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134話 静電気と物件探し①



「不動産屋の紹介? お家でも買うんですか?」

「そうなの! パパお家欲しいんだって!」



全く人のいない冒険者ギルドで花ちゃんの快活な声が響く。


時間的には夕食前の一番人の少ない時間帯だろうか。


周囲を見回しても、何時ものように酒を飲んで管を巻いている冒険者たちの姿はない。


恐らくは何かしらの依頼を受けているのだろう。


「そうだ!家を買おう!」そう思った俺は、思い立ったら吉日という事で、王都冒険者ギルドのベテラン受付嬢であるサラさんに、評判の良い不動産屋の紹介をしてもらうべく、花ちゃんと一緒に冒険者ギルドへと足を運んでいた。



「そうなんです。いつまでも宿屋で生活していると、どうも人目が気になって疲れちゃうなって。どうしてもゆっくりとくつろげる空間が欲しいんですよ」

「なるほど、今最も勢いのある冒険者《雷帝》ベックさんですからね。どこに行っても注目の的ってやつですね。それにしてもお家が欲しいだなんて、流石は迷宮(ダンジョン)発見者(ディスカーヴァー)様。そのご様子だと、かなーり儲かっているんですねぇ」



ペラペラと何かしらの書類を捲りながら、からかうような口調でサラは言った。



「まぁ……ぼちぼち、ですね。っていうか知ってるんでしょ。俺の金って冒険者ギルドに預けてあるんですから」



ボラルスの街にいた時に発見した岩山の迷宮はなかなか繁盛しているようで、それなりの大金が迷宮発見者である俺の懐に入ってきている。


良質な鉱石がドロップする魔物が多く、昼夜を問わず冒険者が一攫千金を狙って迷宮深くへと探索に繰り出しているようだ。


階層も俺が発見した階層より下の、第十二階層まで発見されているようだが、大型のボスクラス魔物は発見されていないようなのでもっと下層があると言われている。



「流石に個人資産までは私たち受付ではわかりませんよ? まぁ大体の予想はつきますけどね」



サラがもっている書類でわかるのは、依頼達成回数や冒険者等級、倒した魔物の種類や数らしい。


魔物の種類や数は素材持ち込みした場合にのみ記載されるようだが、そこはしっかりと調査をした上で判断される。


落ちぶれ貴族によくあることらしいが、金で買った魔物を納品して冒険者等級を上げようとする奴がいるそうだが、そういった不正で手に入れた分不相応な冒険者等級は、「いずれは本人の身にしっぺ返しとして帰ってくんですけどね」とサラは困り顔で言った。



「で、そう言った人ってどこに行けば会えますかね?」

「ちょっと待ってくださいね。えーと、商業地区の第二区画に不動産を取り扱うお店がありますね。今地図を用意するので少しお待ちください」

「サラさん、助かります」

「いえいえ、冒険者の皆様のサポートも仕事のうちですからね」









サラから貰った地図を片手に、商業地区の第二区画へと向かう。


肉や魚、野菜などが売られている市場のような雰囲気の第一区画とは打って変わって、第二区画にあるのは武器や防具などを作る鍛冶場や馬車を製造する工場などが建ち並びまた違った空気が流れているようだった。



「パパ〜。花ちゃんお庭があると嬉しいなぁ」

「庭かー。じゃあ結構広い土地付きの家があると良いね〜」



不動産屋のある地図の場所へ向かう間にも、部屋数や風呂の有無などを花ちゃんと相談しながら楽しく目的地へと向かう。


鍛冶場から聴こえる、カンカンという小気味いいリズムの鍛造の音をいくつも超えると、次第に周囲は静かになり何やら怪しい雰囲気の道へと入り込んでいく。



「なんか気味が悪い所に来たけど……道間違えてないよな……?」

「骸骨さんが飾ってあるね! あれも売り物かなぁ?」



軒を連ねる商店は一段と怪しい商品を販売しているようで、店頭には骸骨や串刺しの小さなトカゲ、用途のわからない魔工具のようなものが販売されている。


この王都に似つかわしくない道を通っていると、本当にこんなところに不動産屋があるのか、サラさんから貰った地図を怪しみ始めた頃、ようやく目的の場所に到着した。



「地図だとここで良いはずだよな……?」

「お店なのかな? 普通のお家にしか見えないねっ」

「トーマス魔工家店……?」

「パパー。魔工家って何?」

「わからん……取り敢えず入ってみよっか。ごめんくださーい」



住宅街に建っている普通の民家のような佇まいの扉を叩くと、中から「はーい」という声が聞こえ、扉がひとりでにガチャリと開いた。



「これはこれは、いらっしゃいませ。初めてのお客様ですね。私、トーマスと申します」



開いた扉の奥にいたのは、如何にも、という感じで手を揉み合わせた、でっぷりと太った頭の禿げ上がったおじさんだった。


店内には他の従業員は居らず、ふよふよと勝手に動いているペンや書類が、まるで見えない従業員がいるかのように仕事をしている。


明らかにおかしいのは、外から見た店舗の大きさに比べて、店内が異常に広いということだ。


店舗の横幅の数倍の広さが目の前に広がっている。


その様子を見た花ちゃんは、「面白いねー!」と大興奮の様子だ。



「はじめまして。えーと、家を探しに来たんですが」

「左様でございますか。当店は普通の住宅とは違い、魔工具で出来た住宅を主に取り扱っております」

「魔工具で出来た家……」

「左様でございます。お気付きだと思いますが、この店舗も魔工具で出来た家、魔工家でございます。遥か昔の魔工具職人達が作り上げた傑作でございますね」



なるほど。今のオルガレド大陸の魔法使いでは再現できない魔法がかかったものなのか。

いや、もしかしたらフィーグーならできるのか?

でもあの研究魔は家とかには興味無さそうだな。



「じゃあそんなに物件は多くないのでは?」

「そうでもございません。残念なことに大変高価なので入居者が少ないのですよ。なので空き家はかなりあるのです。現在は十軒程ご案内出来るかと思います」

「高価……一応どんな家があるか見せて貰っても?」

「かしこまりました。ただ今準備いたしますね」



周囲のペンや書類と同じように、ティーカップが目の前に飛んでくる。その中に入っているお茶を飲みつつ、トーマスが戻ってくるのを待つのであった。


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