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139話 静電気と初夜②



「きゃああぁああぁぁぁああああ!!!」


二階からの悲鳴が浴室に響く。

今のはニエヴェの悲鳴か!?


「クソッ! もしかして出たのか!?」

「出たってなんの話だ!?」

「この家には幽霊が出るらしいんだ! ニエヴェが襲われた!」

「幽霊!? なんでそんな家買ってるんだよ!!」

「取り敢えずいくぞ!」


急いで風呂を上がり二階に向かう際に台所の横を通ると、風呂に入る前に置いたはずの食器が消えているのが目に入る。


この家には間違いなく何かいる。


階段を駆け上りニエヴェの部屋の前で必死に扉を叩いていたノーチェに声をかけた。


「ノーチェなにがあった!」

「わからねぇ……急に叫び声が聞こえたと思って駆けつけたが、扉が開かねぇんだ」

「おい! ニエヴェ! 無事か!」


俺も扉を叩いて見るが、部屋の中から返事はない。


「買ったばかりだが仕方ない。この扉ぶっ壊すぞ! 離れろ」

「わかった!」


俺とノーチェで扉を蹴り破ろうと距離を取った時──。


キー……。


まるで俺たちを招き入れるように扉が開いた。


「入ってこないでぇ!」


部屋の中からニエヴェの懇願するような声が聞こえる。


部屋の中では薄いレースのカーテンで身体を巻き取られたニエヴェが宙に浮き、その真っ白な体毛が生えた全身が、宙に浮いたブラシでブラッシングされていた。


ニエヴェはカーテン以外は身につけていない。


ひとりでに動くカーテンやブラシは、まるでポルターガイスト現象のようだ。


「あんっ、尻尾の付け根はやめてぇ……」

「「「…………」」」


ブラッシングされているニエヴェは息も絶え絶えな様子だが、ブラシやカーテンがこちらに襲いかかってくるようなことはない。危険性はないと見ても良さそうだ。


月夜に照らされたニエヴェの、降り積もったばかりの雪のような白い毛並みがとても美しい。


「おいノーチェ。お前の妹がブラッシングされてるぞ」

「俺っちから一つ言えるのは、妹の裸は見たくねぇ。それにお前の裸も見たくねぇ」

「俺はともかくニエヴェは体毛でなにも見えねーだろ!」

「あっ!お前!亜人差別すんな!!それにいつまでも粗末なもんぶら下げてんじゃねぇ!」


そうだった。

俺は風呂場からすっ飛んできたから裸だった。

慌てて両手で息子を隠す。

ノーチェはニエヴェに背を向ける。

状況はさておき、とりあえず無事なようで良かった。


「これは驚いた。この家は生体家屋(リビングハイム)だったのか」


濡れた髪を結い上げ、しっかりと身を整えたライアが部屋に入ってくると、うねうねと動くブラシを持ったカーテンを見て納得した様子を見せた。


「生体家屋? なんだよそれ」

「そのままの意味だ。生きているんだよこの家は」

「一体なんのために……」

「一体なんのって、楽するために決まってるだろ。炊事、洗濯、掃除、家事ならなんでもやってくれるはずだぞ。大昔に魔族の貴族の間で流行ったんだ。だが家全体が魔工具で馬鹿みたいに高額な所為ですぐに買い手がつかなくなってな。まさかこんなところにあるとは……。何処かに家を統括する屋敷精霊がいるはずだが、現れないのはおかしい。所有者登録はしてないのか?」

「所有者登録って、書類に名前は書いたけど……」

「それは購入の際の話だろ? 鍵に所有者登録したかと聞いたんだ」

「鍵?」


トーマスから預かった鍵は玄関に置きっぱなしだ。

変わった形の鍵だと思っていたが、まさかそんな機能があるとはな。


「ちょっと取ってくる」

「ついでに服も着てこい」


俺は急いで服を着て、玄関に置いてあった鍵を持ってきた。

言われてよくよく見てみれば、鍵の頭の部分は丸く、まるで魔法陣のような幾何学模様が彫り込まれていた。


「その魔法陣に血液を一滴垂らせ。そしてその鍵を床に挿せ」

「床に? 鍵穴なんてないじゃないか」

「やればわかる。挿したら捻るのを忘れるなよ」

「へいへい」


俺はライアに言われるがまま、鍵に掘られている魔法陣に血液を垂らし、片膝をついてゆっくりと床に鍵をあてた。

すると鍵が床に沈み込み、そのまま手首を返し捻る。


ニエヴェはブラッシングされたままだったが、鍵を挿しひねった途端にブラシの動きが止まり、ゆっくりとカーテンがニエヴェを降ろす。


その様子を見ていると、鍵を挿した床に鍵に刻まれた魔法陣と同じものが紫色の光と共に展開されていることに気がついた。


俺はその範囲から逃れるように一歩後ずさる。


「──所有者登録完了しました。お帰りなさいませ、ご主人様」


魔法陣の光が収まると、その魔法陣の中心には金髪ゴスロリメイドが立っていた。


「……メイド?」

「これは屋敷妖精(ハウスキーパー)だ」

「──はい。屋敷妖精のララと申します。この家を管理させていただいております。ご主人様」


屋敷精霊のララはスカートの裾を持ち、足と腰を曲げ深々と頭を下げて挨拶をした。


「食器を片ずけてくれたのも君なのか?」

「──はい。そうでございます。何かございましたら、何なりとお申し付けくださいませ。ご主人様」

「じゃあ一つ教えてくれ。なんでニエヴェをブラッシングしてたんだ?」

「──はい。もふもふは正義でございます。ご主人様」

「奇遇だな。お前とは仲良くやっていけそうだぜ。ララ」

「──末永くよろしくお願い致します。ご主人様」

「おう!」



「「「……」」」



明日はお休みさせて頂きます。

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