちばちと空気を裂いたその雷撃は鎧を浅く傷を付けるに留まり、魔物の持つ魔魂石を貫くことは叶わなかった。むしろ鎧や盾に触れると、魔力が吸われるような感覚がして《雷公招来》を維持できなくなる始末。


恐らく特殊な能力を備えた鎧なのだろう。


なんとか思いっきり魔力の込めた《魔力手》を触手のように使い、鎧の隙間から魔魂石を砕く事で三体程倒すことには成功しているが、一体一体がかなり強力な為時間がかかってしまう。


非常にやりにくい魔物だ。


しかしその圧倒的な防御力とはうって変わって、攻撃は剣をブンブン振り回すだけのブンブン丸。単純なものなので全く怖くはない。

なのでただただ、そしてひたすらしつこい、邪魔なだけの魔物と言える。

倒した後は鎧や剣も含め、黒い霧になってしまうので防具を持ち帰ることもできない。

唯一ドロップしているのは、黒曜石のようになった大腿骨と頭蓋骨が一個ずつ。

全くもって割りに合わない魔物と言える。


洞窟内部には人工的に造られたような小部屋もいくつか存在し、まるで建物自体が溶岩に飲み込まれたようだった。


「大分登ってきたな……」


洞窟に入って数時間。


今いる部屋には、カラフルなステンドグラスの窓があり、魔物が暴れたのか周囲には砕けた椅子や倒れた燭台が散らばっていた。部屋にはどこかに繋がる通路などはなく行き止まりとなっている。


まるで教会のようなこの場所には、遥か昔ここで祈りを捧げる人々がいたのだろうか……と柄にもなくノスタルジックな気分を味わっていた。


魔物が入ってこれないように部屋の入り口を《魔障壁》で塞ぎ室内を調べると、教会の壁側に祭壇がありその奥に空洞がある事を発見した。


古びた本が祭壇の上に置いてあったが、手に持った瞬間粉々になって消えていった。どうやら風化していたようだ。


気を取り直して、空気が流れてくる隙間の空いた祭壇をずらすと、上へとつながる階段が現れた。


階段を登りきるとそこは山頂付近。

平面な台地が広がり、膝から上の部分だけが不自然に突き出た女神像が自身の存在を主張していた。


(ここは教会の屋根の上なのか?)


女神像以外は周囲に何もなく、ボコボコと音を立てる火口と今までにない程に感じる暑さだけがこの階層の終着点を示していた。


女神像に触れようとしたその時、


「ギャオオオオオオオオオオオ」


という咆哮と同時に、強烈な突風を感じる。

思わずたたらを踏みそうになりながら上空に目を向けると、其処にはジャンボジェット機ほどの大きさの燃え盛る怪物が滞空し、まるで品定めするかのようにじろりとこちらを見下ろしていた。

次の投稿は3/22とさせて頂きます。

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