The introduction of the girl
今回は初めての彼女との会話。
あの日見た彼女とは違う彼女の姿がそこにはあった。
そんな話です。
昼休みに話しかけてきたのは彼女、佐藤瀬名だった。
彼女は他のクラスメイトに聞こえないような声で囁いた。
「……放課後少し付き合ってくれない」
その時の俺はというと思春期真っ盛りに加え、女性経験ゼロだったので佐藤の顔を直視できなかった。
「ああ、構わないが」
学校という業務の終焉を知らせるチャイムが鳴り響いた30分後……
今この場所はというと学校から数百メートルに位置する喫茶店。もっと言えば登下校中に通る例の歩道橋のすぐ側にある。
俺と佐藤は簡単な注文を済ませようやく本題に切りかかる。
「で、用件はなんだ」
佐藤はテーブル上にある猫の形をしたアンティークを掌で弄びながら告げた。
「私って君とどこかで会ったことない?」
この世界とは違う場所でと言うのも馬鹿らしいので正直に話さないことにした。
「ない。そもそも今日初めて話したと思うぞ」
腑に落ちないような顔で見つめてくる。教室の彼女よりも、一層小動物らしい姿は見ている側からすればつまらなくない。
「で、他の用件はなんだ?」
「ん?それだけだよ」
たった案件がそれだけなのになぜここまで来て二人で話すことにしたのか疑問を投げ掛けた。
「ああー。それは君の友達、えーと何て言ったっけ?斎藤君だっけか、その子と君はいつも一緒にいるでしょ。だから学校で話す機会もないから二人だけになっちゃおうって思ったの」
斎藤、クラスで認知度一番低いのだろうかと考えたが自分も同じような立場なので思考は止めた。
「二人きりで話す意味なんかあるか?別に斎藤がいたって話しても良い内容じゃないか」
「それはダメ。君だけにしか聞けなかったことだから。他の人に聞かれるのだけは絶対にダメ」
交際なんてしたこともない俺は女の考えていることが全くというほど分からない。時間には慣れているのに、別性というだけでなぜここまで苦戦してしまうのか。
「まあ、人に言うような内容でもないしな」
「そうでしょーー。でも会ったことなかったか、私の思い違いかなー」
最後の彼女の言葉に一応希望を賭けてみることにした。
「もしかして、駅のホームで見かけたとか?」
あ、正解だ。直感的に感じ取った。
「そうだ!君が私のことをずっと見てたから知り合いかなって思ったんだよ」
でもあの時の彼女は死んでいるはず……
「その時の俺って疲れてた?」
電車出発時刻に間に合わせるために全速力で走ったことを思いだし、あの日の出来事か確かめる。
「そうそう。疲労しきった感じでねー目立ってたよー」
俺が脳内の記憶をパズルのように組み合わせる中、彼女は続ける。
「確か、前の学校で最後の登校日だったかな。だから余計印象深くなっちゃったのか!」
説明している最中にひらめいたと言わんばかりに目を見開いている。
対する俺はというとこちらも閃いた事柄を文字に置換させまとめていく。
分かったこと
1,自分が変えた世界はそのまま現実となる。
2,変えた世界の記憶は現実世界の人々の記憶となる。
「よしっ。サンキュー佐藤」
さっきまで閃いた顔をしていたのがいつのまにか自分へと移ってしまう。
「なにが?」
立場が逆転していしまったことにようやく気づいた俺は、一度気を取り直してから言った。
「いや、なんでもない」
納得してなさそうな表情だったのでなんとか話題をそらそうと努める。だが一向に聞き入れようとしないので諦めた。
「分かった。週一でこの喫茶店で俺が奢るというのはどうだ?」
「毎日」
「そしたら斎藤が泣く」
彼女を作ろうとしないと一番に伝えていた本人に誤解されたら厄介だ。
「週一で勘弁してくれ」
目線を店内にずらして気にくわないような表情だったが了承してくれた。
その後俺と佐藤は喫茶店で別れ、なるべく部活終わりの生徒には遭遇しないようにそそくさと帰宅した。
帰宅した俺はというと真っ先に自室のベッドに横たわり今日あったことを思い出す。
周りから見たら男女二人きりでいる=付き合っているなのかもしれないが、俺と佐藤はそんな関係じゃない。しかも今日初めて付き合うなどというラブコメのような展開は俺には無縁だ。
でも、あの無邪気な仕草というのは嫌いじゃないな。
会うことが苦痛にならないなら良いかと思考を巡らせるうちに眠りに入っていった。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
次回ぐらいから段々と時間軸がややこしくなっていくので、あとがきで分かりやすく書いていきたいと思います。
では。これからもよろしくお願いします。




