111話 静電気と三日目
《ステータスボードオープン》
心の中で念じると、久しぶりに見た俺のステータスが表示される。
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名前 別宮洋也 年齢 27
職業 A級冒険者 魔物調教師:魔界草変異体
身分 ―――
能力値 Lv78
【体力】B+
【魔力】S+
【筋力】B+
【敏捷】S
【頑丈】B
【知性】G
【ユニークスキル】
静電気Ex(MAX) 魔法創造
【パッシブアビリティ】
異世界言語 体質強化 魔力操作Ex(MAX)
【アクティブアビリティ】
放電Ex(MAX)魔法:雷銃Ex(MAX) 魔法:雷槍Lv5 魔法:雷装鎧Lv5 魔法:電弧放電Lv4 魔法:神の裁きLv2 魔法:局部破壊放電Ex(MAX) 魔法:魔力手Ex(MAX) 魔法:魔障壁Ex(MAX) 魔法:ファイヤーボールってかLv1 身体強化魔法:極限集中状態Lv10
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大分lvが上がってステータスも伸びてきているが、魔力以外の伸びが悪いな。
訓練として行ってるのは魔力を放出する事と、それを様々な形にしたり、物を掴んで見たりと言う魔力系の訓練しか行っていない。
そのお陰かどうかはわからないが、魔力は順調に上がっている。
筋力や体力を伸ばすには、肉体的なトレーニングをした方がいいのだろうなぁ。
もしかしたらLvが上がると、ステータスが上がると言うよりも、上限が解放されると言う認識でいた方がいいのかもしれない。
悲しいことに相変わらず知性はGか……。
《魔法創造》で擬似的にも魔法が使えるとは言え、悲しいものである。
ドルガレオ大陸三日目。
俺は擬態大亀の亀吉(名前は勝手につけた)の甲羅の上で物思いに耽っていた。
何故物思いに耽っているかと言うと、つまるところ、二日目に続いて暇なのだ。
亀吉は非常に優秀な奴である。
目の前にワームをぶら下げておけばその方向に勝手に進むし、荒野に住む大抵の小鬼はその巨体で勝手に蹴散らしていく。
実に頼もしい奴だ。
移動速度も俺らが歩くより断然速い。
亀吉の活躍により、またしても暇な時間ができてしまった。
「なぁライア。ドルガレオ大陸っていつからこんな迷宮みたいになったんだ?」
「さぁな。花ちゃんを別荘に連れて行くまでは百年以上こっちに来てなかったからなんとも言えん」
「これって大問題だと思うんだよな。今のところは大丈夫なのかもしれないけど、この大陸に魔物が溢れかえったら、いつかオレガルド大陸に来る可能性だってあるだろ? そしたら超大規模な魔物災害になっちゃうんじゃないのか?」
「大いにあり得るだろうな。まぁ迷宮になっても今まで魔物災害が起きてないってことは、今代の勇者が頑張ってるんじゃないか? 先代はこの大陸の何処かで死んだらしいからな」
「なるほどねぇ。もしかしたらだけど、この大陸が迷宮じゃなかったって事を知ってる人間が居ないのかも知れないな。だから今俺が感じている危機感を誰も感じていないのかも。それか知っていたとしても、迷宮になってるなんて思ってもみないとかね」
「どう言う事だ?」
「だってそうだろ? もし今の勇者が最初からこの大陸が迷宮みたいな構造だと思ってたら、別にいちいちその事を気にしないと思うんだよな。 それこそ先代の勇者の時はまだこの大陸は迷宮じゃなくて、その迷宮化が原因で先代の勇者が亡くなっていたとしたら、この大陸が最初は迷宮じゃなかったって言える人間がいない訳だし」
「お前の言ってる事はいまいちよくわからんが、それはあのエルフだって知っているかも知れないだろう?」
「グランドマスターの事? そもそも勇者以外の冒険者がドルガレオ大陸に行ったって言う公式の記録は、四十年以上前のしか残ってなかったからグランドマスターも知らないんじゃないかな」
ドルガレオ大陸への渡航申請書の名前記載欄の最後に書いてあった名前は、王都冒険者ギルドで出会ったベネット爺さんの名前だった。
もしそれ以降、四十年の間に渡航している冒険者がいたとしても声を大にして言える状況とは思えない。
何せ正式な手続きを取っていないのだから。
「それにさ、教頭先生の話を聞いた後で良く考えたんだけど、フォレスターレ王国は都合のいい歴史書しか発刊してないみたいだし、もし、魔物災害にあったとしても、これに関しては完全に身から出た錆だよね」
「そう……だな……」
「「…………」」
「まだ……恨んでる?」
「魔族が滅んだのはもう何百年も前の話だ。当時生きていた人間なんて殆どいない。魔族も、そして王国側も。私が長い年月をかけて復讐しようとしてきた事は間違いないんだ。だからこそオレガルド大陸の魔法使いは、詠唱なしでは魔法も放てないほどに弱い。詠唱をするその隙は致命的な隙となる。どの様な戦いの場においてもな」
俺は黙ってライアの告白を聞く。
ライアのコスムカバや、他の生徒を見る時の目はとても優しい眼差しだった。
今を生きる人々は、何一つ戦争に関わっていない。
俺はライアが、関係ない人を巻き込んでまで復讐をしようとする様な、悪い奴には見えないのだ。
ライア自身もそれをわかっているからこそ、こうして俺と一緒に王女の薬を作るためにドルガレオ大陸まで来ているのではないだろうか。
「頭ではわかっているんだ。復讐なんてしても意味がないってことくらいはな。だけどな、不安なんだよ。この気持ちがなくなったら、私が愛した人たちの記憶も一緒に消えてしまいそうでな」
「普通に考えて簡単には割り切れないよな……まぁもし復讐したくなったら一言俺に言ってくれよ。全力で止めるからさ」
まだ観てないところ、食べてない物、この世界について知らない事は沢山ある。
それを奪われたらたまったもんじゃないからな。
「……ふん。女を知らない童貞の青二才がよく言うわ」
「ハァ!? 童貞は関係ないだろ!」
「……復讐したくなったら真っ先にお前に言うよ」
「殺されないようにもっと訓練しないとな」
「バーカ。ちょっとだけなら手加減してやるよ!」
そう言って笑うライアの顔は、どことなく晴れやかなものに見えた。
亀吉は進む。
もう少しで荒野を抜け、森に入るそうだ。
気持ちの良い風が頬を撫でる。
ゆっくりと時間が過ぎて行った。




