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108話 静電気と二日目


あったけぇ……。


なんだこれ……。


顔を包み込む、暖かく柔らかい感触。


自身の異変に気がつき、あわや窒息寸前の所、()()を右手で掴み退ける。


「ぶわぁっ!はぁ〜っ」


室内はまだ暗い。


息を整えると、また睡魔に襲われ意識が闇に堕ちていく。




………………


…………


……




意識も朧に、未だ右手に感じる柔らかいものを揉みしだく。


沈み込む指先に感じる柔らかさ。


手のひらに感じる、指先とは一味違う突き出た感触。



………………


…………


……




「おい、そんなに母親が恋しいのか?」


ライアの声が聞こえる。


(母親が恋しいのか……? どう言うことだ?)


寝ぼけ眼を擦り、目を開けると次第に意識が覚醒する。


目の前にいるライアと目が合う。


そして自分の右手の行方を見る。




「………………」






「………………」






何事も無かったかのように右手を離す。


ここで過剰な反応は危険だ。


落ち着け、俺。


クールに乗り切るんだ。






「……感想は?」


「すごく……大きいです……」


意気地なし(童貞)め」


「…………」






気まずい空気はしばらく続いた。









ふと窓の外を見ると、厚ぼったい緑色の雲が浮かんでいるのが見える。


緑色の雲なんて初めてだ。


窓の外に向ける俺の視線に気がついたのか、ライアも窓の外に目を向けると、血相を変え慌てた様子で叫んだ。


「今すぐ外の魔障壁に魔力を込め直せ!さっさとしないと死ぬぞ!」




その怒声から数秒後。




ジュッ…………。

ジュッジュッ…………。

ジュッ…………。

ジュッジュッジュッジュッ。

ジュジュジュジュジジュジュジュジュ。




緑の雨が降り始めた。



外で小屋を守るように展開している魔障壁を、緑色の雨が打つ音が聞こえ始めることで、先程ライアが急に叫び出した理由が明らかになった。



勢い良く打ち付ける緑の雨が当たったところから、魔障壁にダメージを与えていく。



アシッドレイン(酸の雨)だ。当たったらあっという間に骨まで溶けるぞ」


(魔障壁がかなりの勢いで溶け始めているな……。雨が止むまでに俺の魔力が持ってくれればいいけど……)


「そんな心配そうな顔をするな。私にも対応策はあるから、きつくなったら言えよ」

「この大陸に住んでいた魔族たちはどうやってこの雨を凌いでたんだ?」

「水魔法の《アクアヴェール》で防ぐ。魔族は属性との相性が良いからな、殆どの魔族が魔法を使える。それこそ子供であってもな」

「この酸の雨は結構な頻度で降るのか?」

「しょっちゅうだな。このドルガレオ大陸で厄介なのは魔力蓄えて強力になった魔物でも、知能をつけて徒党を組む魔物でもない。この劣悪な環境だよ」

「他にはどんな自然災害があるんだ?」

「そうだな……例えば「ふぁああぁあぁっぁああ」とかな」

「おはよう二人とも、起きるの早いな」

「あふっ。おはようございますぅ〜」


ノーチェ達も起きてきた。

ぴーんとたった耳を巻き込みながら、寝起きの顔くしくしをしている。


見た目は二足歩行のウサギなので非常に可愛らしい姿だ。


男のノーチェでも思わず抱きしめたくなるキュートな外見だが、モフモフの尻尾をこっそり触ったらめちゃくちゃキレられたので、おさわりはしないようにしている。


「ん? 雨でも降ってんのか? 身体でも洗ってこようかな」


命知らずかこいつ。


「やめとけ、死ぬぞ」

「死ぬってたかが雨だろ」

「雨は雨だが、酸の雨だぞ」

「酸の雨?」


窓の外を見るノーチェは絶句している。


そこから見える景色は、地面を溶かしながら流れる酸の雨。

平面だったはずの地面はまるで蜂の巣のように穴が空いている。


俺が建てた二階建ての小屋があるこの巨岩や、光沢のある鉱石が含まれた岩達は溶けていないようだ。


「朝食作るか」

「待ってました!」


火の魔鉱石を加工したコンロに火を入れる。

これは魔工具で小屋を買った時に一緒に購入した。


マジックバッグからコカトリスの卵と豚頭人のベーコンを取り出す。


スライム油を少しだけひいたフライパンにベーコンを入れカリカリに仕上げる。


ベーコンを取り出した後、その旨味の油が出たフライパンに卵を人数分入れる。


「目玉焼き、好みはあるか?」

「目玉焼き?」


ノーチェがフライパンを覗き込む。


「あぁモノアイ焼きね」

「モノアイ焼き?」

「そ、そ。サイクロプスの目に似てるだろ」

「単眼焼きって事ね」

「俺は半熟で頼むぜ!」

「お二人さんは?」

「「半熟で!」」

「あいよー」


パチパチと弾ける音が小気味良い。


出来上がった朝食を皿に乗せて提供する。


主食はパン屋の焼きたてパンだ。


「しっかし、お前のそのマジックバッグ、本当に便利だな。この旅で干し肉以外の飯が食えるとは思わなかったぜ」

「本当ですねぇ。ベックさんにはお世話になってばかりです」

「あとはもう少し優しくなってくれると良いんだが?」

「酒はダメだぞ」

「そんなこと言って良いのかな?」

「なんだよ」

「ニエヴェ、聞いてくれよ。今日の朝ベックがな?」

「ちょい待ち!!!わかった!わかったから!!!」

「ふふん。わかればいいのだよ」

「「??」」


その日は雨が止むことはなく、ライアと交互に酸の雨を防ぐ事になった。

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