135話 静電気と物件探し②
「そうですね。その条件ですと、当てはまるのは3軒ほどありますでしょうか」
不動産屋のトーマスに、住みたい家の条件を伝えていく。
俺と花ちゃんの条件はこうだ。
①庭付き(花ちゃん)
②風呂付き(俺)
③水洗トイレ付き(俺)
④陽当たりが良いところ(花ちゃん)
⑤冒険者ギルドが近い(俺)
⑥食料市場が近い(俺)
自分で提示しておいてあれだが、なんだか主婦みたいな条件だなぁ……。
まぁ利便性の追求は、快適な王都ライフに必須条件だし、ここは妥協できない。
庭は何するかわからないけど、花ちゃんが絶対に欲しいらしい。そのほかに花ちゃんの要望としては、陽当たりが良いところのようだ。
思い出すと花ちゃんが植物だった時は、良く窓際や外出した時の俺の肩の上でひなたぼっこしてたっけな。やっぱり人型になった今でも光合成が必要なのかもしれない。
現代人の俺にとって風呂や水洗トイレは必須だ。
高級宿屋にある複数人でわいわい入る裸の付き合いのある公衆浴場も良いのだが、個人の空間としてゆったりとした時間の流れを感じるような、癒しの時間を独り占めできる風呂はどうしても欲しいものだ。
トイレも同じと言えるだろう。
この世界のトイレ事情は王都であるビギエルヒルに来るまで、決して良いものではなかった。
民家には入ったことはないのでわからないが、安い宿屋ではボットン便所は当たり前だし、いざ旅に出るとトイレなんて近くには無く、野糞や野ションは当たり前だ。
それがどうだろうか。
王都にある宿屋や冒険者ギルドは水洗式のトイレなのだ。
上下水道がしっかりと完備されているというのは素晴らしいものだ。これもひっそりと地下街の住人達が提供している魔力のおかげだと言えるだろう。
残りの二つ、冒険者ギルドが近いというのと、食料市場が近いのは最悪妥協できる。
「如何でしょうか? お気に召す物件はありましたでしょうか?」
「パパ〜。花ちゃんこれじゃあよくわからない〜」
「うーん。確かに家の見取り図だけだとわからないところもあるよなぁ。地図と照らし合わせれば、近所に何があるかとかはわかるけど……」
「でしたらどうでしょう。直接見に行きませんか?」
「内覧できるんですか?」
「もちろんですよ。魔工家の良さは目で見て頂かないとわかりませんからね!」
「わーい!見にいこー!!」
◇
不動産屋を後にして15分程、1軒目の住宅に到着した。
冒険者ギルドにも食料市場にも近い。
これは、立地的には合格だ。
周囲は壁に囲まれていて、外からは中を伺い知ることはできないが、かなりの敷地面積があり、その立派な門に庭や住居部分にも期待が高まる。
「立派な門構えですね」
「敷地面積的にはここが一番広いところになります。ではさっそく中に入りましょう」
門を抜けた先にはその敷地に似合う庭と、豪華な屋敷が悠然と建っていた。
ぐるりと庭を見回し、さっそく屋敷の中に入る。
「わー! お庭も広かったけど、お家の中も広いね!」
「でかいねぇ……。こりゃ管理が大変そうだ」
「部屋数は十六室で、お風呂とトイレはしっかりと付いてます」
「キッチンも豪華ですね。この機械はなんですか?」
「機械? あぁ、この魔工具は食材保存用の魔工具ですね。この中に魔魂石を入れると冷魔鉱石に魔力が伝わりこの中が冷える仕組みのようです。夏でも食材が腐りにくいので便利ですよ」
「これは便利ですね、他にはどんな魔工具がこの家には付いているんですか?」
「まずキッチン周りは水道やコンロなど料理に必要なものは付いています。他には各部屋には魔灯が付いていますので、明るさは十分だと思います。後は室内温度を一定に保つ魔工具が各部屋の天井についています」
トーマスは「詳細はこちらに」と言って紙を渡してきた。
(なるほど、トイレは魔導式、魔力でタンク内部の水を浄化して何度でも使用可能と……。排水管が必要ないとか、地球よりもテクノロジー進んでるじゃない。まぁ魔法って本来そういうものなのかな)
風呂も蛇口をひねると火魔鉱石で温めた水が出てくるタイプの風呂で、これは高級宿屋にあった風呂よりも高性能だ。
「どうですか? この物件はとてもいいものだとは思うのですが……」
確かにいい物件だ。付いている魔工具も便利かつ高水準だ。
だがな……。
「このお家気持ち良くない〜」
そうなのだ。
花ちゃんの言う通り、この家の陽当たりが最悪なのだ。
内城壁の近くにこの物件があり、周囲の豪華で高層な住宅と相まって1日の中における日照時間がかなり短い。
それに部屋数も多すぎる。使わない部屋があっても維持が難しくなるし、そもそも掃除するのは誰かということだ。
間違いなく俺だろこれ……。
「すいません……。次も見せてもらっていいですか?」




