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160話 静電気と可能性

次回更新は3月5日(火)になります。



「ご主人様、起きてください。お風呂の準備が出来ましたよ」

「ん……あぁ、おはよう。いつもありがとう、ララ」

「いえ、それが私の仕事ですから」


ララがさっとカーテンを開けると、部屋が明るく照らされた。

暖かい日差しを全身に感じながらベッドから起き上がり、日課の朝風呂へと足を運ぶ。

王都でマイホームを手に入れてから、ほぼ毎日、朝夕しっかり風呂に入っている。ララが常に清潔な状態にしてくれている石造りの風呂は温泉宿の豪華な風呂場みたいだ。

風呂スキーの俺としては、控えめに言って最高の環境と言える。


冒険者は日頃から鎧や外套を着込んでいる為汗を掻きがちだ。

鎧の下には吸水性の高い絹のインナーを着ていても、背中に張り付く布地の感触は気持ち悪い事この上ない。


ボラルスの街や王都ビギエルヒルは、特に寒暖差などはない。基本的に暖かく、非常に快適な天候が年中続くのだが、春と夏程の気温差くらいはあるようで夜寝苦しい日もあったりする。


その為寝汗をかいている事も少なからずあるので、朝風呂に入れるというのは非常にありがたい事だ。


風呂場の引き戸を開け、一歩踏み出す。

湯気の立ち上る浴室は隅々まで手入れされており、屋敷妖精ララはいい仕事をしている。


それに風呂に入るのは身体の汚れを落とすだけではなく、頭の中を整理するのにも持ってこいだ。

身体を洗い、ちゃぽんと右足からゆっくりと湯船に浸かる。


(はぁ〜〜〜〜〜っ)


身体を肩まで浸からせると、ここ最近感じていた戦闘面でのフラストレーションも、暖かいお湯に溶け消えて無くなっていくかのようだった。


ここ数週間であった出来事が、頭の中でぐるぐると回転している。


ドレガルオ大陸での魔樹人達との出会い。

人型の迷宮核、それから生み出された樹食虫の群との戦い。

全てを守ろうとして出来ず、力不足を感じる場面もかなりあった。


(傲慢な考え方だろうか……)


ふぅと息を吐き、天井に付いている水滴をぼんやりと見つめる。

少なくとも、手の届く範囲、目の届く範囲にいる人々は守りたいと思う。

その為にはもっと力が必要だ。

レベル上げによる肉体の強化はもちろん、新技の開発もしていなければいけない。


《ステータスボードオープン》


心の中で念じると、ステータスが表示される。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 名前 別宮洋也(べっく ひろや)  年齢 27 

 職業 A級冒険者 魔物調教師(モンスターテイマー):魔界草変異体

 身分 ―――

 能力値 Lv81


【体力】B+

【魔力】SS

【筋力】B+

【敏捷】S

【頑丈】B

【知性】G

【ユニークスキル】 

 静電気Ex(MAX) 魔法創造

【パッシブアビリティ】

 異世界言語 体質強化 魔力操作Ex(MAX)

【アクティブアビリティ】

 放電Ex(MAX)

 魔法:雷銃(ボルトバレット)Ex(MAX) 魔法:雷槍(サンダーランス)Lv5

 魔法:雷装鎧(サンダーアーマー)Lv5 魔法:電弧放電(アークショット)Lv4

 魔法:神の裁き(エル・エクレール)Lv2 魔法:局部破壊放電(エクレール・ナイツ)Ex(MAX)

 魔法:魔力手(マジックハンド)Ex(MAX) 魔法:魔障壁(マショウヘキ)Ex(MAX)

 魔法:多重魔障壁(タジュウマショウヘキ)Lv2

 魔法:ファイヤーボールってかLv1

 身体強化魔法:極限集中状態(オーバークロック)Lv10

 魔法:転移魔法(魔方陣設置・任意転移)Lv3


◇◇◇◇◇◇◇◇◇



改めて見ると、あまり使ってない魔法が多いなぁ。

雷銃(ボルトバレット)》や《局部破壊放電(エクレール・ナイツ)》が使い勝手が良すぎて、ついついこっちを使ってしまうけど、単純に火力ということを考えると《神の裁き(エル・エクレール)》の方が遥かに強い。


ただ《神の裁き》は敵に金属の剣など、マーカーを付けてからではないと撃てないから使い勝手が悪い魔法と言える。高速戦闘においてニ手が必要な魔法は現実的とは言えない。


そうは言っても単純な放電だけだと電撃に指向性を持たせることができないしなぁ。避雷針……いや、導雷針のように何とかして一手で撃てるようにならないものか……。


魔力で誘導しようとしても魔力の操作速度が、雷の攻撃速度を大幅に下回っている。《雷針》を打ち込んで導雷針代わりにしてみるか?

今度試してみよう。


『魔法は想像力だ』


ふとライアの言葉を思い出す。

チチチチと両手の指先で放電遊びをする。

右手の人差し指から左手の人差し指へ、左手の親指から右腕の親指へ。

交互に電撃を飛ばし合い、放電する指を増やしてゆく。

全ての指を電撃で繋ぎ合わせ、次第に放電量を上げる。


バリバリバリバリ!


指先だけだった放電が手のひら同士の繋がりになり、両手間の放電は手首ほどの太さになった。


(何時もならここに魔力を噛ませ、電力を成型して魔法にするんだけど……)


ふっと放電をやめ、再度指先に集中させ、魔力と一緒に放電をしてみる。





チチチチチチチチ──、


チチチチチリチリチリ──、


チリチリチリヂリチリヂリ──、


ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ──。





電圧の違いにより指先に発生する放電の質が変わってゆく。





ん……なんだ?





魔力と同時に放電すると、指先の放電と指の境界線が曖昧になっている気が……。



ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ



俺の指先自体が雷になっている……?


肉体と雷、そして魔力を合体させるイメージ──、


……やっぱりそうだ!


意識を集中させると指先が解けるように雷と化しているのがわかる。魔力で成型ではなく、魔力と雷を融合する感覚。


今俺の右腕は人差し指の第一関節までが雷に置き換わっている。


もっと……もっとだ。

もっと範囲を広げれば──、


指の第一関節から第二関節、手のひら、手首、肘と徐々に身体を雷に解していく。

肩までに達すると右腕に出来たのは稲光する雷腕。

前腕や手、そして肩からは細かな放電が繰り返されている。

その小さく雷鳴する雷の腕にグッと力を込め手を握り込むと、俺の意思通り、自由自在に動くのがわかる。


すげぇ……魔法は想像力とはよく言ったもんだ。


「《雷公招来(エネルカ)》」


この力に名前をつけると、《魔法創造》の効果で魔方陣が右腕に展開され魔力が定着する。

これでこの肉体の雷化が魔法としてスキル化完了だ。

魔力と放電の融合で新たな可能性が出てきた。

あとはどの程度まで出来るのか実験を重ねてみよう。


「──ご主人様、本日のご予定の時間が迫っております」


扉越しにララが声をかけてくる。


「お召し物はこちらに用意しておきます」

「ありがとう」


《海底神殿》で色々試してみるか。





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