Over the time(new world)-epilogue-
少しでも読んでくださった読者様、全て読み通してくださった読者様、今まで本当にありがとうございました。
今回で完結とします。
あと少し、少しだけお付き合いください。。
眩しい陽の光を浴びながら、窓の向こう側に鳥のさえずりが聴こえるのが分かる。
重い、そして軽いとも呼べる体を起こしながら外を見つめ、
区切りとも呼べる今日を向かえることになった。
――よしっ、行くか――
俺はいつもとは違う心意気で家を出る。
「よっ、沢田」
教室に入った途端に声をかけてきたのは今では相棒のような存在の斎藤である。
「昨日も一緒にどこか行ったのか?」
「行ってねーよー」
昨日、彼女と俺の真意を語り合った後はそのまま別れて帰った。
「なんだよーー」
どうやら落胆しているらしく高揚していた肩を落とす。
だがすぐに気を取り直し、
「でも、なんか進展あっただろ?」
「何でだよ」
「なんつーかさ、佐藤さんの表情が柔らかくなったつーか、豊かになったんかな」
「何だよ、それ」
俺はもう分かっているはずの彼の疑問を再度問いただす。
「言葉じゃ表現出来ない感じなんだよ。簡単に言えば何かが変わったってことだよ」
「お前、本当に知らないのか?彼氏のくせによ」
「ああ」
俺しか知りもしないその答えが彼にも感じ取っていることが嬉しくてたまらなかった。
そう、彼女はやっと変わったのだ。
「んじゃ、今日直接聞いてやるよ」
そうして、日課となっていたあの場所へ再び行くことになった。
今日も世界は俺を中心に回り出す。
時を見る――すなわち過去と現在のパターンを全て把握し掌握することが可能となった今、俺は変わらずに平穏な毎日を送る。
彼女――佐藤瀬名と付き合うことになった俺は昨日の一件があったためなのか、今までよりも彼女との親近感が湧くようになった。
昨日は彼女の本心を受け止めることで精一杯だったが、着々と関係は良くなっていく。それは表面的なものではなく、内面的な変化だ。
「今日もぼけーーってしてるーー」
「してないよ」
もう聞き慣れたフレーズに親しみを覚える。それはまた安心感に似ていた。
「そういえば斎藤くんはどうしたの?なんか呼んでたっぽかったけど」
「あいつなら放っておいても平気だ。なんとかなる」
二人――俺と彼女の現在位置は歩道橋が間近にある喫茶店。
久しぶりのような行きつけの場所に再び来店したのだ。
窓の向こう側には少女を助けた場所でもある歩道橋。そういえば、あの時にはもう過去を遡れるようになっていたのかと感慨深くなる。
「あっ、そうだよ!」
突然、何かを思い出したかのように閃いた顔をする彼女。
「あの時、君が私に生きてーーって言った時さ」
今でも鮮明に覚えている記憶。
「私を大切な人として見ているのはこっちの世界だけーって言ったよね?」
わざわざあまり印象に残っていない部分を突いてくる。それも彼女らしいって言えば彼女らしい。
「てことはさー、違う世界の私はどーでも良かったってこと?」
微妙な笑みとともに頬杖をついてこちらを覗いてくる。
「いやいやそういう意味じゃなくてだな」
無論、そんな暴論を承認するわけにはいかない俺は反論を開始する。
「じゃあーー、どういうことよーー」
納得いくまで席を立たないような雰囲気を醸し出すこの人を見ると、説得は難しいだろう。
「どういうこともなにも……」
話し始めようとした俺に彼女はそれほど興味はないらしい。
「ねえ、今日は君の奢りでどっか行かない?」
「いきなりかよ……話飛び過ぎじゃ」
俺の言葉を聞き入れずに咄嗟に店外へと退出する彼女、同時に黒髪の艶やかな質感が太陽の日差しを反射させる。
「早く早くーー、置いてくよーー」
口の回りに円を作るようにかざし、こちらを呼ぶ。
「ったく……分かったよ、今行く」
ちょうど彼女と俺の分の会計を済ませ店を出る。
そのころには彼女は歩道橋の階段を登り始めていて、
俺の記憶の中で過るもの。それは昨日話した後の彼女の晴々とした表情。
よしっ。行くか。
時間というものを越えて、俺はまた歩み始めた。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
自分なりに、自分らしく書いてきた物語だったので稚拙な文ばかりだったかもしれませんが。
それでも、書き続けられたのは読者の皆様のおかげです。
最後になりますが、ここまで読んでくださった読者の皆様。
本当にありがとうございました!
もしかしたら、彼らの時を巡る物語は未だに続くかもしれません……
では、またお会いしましょう!




