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107話 静電気と一日目


「ニエヴェ!そっちに行ったぞ!」

「大丈夫よ兄さん!」


ニエヴェは猛烈な勢いで迫る小鬼をひらりと一歩で躱し、避けざまに後頭部を杖で強打する。


昏倒し倒れた小鬼の首筋に、腰に差していた小刀を滑らせる。

首から体液を吹き出し、小鬼は絶命した。


「はぁはぁ……。やっぱりこっちの大陸の小鬼は賢くないか?」

「そうね。最初の戦闘の時もそうだったけど頭目クラスがいないにも関わらずしっかりと役割分担されている気がするわ」


小鬼達が徒党を組むこと自体は珍しいことではない。

だがこれは、群れを統率するリーダーの存在があってこその話だった。


「それにやたらと体格がいいのが多いな」


最初の戦闘から二時間ほどで既に五回の戦闘が起き、倒した小鬼の数は二十二匹。


その中には強力な個体も数体存在し、以前戦った頭目岩小鬼ほどではないにしろ、成人男性ほどの体格をした小鬼もいた。


ニエヴェが倒した小鬼の死体が黒い霧のようになって散り、地面にカランと落ちた魔魂石を拾う。


「魔物の消え方もまるで迷宮みたいだな……」


ノーチェがぼそりと呟く。


迷宮と言うと、岩山の迷宮しか潜ったことはないが、その時倒した魔物は今みたいに黒い霧になって消えた。


後に残るのは魔魂石、そして時たま現れるドロップ品。


今、装備している牛頭人王の外套に使われた素材もドロップ品である。


「ライア、この大陸の魔物は昔から迷宮みたいな消え方をするのか?」


ノーチェ達に聞こえないよう、《魔障壁》で遮音して問いかける。


オレガルド大陸にいる魔物は、迷宮内部でもない限り魔魂石だけを残し消えることはない。


だからこそ毛皮や肉、魔物に生えている角なども解体する事によって手に入れることが可能だ。


「そんな馬鹿なことあるか。少なくとも私の記憶の中にはこんな風に魔物が消えてたなんて言う記憶はないし、話すら聞いたことがない」

「じゃあ何で……」

「わからん。ここ百年ほどはこっちの大陸で魔物を倒してないからな……。ドルガレオ大陸に何か起きてるって事は間違いないな」


《魔障壁》を解除する。


ノーチェ達は初めてこの大陸に来たので、ここはそう言う場所と考え、納得したようだ。







その後も数度戦闘をし、荒野をひたすらに歩く。

やはり小鬼達は黒い霧になって消えていった。

ふと、気になっていたことをライアに問う。


「なぁライア、後どのくらいで別荘に着くんだ?」

「気が早いよ。少なくとも二週間はかかるね」

「二週間!?」

「日数の話、してなかったっけ?」

「してないよ!じゃ、じゃあ魔吸虫はどの辺にいるの?」

「別荘から四日くらいのところにある森の中。まぁ別荘より早くマノス王国の跡地に着くから、観光でもしようよ。私も寄るのは久しぶりだし、墓参りでもさせてもらうさ」


俺個人の意見としては早く花ちゃんに会いたいんだけどなぁ。


「……なぁベック、そろそろ日も暮れてきたことだし、この辺で野営にしないか?」


そわしわした表情でライアが進言してくる。

おそらく酒が飲みたいんだろう。


「ノーチェ、ライアがこう言ってるけどどうする?」

「夜の移動は危険だからな。この辺で野営にするか」

「賛成賛成!」

「でも小鬼達、襲ってきませんかねぇ……?」


先ほどの戦闘で、出会い頭に地面から這い出た手に、がっしりと足首を掴まれ悲鳴をあげたニエヴェが引きつった顔で言う。


「う〜ん、そうだなぁ。あっ。あの岩の上はどうよ? あそこなら問題ないんじゃない?」


周囲を見渡すと楕円形の巨大な岩があり、その天辺はちょうどいい感じに平面になっていた。


幅二十メートル、高さ五メートルほどの巨岩だ。


「いいね。じゃああそこで野営にしよう」


いの一番にノーチェが巨岩に駆け上がった。




「ちょっとそこ、どいてもらっていい? 小屋出すからさ」

「「「小屋????」」」


俺はマジックバッグの中から、木造二階建ての小屋を出し巨岩の上に設置する。


「おいおいまじかよ……」


三人とも口をあんぐりと開け、茫然としている。


「地面に寝たくなかったら小屋買っておいた。中にベットとかもあるからここでゆっくり休もう」

「ベックさん、貴方も何者なんですか……? 私の中の常識がどんどん壊れて行きますよ……」

「まぁ気にしないで中に入ろうよ。食材もたっぷり買い込んであるからリクエストがあればなんでも作るよ。まぁ俺に作れる料理だったらね」

「私も手伝います! こう見えて私、料理得意なんですよ!」

「ニエヴェの料理は美味いぞ!」

「酒の肴になりそうなものを頼む!」


小屋の周囲をありったけの魔力を込めた《魔障壁》で囲み、ニエヴェと共に晩餐の準備を始める。


「わぁ凄い!保存室まで付いているんですね!?」

「だから、お前、荷物は衣服だけでいいよって言ってたのか。まぁ俺っち達としては助かるけど、こんな贅沢な野営なんかしたことないぜ」

「どうだ!私のベックは凄いだろう!」

「誰が私のベックだ! つうかその酒どこから出した!」

「ふっふっふ。な・い・しょ!それともお前はあれか? 乙女の胸の谷間を弄ろうとでも言うのか??」

「なっ!そんなところに入ってんのか!?」


昼間の感触を思い出し、思わず赤面する。


「あっ!兄さん、どこ見てるのよ!エッチ!」

「いやいやいや!みっ見てねーし!俺っちは見てねーし!」

「いいから早く酒の肴を頼むぞー」


騒がしい夜の時間が過ぎていった。







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