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101話 静電気と準備③


顔を赤くしているライアを後ろに、先程まで勇者の相手をしていた店主のトッドの元へと向かう。


「お客さん来てたのにお邪魔してすいません……」

「気にしないで。それより貴方、噂の《雷帝》さんだったのね。光栄だわ、そんな有名冒険者に来ていただけるなんて」

「みんなが勝手に呼んでるだけで、俺なんて全然大した事ないですよ」

「あらあら、随分と控えめなのね。普通の冒険者なら増長してるところなのに。調子に乗ってやりたい放題のおバカな冒険者より好感が持てるわ。あたしはトッドよ。宜しくね」

「はは、ありがとうございます。ベックと言います。こちらこそお願いいたします」


そう言って右手を突き出して来た。

俺も握り返し握手をした後、トッドはカウンターに肘を付き、両手で頬杖をつきながら妖艶な雰囲気で『ふぅ〜』と、ため息をついた。


アヒルのように突き出した唇が正直気持ち悪いのでやめてほしい。


「さっきの彼、知ってるだろうけど勇者よ。あたしの店を使ってくれるのは嬉しいし光栄な事なんだけどね。そのおかげで武器や防具しか売れなくなっちゃったのよ」


トッドは同じ体勢のまま、またしても深く溜息をつく。

なるほど、勇者が通っている鍛冶屋。

そりゃあサラさんも俺にお勧めするわけだ。


「あたしは日用雑貨で、可愛い物を売って生活してたのよ。包丁や金属製の食器なんかをね? それが今じゃ武器や防具ばっか売って生活してるわ」

「でも武器だって防具だって、商品が売れるのはいい事なんじゃないですか?」

「それは商売だからね……。売れることは良いかもしれないけど、武器や防具って可愛くないじゃない……。それに店に来るのは気合いの入った冒険者たち。女の子なんて店に寄り付かなくなったわ」


むしろ女性の客が居たのかよ……。

つい、お前も可愛くないぞと言いそうになるのを堪え、適当に愛想笑いをしてごまかした。


それからしばらく、彼女?の男の趣味の話や、俺の女の趣味、彼女の有無を聞かれたりしたが、子持ちですと伝えると一瞬だけ悲しそうな顔をした気がした。

フラグもたたなかったし、我ながら上手く乗り切れたと思う。

自分で自分を褒めたい気分だ。


いつのまにかライアはいなくなって居たし、そこに至るまでに相当の時間を消費してしまったけども、貞操の危機は脱することができたと思う。


「はぁ〜、少し喋ったからスッキリしたわ。ベックちゃん、貴方って本当に良い子ね。あたしの話聞いてくれてありがと。お礼と言ってはあれだけど包丁とお鍋、用意させて貰うわ。ちょっと待っててね」


またしても、モデルの様な動きをしながら奥へと戻って行く。

相変わらず尻の強調されたレザーパンツが目に入るが気にしないことにしよう。


十分程待ったところで細長い木箱と、シンプルなデザインの鉄鍋を持ったトッドが笑顔でやって来た。


「これ、最後まで売れ残ってた包丁なんだけどね? 結構自信作だったのに、全然売れなかったのよ。良かったら使ってちょうだいな。こっちのお鍋はおまけよ」


そう言って手渡された木箱を、開けて良いかどうか確認してから中に入っている包丁を確認する。


「凄く綺麗な刃ですね」

「でしょ? あたしの自信作だったのよ。でもこんなに可愛いのに女の子受け悪かったのよねぇ」


手渡された木箱の中に入っていた三徳包丁には、刃の部分に美しいオーロラを写したかの様な刃紋が浮かび上がっており、見るものを魅了する包丁だった。

一目で匠の逸品だとわかるほどだ。


(あぁ成る程ね……)


刃は素晴らしいのだが包丁の取っ手の付け根を見ると、眼窩の部分がハートマークになっている頭骸骨があしらわれていた。

これじゃあ女の子なんて買いに来ないだろ……。


武器も防具もこの店に並んでいるのはパンクな見た目の物ばかりだった。

売れて行ったという包丁も、もしかしたら盗賊などの軽い武器を取り扱う人達が買って行ったのかもしれない。


可愛いの基準が、圧倒的にずれてるんだな……この人。


鉄の鍋を確認すると、こちらはどうやら普通のお鍋の様だった。てっきり鍋底に髑髏でも刻まれてるんじゃないかと不安だったのだが、流石にそれはない様だ。


そんなもの刻まれてたら、洗いにくいしな、

その辺はしっかり考えているのかもしれない。


「おいくらですか?」


ひとしきり包丁と鍋を確認し、値段を訪ねる。


「お代は要らないわ。その代わりメンテナンスは必ずあたしにやらせてちょうだい?」

「良いんですか?」

「良いわ。そうしたらベックちゃんがまたお店に来てくれるでしょ? もちろんメンテナンスする時はお代を頂くけどね?」


そういうと、トラウマになりそうな表情でウィンクをかまして来るトッド。

オカマな青髭ドワーフのウィンクは破壊力抜群だった。

必ず来ることを約束し、お店を後にした。


次は、食材調達だ。


人気の少ない裏路地から、大通りに繰り出すと周囲に轟音が響き渡り、商店に頭から突っ込んでいる勇者の姿と、ビキニアーマーに羽交い締めにされているライアの姿が目に入った。


何やってんだよ……。






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