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159話 静電気と追加報酬



タゴン焼きを堪能した翌日。


今回の海賊討伐依頼はブリッジポートの領主であるフレデリカからの指名依頼だった為、冒険者ギルドにその依頼の報酬の受け取りに来ていた。


「お疲れ様でした。海賊討伐依頼がとんだ災難に変わってしまいましたね。海上でハイクラーケンに襲われて被害のほとんどが船だけなんて、奇跡としか言いようがありませんよ!」


報酬の清算をする傍ら、興奮した様子で話しかけてくるのは冒険者ギルドの職員であるサムだ。


「僕も何度か《海底神殿》でクラーケンと戦ったことがありますけど、港で見たハイクラーケンは想像を絶するサイズでしたね。迷宮で出るクラーケンの二倍はあったんじゃないでしょうか」


本当に良く無事でしたねぇと、うんうん頷いているが、目線と手は清算に向けて動き、しっかりと書類を書き上げている。


《海底神殿》行ったことがあるということは、サムは元冒険者か何かなのだろうか。


「サムさんは《海底神殿》、行ったことあるんですか? ちょうど俺たちも行こうかなって考えてまして。っていうか、この街に来た目的が《海底神殿》でしたからね」

「ありますよ! これでも私はB等級の冒険者だったんですから! まぁ膝に矢を受けてしまって、それが原因で引退したんですけど……。大体の冒険者は《海底神殿》の為にこの街に来ますね」


膝に矢て……どこかで聞いたことがあるような話だな。


今はギルドマスターに拾ってもらったお陰で仕事にありつけていますと、頭をぽりぽり掻きながら苦笑いしている。

給料はぶっちゃけ冒険者をしていた時より高いそうだ。

意外と冒険者ギルドの職員は高給取りなのかもしれない。


「ちょうど明日から《海底神殿》行きの定期船が出航するようになりますので、是非行ってみたら良いと思いますよ。朝昼夕と三便出ますので、その時間にいらしてください。ご案内させていただきます」

「ありがとうございます」


サムにお礼を言い、カウンターに置かれた報酬の金貨を受け取る。


「あっ、そうでした。領主様が金銭以外に何か欲しいものがないかと気にしておられましたよ。後で屋敷まで来てくれとの事です」

「あ〜、わかりました。今から行ってきます」









海洋都市ブリッジポートの領主フレデリカ=ナーナイルの屋敷に着いた。


広大な敷地の中に建物が二棟が建っており、一方は巨大な貴族が住むような屋敷、もう一方は騎士団が生活している寮となっているらしい。


まるで王都の騎士学校の様に訓練場も併設されており、先日の海賊討伐もといハイクラーケン討伐時に乗船していた騎士達が訓練している。


ぺこりと会釈し、案内に続いてフレデリカの元へと案内された。


「ベックです。領主様、お呼びでしょうか」


扉をノックし声をかける。

中からお入りなさい、と聞こえたので扉をあけて入る。


「…………来ましたか。先日は助力していただき、誠にありがとうございました」


フレデリカが頭を軽く下げた。

手でソファに座る様に促される。

促されるまま座ると、フレデリカも対面側に腰を掛けた。


「いえ、被害が少なく済んで良かったです」


今回は薄氷の勝利だったと思う。

正直言うと、一人だったら問題なくあのハイクラーケンは処理できていたはずだ。やはり誰かを守りながら戦うのは非常にリスクが高い。


「貴方のおかげです。報酬は受け取っていただけましたか?」

「はい、ありがとうございました。冒険者ギルドでしっかりと受け取りました。それで追加の報酬との話を聞いてますが」


貰えるものは貰っておこう。


「…………あの報酬は海賊の討伐についての報酬です。追加と言うのはハイクラーケンの討伐報酬を渡していませんでしたので。何か欲しいものはありますでしょうか?」


メイドが持ってきた紅茶を一口飲んで言った。


「欲しいもの……ですか。正直言うと金は余ってるんで、欲しいと言ったら土地と建物ですかね? ダメなら不動産屋を紹介してもらえると助かります。まだこの街に来て日が浅いので知り合いがいないんですよ」

「問題ありません。それくらいの事でしたら直ぐにでも。貴方がいなければもっと大きな被害になっていたかもしれません。あのクラスの魔物が未だに海に潜んでいたとしたら、漁街としてのブリッジポートは終わっていたかも知れませんので……」


この近海には小型の魚系魔物や半魚人系の魔物は生息していたらしいが、ハイクラーケンなどの大型の魔物は見たことがなかったらしい。そもそも海底深くで生活する彼らは海上に上がってくることなど滅多にないとの事で、たまたまかそうじゃないかはわからないが、異変が起きているのは確かなようだ。


もしあのサイズの魔物がこの海に住み着いていたら、漁業どころの話ではなくなってしまうし、そもそも食い荒らされて海産物自体が大きな被害を受けていただろう。


それを未然に防げたと言う意味でも、俺の功績は大きいとフレデリカは褒めてくれた。


その日のうちに不動産屋を紹介され、町はずれにある小さな一軒家を購入した。


一緒に同行したフレデリカはこんなところでいいのですかと逆に心配されたが、転移魔方陣を安全に設置したいだけなので、誰も入ってこない空間であるならば家自体はどうでも良いのだ。


転移魔法で王都にある自宅に帰れば、いつでも暖かい風呂と飯用意した屋敷妖精のララが家で待っている。


明日からは《海底神殿》に顔を出す予定なので、宿を引き払いノーチェと花ちゃんを連れて転移魔法で家に戻るのであった。

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