164話 静電気と海底神殿③
無事第一階層を抜け、第二階層、第三階層共に大きな問題もなく進む。構造や壁などの材質も第一階層と同じ、変わりない風景が続く。
ヌルりとした壁、滴り落ちる海水、ジメッとした空気は腐臭を運び、ひとり歩く変化のない徒路を悲しく彩っていた。
しかしそれも第三階層まで──、
第四階層目に入ると出てくる魔物に変化が現れた。
身体に布を巻きつけただけのトーガ姿であった骸骨が次第に剣や盾、胸当てなどの防具を装備し始めたのだ。
剣を装備しているだけの骸骨はまだマシな方。
ブンブン振り回してくるだけなので、《魔障壁》で冷静に防御し、魔魂石を《雷銃》で撃ち抜くだけだ。
厄介、と言うか面倒なのは、胸当てなどの防具やバックラーのような丸い盾を持った骸骨だ。
防具を装備している骸骨は、一度バラしてから確実に魔魂石を狙う。バックラーを装備している骸骨も同じ。
盾や防具が邪魔をして狙いが付きにくい分面倒だが、弱い事には変わりないのでサクサクと倒しながら進んでいく。
(なんだか拍子抜けだなぁ……。高難易度迷宮って聞いていたから、最初からそれなりの難易度なのかと思ってたんだけど……)
もう何匹目かわからない骸骨を《雷銃》で撃ち抜いた直後、背後から風切り音と共に、凄い速度で何かが飛んできた。
ヒュッ、──キンッ
咄嗟に《魔障壁》で飛来した何かを弾く。
(ナイフ……?)
音を立てて地面に落ちたそれを確認すると、黒く塗りつぶされた金属製の刃物だった。
刀身含めて真っ黒なのは暗がりで見えにくくする工夫だろうか。
「ヒュウ〜ッ! 今のを弾くかヨォ!」
暗がりに立つ一人の冒険者。
その背後では複数の冒険者が剣を抜き、こちらを睨みつけていた。
「俺の後をずっと着けてたのはあんたらか」
複数の冒険者が《探知》に引っかかっていたのは分かっていた。つかず離れず、一定の距離を保ちながらずっと俺の後をつけていたので、何かな?と思っていたが俺を襲うタイミングを伺っていたのか。
まるで蛇のような狡猾な顔をしてこちらを見ているナイフを投げつけてきた冒険者は、《海底神殿》のセーフティゾーンでねちっこい視線を浴びせかけていた冒険者のうちのひとりだった。
その後方では、俺を威嚇するように他の冒険者が剣を地面に打ち付けている。
「俺らはヨォ。お前のせいでヨォ、エラく損しちまったんだヨォ〜。お前が金ヅルをツカマエチマッタカラヨォォォ!!!」
その冒険者は口の端から出る泡を飛ばしながら、怒り狂っている。
ヨォヨォうるせぇな……。それにしても、金づるって事はこいつら海賊か? てっきりハイクラーケンにやられたと思ってたんだが、こんな所に隠れてたのかよ。
完全に逆恨みじゃねーか……。
「とりあえずヨォ。これじゃあ俺の腹の虫がオサマらねぇから、お前はここで人知れず死んでいけや」
“お前ら行け”と、男が嗾けると、四人の殺意剥き出した男達が武器を片手に襲い掛かってきた。
「喰らえやあああ!!!」
「おりゃあああああ!!!」
「死ねええええええ!!!」
「◎△$♪×¥●&%#?!」
「《魔障壁》」
ガィン!ガィン!
キン!キン!
ガン!ガン!ガン!
ガキン!ガキン!
それぞれが、斧、片手長剣、メイス、ハンマーで攻撃してくるものの、男たちの攻撃では傷一つつけることができない。
「な、なんだこれ!!」
「変な壁があるぞ!」
「くっそおおおおお!!」
「◎△$♪×¥●&%#?!」
「もう終わり??」
汗だくになっている男たちを尻目に、俺が涼しい顔でしょうもない攻撃を静観していると、その状況に業を煮やした蛇顔の男が声を上げた。
「役立たずどもがヨォ!! 雑魚は下がれや!」
腰から杖を引き抜くと、杖を俺に向け魔法の詠唱を始めた。
「燃え盛る炎の──「《雷針》」──アバばバばばば!!」
「遅いよ」
詠唱するよりも速く、俺の指先から出た《雷針》を喰らった男は、バリッと言う音と共にビクンビクンと大きく痙攣して倒れた。
「「「「お頭ぁ!!!」」」」
「くっそおおおお!!お頭の仇だああああ!!」
「《雷針》」
「「「「アバばばバババばばば」」」」
「なんだったんだこいつら……」
目の前に倒れている五人の男たち。
このまま放置する訳にはいかない為、またしても戻る羽目になるのであった。




