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117話 静電気と神樹②


案内された建物の中には、切り株に座った魔樹人(ウッドゴーレム)と、大きな木の松明が、ぽつんと壁にかけてあるだけだった。


クローゼットや小物、インテリアなどは一切無く、四角い箱の中に閉じ込められた様な、そんな気分になる。


炎がゆらゆらと揺れ、殺風景な建物の雰囲気に慣れてきた頃、何から話すべきか迷っていた俺よりも早く、パキパキと音を立ててながらキイカデが動き始めた。



『して、何を知りたいのじゃ?』



この集落の長であるキイカデは、その大きな体をずいっと前屈みに倒し、俺たちを覗き込む様にして話しかけて来る。


後ろの三人からすると、ヴェロヴェロ言っているでかい魔樹人の顔が、急に近寄ってくる様にしか見えないので、驚きのあまり後ろに飛び下がってしまっている。



『おぉ、すまん、すまん。驚かせてしまったかな』


『すいません。彼等にはキイカデ様が何を仰っているのかわかっておりませんので、少々驚いてしまった様です』



ノーチェは一瞬で五メートルは跳びのき、今にも蹴り出しかねない程の戦闘体制だ。



「大丈夫だよ。俺たちが小さいから、見にくいだけだと思う」

「本当だな!? 今、喰ってやる!って言ってたわけじゃないだろうな!?」

「そんなこと言ってたら、俺がもっと焦るでしょうよ……。お願いだから静かにしていてくれ」



他の二人も驚いていた様だが、一番驚いていたのはノーチェだ。さっき、踏み潰してやるって言われてた事を、脅しとして伝えたのがいけなかったかもしれない。



『この大陸の魔物の事についてお聞きしたいのです。この大陸の魔物が迷宮の……えーっと、黒い霧になって消えてしまう様になったのはいつ頃でしょうか?』

『そういえば、そうじゃったな。魔物たちは今のように、殺した後は消えないのじゃったの。いつからだったかのぉ……ちょっと前くらいかのぉ』

『詳しくはわかりませんか? えーっと例えば、何十年前から……とかのように』

『……お主ら、魔族じゃったかいの?』

『いえ、人族です』

『おぉ、おぉ、じゃあワシらとは時間の感覚が全く違うかもしれないのぉ。お主らの十年は、ワシらにとっては昨日みたいなものかもしれぬ。その感覚で良いのであれば……そうじゃの、三日前くらいかの』



つまりは約三十年ほど前のことって感じか?

先代の勇者が死んだと言われている時期と近いな……。



キイカデに一言告げ、仲間の意見を聞く。



「なぁライア。魔物が迷宮の様に黒い霧になって消えるのは、三十年くらい前かららしいぞ」

「三十年前……。じゃあそれまでは、普通の魔物だったってことか。では、魔物が消えるのはこの土地だけか聞いてもらえないか? 他の土地だったら普通に死んでいく魔物もいるかもしれない」

「わかった、聞いてみる。ノーチェやニエヴェも何か疑問に思った事があったら、言ってみてくれ」

「俺っちはな〜んか引っかかってるんだけどよ。それが何かわからねぇのよ。だから、もう少し待ってくれ」

「私も考えてみます!」



無言で待っていてくれたキイカデに向き直る。



『私たちは荒野を通りこの森へ入りました。荒野では小鬼やワーム、大亀などがいましたが、それらの魔物は黒い霧になって消えます。この森ではどの様な魔物が、黒い霧になって消えますか? それとこの森の外の土地ではどうでしょうか?」

角蜘蛛(ホーンアラクネ)小鬼(ゴブリン)種、後は知恵のない魔樹木(トレント)かの? この辺りがワシらを襲ってくる魔物じゃ。外の事はわからんのぉ。ワシらはこの森をでないからの」

『そうですか……。知恵のない魔樹木とは? 知恵がある魔樹木もいるんですか?』

『わかりやすくいうとの、会話ができる魔樹木かの。ワシらは古代種と呼んでるがのぉ。昔から生きている魔樹木は意思疎通できるんじゃが、見慣れない魔樹木は問答無用で襲いかかってくるからの、心が痛むが倒すと消えてしまうのぉ』



つまり昔から生きている、長命な魔物は消えないということか?

でもこれだけでは、消えないという事実だけしかわからない。

何か他に決定的な違いがないものか……。



「どうやら、昔から生きてる意思疎通できる魔樹木以外は消えてしまうみたい。この森の以外の事は知らないってさ」

「意思疎通か……。そもそも我々は魔物と意思疎通が出来ないからな……。判断が難しいところではあるが。そう考えると、魔樹人は魔物では無く、我々と同じ種族という枠組みの中の生き物なのかもしれないな」

「そうだなぁ。俺たちが勝手に恐れて、魔物だと思っていただけかもしれないね」



異世界から来た俺にとって、ノーチェやニエヴェも見た目的には魔物って言われても違和感はないからな。



「んで他の二人は、何か聞きたいことあったか?」

「すいません……私は思いつきませんでした!」

「じゃあさ、最近魔樹木の中で、死んだ奴はいるか聞いてくれないか?」

「死んだ奴? まぁ聞いてみるけど、なんでだよ」

「良いから良いから、後で説明するよ」



ノーチェは何か思い出したみたいだな。

ちょーっと聞きにくいけど、聞いてみるか。



『すいません、最後にひとつだけ……。失礼かとは存じますが、ここ最近でお亡くなりになった同族の方はいらっしゃいますか?』




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