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120話 静電気と神樹⑤



(あれが……樹喰虫(ウッドイーター)……)


眼下に広がるのは、樹々の間を川のように流れる、夥しい数の樹喰虫の大群。


薄暗い森の中で、僅かに漏れる朝日を浴びるそれは、艶のある白い甲殻を更に際立たせていた。











         キシッ

        キシッ

       キシッ

        キシキシ    

          キシキシ

           キシキシ

           キシキシ

          キシキシ

         キシキシ

        キシキシ

       キシキシ

      キシキシ

     キシキシ    キシキシ  

    キシキシ   キシキシキシキシ

    キシキシ  キシキシキシキシキシ

    キシキシ ッキシキシ  キシキシ

    キシキシキシキシキ   キシキシ

     キシキシキシキ    キシキシ

       キシキシ    キシキシ

              キシキシ

             キシキシ

            キシキシ

           キシキシ

         キシキシキ

       キシキシキシ

     キシキシキシキ

    シキシキシキシキ

   シキシキシキシキシ

  シキシキキシキシキシキ

  キシキシキキシキシキシキ

  キシキシキシキシキキシキシ

  シキシキシキシキシキシキシキ

   シキシキシキシキシキシキシキ

    シキシキシキシキシキシキシキ

     シキシキシキシキシキシキシ

     シキシキシキシキシキシキシ

     シキシキシキシキシキシキシ

     キシキシキシキシキシキシ

    シキシキシキシキシキシキ

   シキシキシキシキシキシキ

  シキシキシキシキシキシキシ

  シキシキシキシキシキシキシ











(なんて数の虫の大群だ……。百や二百じゃきかないぞ……)



《魔力手》で巨木を登り、樹上から見る下界は、周囲の木々を喰い散らかしながら神樹に向かって侵攻する、白い蟻のような虫に埋め尽くされていた。



(どう見ても、シロアリだよなぁ、あれ……)



隊列を成して進む樹喰虫は、良くテレビなどで目にしたことのある生き物に酷似していた。


一匹一匹の体長は役二メートル程、大きめの頭に小さい胴からは左右三本足が生えており、それに続くようにして腹がある。

侵攻方向上に生えている樹を瞬く間に平らげながら集落に向かって進んでいる。


隊列を良く見ると、メインの集団は比較的小型なシロアリ。

その集団に紛れて、その倍以上の大きさの五、六メートル程の大きさのシロアリが点在している。


恐らく兵隊蟻であろうその巨体の頭部には、その巨大さに見合った二本の屈強な顎が付いており、まるでチェーンソーのような速さで巨木を切り倒していく。


切り倒された樹には無数の樹喰虫が群がり、奴らが通った後には、葉っぱ一枚はおろか、樹の幹すら残っていない。


その樹喰虫の侵攻から逃れるように、隊列の脇、その目と鼻の先には小鬼や角蜘蛛が、固唾を飲むようにその流れを見守っていた。



「集落まで後一時間くらいか……戻ってみんなに知らせないと」



転移魔法を使い、集落へと戻る。









『あと一時間程で、集落に到達すると思います。作戦は昨日の案で問題ないでしょうか?』

『あぁ、問題はあるまい。恐らく、樹喰虫の目的はこの神樹だ。目の前に目標があれば、周囲の樹には目もくれずに襲いかかってくるだろう。そこを叩く』

『わかりました。私たちは時間まで待機していますね』

『すまないな。巻き込んでしまって』

『気にしないでください。トヒノキさん』

『この礼は必ずさせてもらう』

『無事に終わったらお願いします』



俺は小屋へ戻った。



「準備はできたか? もうすぐで樹喰虫がここにくる。作戦は昨日決めた通りだ」

「おうよ! いつでもいけんぜ!」

「皆さん怪我したら直ぐに私のところに来てくださいね!」

「じゃあ行くか。ライアはここで待っててくれ」

「わかった。私は学者なんでな。戦闘はからっきしなんだ」



演技だとしても良く言うぜ……。

えげつない魔力持ってるくせしてな。

原初の魔法使いさんよ。


ライアが魔族だという事実は、まだ二人には言えてない。


この二人ならば受け入れてくれるのでは、という気持ちがないわけでもないのだが、ズルズルとそのまま言えずに来てしまっている。


この戦いが終わったら告げてみるのもいいかもしれない。


集落の入り口には、近くの集落の戦士や、トヒノキ、オダエ、コキミなどが集結し先頭に備えていた。


その中の一人、茶色に染まった頭部の魔樹人が、俺たちを見るなり馬鹿にした様子で大きな声をあげた。



『おい、神樹の集落の。何やらネズミが入り込んでいるようだが? それともお前らが飼育でもしているのか?』

『こんな小さい生き物の血を吸わなければならないほど、お前たちは苦労しているのか! 神樹の守り手をしたい部族はいっぱいいるぞ! 変わったらどうなんだ!』

『みっともねぇ! 笑えてくるな! がっはっは!!』



他集落の魔樹人たちは、頭部に生えている枯れた枝葉を散らしながら、豪快に笑っている。


何を言われているのか、わかっていないはずのノーチェやニエヴェも、馬鹿にされているだろう事は分かっているようで、両腕を組み不機嫌そうな顔をしている。



『西の集落のニカバコよ。その言葉、そのまま返そう。貴様たちの方が水分が足りていないのではないか? 頭部の葉が枯れ落ちているようだが?』

『くッ……』


たしかに、トヒノキと見比べて見ると、ニカバコと呼ばれた魔樹人やその取り巻きたちは、見窄らしく見える。


それはまるで枯れ木のような風体をしていた。




『彼等は客人だ。そして私の友でもある。無礼な態度は許さない。それに今回の戦にも参加してもらう事になった』

『こんな話の通じない、小さい生き物に何が出来るというのだ! 我々を見ただけで逃げ出すような生き物だぞ!』

『ふっ、何が出来るだって? 我が友ベックとその子分たちはは水を生み出せるのだ!』

『み、水だと!?』



水という言葉を聞いた魔樹人たちは動揺し、『そんな馬鹿な事があるか!』と、大騒ぎになった。



「おいおい……。なんか揉め始めてるが、大丈夫なのか?」

「昨日の事で盛り上がってるみたいだよ」

「昨日の事……。あぁ、そのマジックバッグの中に入ってる川の水のことか。めちゃくちゃ喜んでたもんなぁ」

「もう何十年も降ってないみたいだからね」

「大陸が迷宮化している事と関係あるのかねぇ」

「そうかもしれないな。まぁ、少し水でも上げて収めてくるよ」

「大変だねぇ。んじゃ俺っちたちは端っこで敵が来るのを待ってるよ」



昨晩と同じように、マジックバッグから水を辺りにぶちまけると、魔樹人たちはこぞって地面に足を伸ばし水分を吸収して行く。


事態はあっという間に収束し、魔物の襲撃を待つだけになった。


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