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136話 静電気と物件探し③



「ここが最後の三軒目になりますね……。ですが、正直言ってここはあまりお勧めできません」



前を歩くトーマスが神妙な面持ちで振り返る。


もうそろそろ日暮れだ。


二軒目の物件は他の住宅と隣接しており、全くと言っていいほど庭がなかった。建物の周囲に人が一人通れるくらいの隙間しかなく、雑草が所狭しと生えていたのだ。


更には一軒目で問題のあった、陽当たりも非常に悪い為、二軒目に関しては内覧する前に却下になった。



「お勧めできない? なんでですか?」



一拍おいて、ゴクリと喉を鳴らしながらトーマスが言った。



「お客様のご提示する条件的には、ここが一番一致するんですが……なんと言いますか、出るんですよ……この家には……」

「出る? 何が出るんですか?」

「幽霊ですよ……幽霊」

「は? 幽霊? ゴースト系の魔物でも住み着いているんですか?」



おいおい、最後の一軒はお化け屋敷かよ……。


実体を持たない魔物と俺は戦ったことはないが、海洋都市ブリッジポートにある高難易度迷宮《海底神殿》には、海底神殿が海底にない時に生活していた神官などがアンデットとして魔物化しているそうで、ゴースト系魔物のソウルシャドーやシャドウウォリアーなどが出現する。


ゴーストなどのアストラル(精神系)の魔物は、魔法が付与された武器ではないと倒すことができず、海底神殿は魔法使いにとって非常に良い狩場となっている。


海に近いこともあり、海鮮が美味いということもあるので、ぜひ近いうちに行きたいと思っていたところだ。


海洋都市ブリッジポートからは、醤油があるという阿波国へ行く為の船も出ている。醤油と刺身……、久しく味わっていない懐かしい味を思い出し思わずヨダレが垂れそうになってしまった。



「お客様の前にも何名かこの物件に入居したお客様がいるんですが、数日と持たずに解約を申し出てくると言ったことがありまして……」

「その理由が幽霊ということですか?」

「えぇ……そうなんですよ……。夜になるとガタガタと家の中で物音がしたり、庭の草木が刈り取られていたりとですね……。まるで幽霊がいる、この家は呪われている、気持ち悪いとのことで解約を……」

「面白そう! パパ!早くお家の中見ようよ!! 危ない感じはしないからきっと大丈夫!」

「まぁ……確かに……《探知》にも何もかからないし、魔物じゃないのかもね」



それなりの庭もあって日当たりもいい、二階建てで外観もバッチリだし、事前に見た書類によると部屋数は二階に三部屋、一階にはキッチンとリビング、トイレにお風呂も付いている。


室内を見回してもおかしいところはなく、怪しい気配はない。


トイレもお風呂も魔工具で出来ており、一軒目の水準と変わらない素晴らしい魔工具だ。


できればここで決めたいところではあるが……。

ふと、何もないリビングの床が夕日を浴びて反射し、あることに気がついた。



「前の家主は随分と綺麗好きだったんですねぇ。つい最近出て行ったんですか?」

「え? 前の家主様がここを出られたのは半年以上前ですよ」

「それにしては随分と綺麗じゃないですか? 床なんかピカピカですし、埃だって全く落ちていないじゃないですか」

「そこも気味悪がられている原因の一つでもあるのですよ……。掃除しなくても勝手に食器は片付けられていて、トイレや風呂だっていつも清潔。まるでメイドが常に家の中を掃除しているような……」

「掃除してくれる魔工具があるとかでは?」

「この物件の設備にはそういった類の魔工具は設置されてないのです……」



メイドねぇ……このゴースト騒ぎだと、メイドじゃなくて冥土じゃないか。日も傾いてきてるし、物件はこれで終わりだしで、あまり住宅選びに時間をかけるのもあれだな。



「花ちゃん、どう思う?」

「花ちゃんはここのお家いいと思うよ! 夜ガタガタッて音がして、お家が勝手に綺麗になるだけでしょ? ぜーんぜん問題じゃないじゃん! それにお庭も広いし、お日様も当たるし、だから花ちゃんはここが良いよー!」

「まぁ確かに……音さえ我慢すれば勝手に家が綺麗になるならメリットの方がでかいな……。それに花ちゃんがいいって言うならここで良いかぁ」

「本当に、本当に、本っ当によろしいので……? 私が言うのもあれですが、何かあっても、幽霊に関しては責任は取れませんよ?」

「まぁ娘もあぁ言ってる事ですし、きっと大丈夫でしょう。ここに決めます」

「そ、そうですか……。でしたらこれから書類の作成に入りますね」

「はーい! お願いします!! お家決まってよかったね! パパ!」



トーマスは始め、「賃貸契約を結んだ方が……」と心配してくれたのだが、俺が借りるのではなく購入するというと、厄介払いもとい厄介物件払いができるからだろうか、それはそれは非常に嬉しそうな顔で値段交渉を始めた。


この後の値段交渉時に、幽霊が出るからと言う事でめちゃくちゃ値下げをしてもらい、最初の提示額より三割引で購入する事が出来たので非常に満足だ。


夜に鳴るという音や、勝手に綺麗になる事が少し気になるが、大きな問題ではないだろう──、


そう思っていた時期が俺にもありました。


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