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115話 静電気とヴェロヴェロ



俺たち四人が手を繋いで回しても、半分もいかないほどの巨木が、行く手を遮る様に立ち並ぶ。


隙間なく生い茂る木々の葉で、見上げても青空は見えず、星のない夜が延々と続いている。


葉っぱの形からして、松や杉などの針葉樹に近い樹木。


その特徴的な葉は、まるで金属でできたナイフのような形状だ。


前を歩く魔樹人が地面を踏み締める度、木々は揺れ、葉が落ち、硬質で尖った葉が地面に突き刺さる。


一つ間違えれば死にかねない恐ろしい落ち葉を《魔力手》の傘で避けながら、魔樹人(ウッドゴーレム)たちの後に続く。



「それにしてもお前にはびっくりさせられてばっかだな。まさか魔樹人と会話できる人間がいるとは」

「ほんとだよな〜。ベックがいきなりヴェロヴェロ言いだした時は、余りの恐怖に頭がおかしくなったのかと思ったわ」

「ふふっ。確かにヴェロヴェロ言ってて面白かったですね」

「真面目に話しかけてたんだよ。馬鹿にすんじゃねー」

「いや……でもな……ぷっ」

「ライアまで笑いやがって、お前ら全員踏み潰してもらうように頼んでやろうか」

「悪かったよ。俺っちに免じて機嫌なおしてくれ、な?」



うるせーうるせー。

何が俺っちに免じて、だよ。


それにしても、俺は普通に話してるつもりだったんだが、周りからはヴェロヴェロ言ってるように聞こえてたのかぁ。

なんか話しかけるのが若干嫌な気分になって来た……。


そういえばこの世界にきた時も、普通に日本語を話して通じたし、書いた文字も勝手に変換されて相手に伝わったっけ。


本当に《異世界言語》様々だな。


「しっかし、なんかこう、安心感があるよな」

「なんだよそれ、虎の威を借る狐みたいな発言だな」

「だってそうだろ? 魔族にさえ恐れられた魔樹人と一緒に歩いてるんだぜ? それにあっちは敵意がないときた! 大船に乗った気持ちで歩けるってもんよ」

「警戒だけは怠るなよ? 現状、あいつらと意思の疎通ができるのはベックだけなんだからな。絶対に一人になる様な行動は慎むように」

「「はぁ〜い」」



気の無い返事をするうさぎ兄妹だが、ライアの言っている事は正しい。


虎穴に入らずんば虎子を得ずとはよく言うが、この嘆きの樹海で最も恐れられている彼等の巣に行くのだ。


何があってもいいように、常に準備しておいたほうがいいだろう。


最悪の場合は、この大陸に来てからこっそりと各所に刻み込んで歩いている、転移魔法の魔法陣のお世話になることも考えておかなければ。


勿論の事、亀吉の背中にもしっかりと刻み込んであるので、会おうと思えばいつでも会えるのだ。



「近くで見ると凄い迫力だよな」

「魔樹人の事ですか?」

「うん」



目の前を歩く樹の巨人は、半径一メートルはある太い幹の胴に、巨木をそのまま引っこ抜いたかのような根のついた脚、細い枝が複雑に絡み合った頭部は、喋るごとに器用に動き表情も豊かだ。


三人?の魔樹人それぞれに個性があり、頭部にこさえている葉がまるで髪型のように違う形をとっている。


剣と盾を持った魔樹人は、リーゼントのような長細く前に伸びた髪型。


槍を持った魔樹人はまるでふわふわのブロッコリーの様だ。


この二人はどうやら男性型の魔樹人のようで、身体付きはとてもがっしりしているが、弓を持った魔樹人は女性特有の膨らみがありスリムでしなやかな動きをしている。


彼女の髪型は枝垂れ桜のような、はんなりとした腰までの長さのロング葉っぱだ。


その他にも、皮膚と言っていいのかわからないが、樹の皮の質感や色もそれぞれ異なっており、よくよく見ると顔つきも全員違って見える。


興味本位でどうやって繁殖するんだろう、などと考えていると三人の魔樹人が立ち止まり、剣と盾を持った魔樹人がヴェロヴェロと話しかけて来た。


『間も無く集落に着く。長に話をつけるので、集落に着いたら入り口で待ってていて欲しい』


『わかりました。私たちはあなた方の礼儀作法に疎いのですが、何かしてはいけない事はありますか?』


何でキレるかわからんからな。

先に聞いてしまうに越した事はない。


『特にはないが……そうだな、水の話は集落の中でしないでくれ。揉め事の原因になりかねないからな。それと、もてなしも何もできないと思っておいてもらえると助かる』


『水……ですか。わかりました。それにもてなしなんてしていただかなくても大丈夫ですよ。無理を言ってお願いしてるのはこちらですから』


『小さき者よ。お主は聡明で豪胆なのだな。魔族もそうであったが、大概のものは我々を見ると一目散に逃げ出す。それに比べてお主はどうだ。逃げ出すどころか、我々と同じ言語まで話すではないか』


カッカッカと笑い出す、剣と盾の魔樹人。

眉がありそうな部分と目尻が下がり、口角は上がっている。

本当に木でできているのかと思うくらいに表情が豊かだ。


『自己紹介がまだだったな、私の名前はトヒノキだ。小さき者よ、お主の名前はなんと言うのだ』

『ベックと申します。トヒノキさんよろしくお願いします』

『トヒノキで良い。見えて来たぞ。あそこが我らの集落だ』


トヒノキが指差す先には、周囲に生えている巨木が、まるで若木に見えるほどの大樹がどっしりと地面に根を張っており、その周囲には木造の家が立ち並んでいた。



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