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169話 静電気と海底神殿⑦



高難易度迷宮《海底神殿》は下へ下へと続く降下型の迷宮である。各階層には下層へと続く階段が存在しており、そこを下る事で次の階層へと進んでゆく。


つまり《海底神殿》は進めば進むほど地下へと向かっていくはずなのだが──、


《海底神殿》第七十五階層

【海底の楽園:アクアビーチ】


七十六階層から七十五階層へと続く、岩を削り出した急な傾斜のある階段を一行は登っていく。

しばらく進むと階段の切れ目である、崩れた大岩の隙間が見え始めた。

その隙間から覗くのは日光のような明るい陽射しと、美しい透明度の高い青い海だった。


身体を横にする事で岩の隙間を抜け、第七十五階層に入る。

腕で陽射しを遮りながら周囲を見渡すと、そこには地下であるはずのこの空間には決してあり得ない光景が広がっていた。


「相変わらずここは不思議な空間ですね」

「あぁ、だが、休むには持ってこいの場所だ」

「無事に戻ってこれたんだな……」


天井へ視線を向けると、そこに見えるのは雲ひとつない青空と太陽。まるで迷宮の外に出てしまったのかと、勘違いしてしまいそうな景色が見えるのだ。

南国リゾートに来たかのような光景に心が洗われるような気持ちになる。


「あんた達、おかしいと思わないの!? アイツは怪しすぎよ!」


何が?と言わんばかりの気の抜けた様子の三人とは違い、赤毛の魔法使いのアンが「何処からどう見てもおかしいでしょ!」と声を荒げた。


「まぁまぁ、ベックさんは何も要求しないって言ってるんだし……」

「だからそれが怪しいのよ!!」


俺を指差した彼女は、付け加えるように「上半身裸で迷宮攻略の最前線に来る奴がおかしくないわけ無いわ!」と憤り、腕で壁を作り完全なる拒絶ポーズをとった。


(やり過ぎたかなぁ……。でもほっとくのも後味悪かったし……)


目の前で人が死にかけてたんだ。

助けられるなら助けたいじゃないか。

その力があるなら尚更そう思う。

なら、信じてもらえる方法は一つしかない。

ありのままを伝える、ただそれだけだ。


「あ〜、この上半身裸なのは装備が壊れちゃったからだよ……」


四人にマジックバッグが見えないよう後ろを向き、こっそりと飛竜の鎧(上半身)を取り出す。


「ほら、ね……?」


右腕部分がバラバラに吹き飛んだ鎧を見せると「あぁ……」とアンは哀しそうな顔をした。


「まぁ……話くらいは聴いてやろうじゃない」

「助かるよ」










心地よい風が靡き、ざわざわと木々が嬉しそうに歌う。

寄せては返す波の音はまるで子守唄のように眠気を誘い、まるでここに流れる時間だけが周りと切り離されているような錯覚に陥っている。

ハネムーンやバカンスなら、そのまま流れに任せて寝ても良いのかもしれないが、今は迷宮攻略中だ。そんな暇はないはずなのだが……。


「信じらんない……。あんたばっかじゃないの!?」


アンの怒声で眠りこけていた俺以外の三人がはっと起き上がった。なんだなんだ?と三人がこちらを見つめる中、会話は続く。


雲行きが怪しくなり始めたのは、俺がソロでこの迷宮に潜っていると言い始めた頃だろうか。


アンはどうやら、俺の仲間がどこかで隠れて待機しており、隙を見て自分たちのパーティを襲おうと画策しているものとずっと警戒していたらしい。


そして段々と会話していく中で、その線が薄い事に気がつき始め、俺のソロ発言で一気にその警戒が解け、一気にアホの子を見る目に変わって行ったってところだろうか。


「迷宮に一人で潜る冒険者なんてなかなかいないわ! 浅い階層ならともかく、この《海底神殿》のような高難易度迷宮の深層域なら尚更の事よ」


まぁアンの言う通り迷宮はパーティで挑むものだ。

その考えが当たり前なのだから俺が異端なのは間違いないだろう。なんで潜るかと言われたら、できたからと言う以外にはない。


「だって死ににいくようなものだもの。なにかあったらもうどうにも出来ないじゃない……。階層主はどうしたのよ」

「階層主って五十九階層のクラーケン?」

「そう、そのクラーケンよ」

「どうしたって普通に倒したけど……」

「一人で?」

「うん一人で」

「あっきれた……。普通は複数のパーティで倒すようなモンスターよ」


ハイクラーケンなんかよりよっぽど雑魚だった。

普通に一撃だったというのは言うのをやめた。

また変に噛みつかれそうだったから……。


アン曰く、手練れのA等級パーティなら一パーティで倒せるそうだが、B等級パーティなら三パーティは欲しい所らしい。


「あんた冒険者よね? 一体何等級なの? もしかして隠れS?」

「いや、普通にA等級だけど……。隠れSってなに?」

「たまにいるのよ。化け物みたいに強い奴が。そう言う奴等を私たちは隠れSって呼んでるわ。有事の際にちらほら出てくるんだけどね。有名なところでいうと、アキラ=ハカマダも隠れSだったのよ」

「あぁ、あの女ったらし糞野郎ね」

「なに? あんたも知り合い?」

「うん。うちのパーティメンバーに言い寄って返り討ちされたアホ」

「えぇ!? あいつS等級だけあってかなり強いわよ? それを返り討ちって……。あんたのパーティメンバーも隠れSなの?」

「いや、冒険者ですらないよ」


あれ? そう考えるとパーティメンバーとは言えないのか?

そう伝えると、アンは「考えるだけ無駄ね」と言って、周りで黙って話を聞いていた三人と同じ顔になった。

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