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戦料理人は異世界も喰らう  作者: 世見人白洲
第一章 森の暮らし
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第十三話 突撃お隣さん家

恥ずかしがるリリをちょっとだけイジり、時間はかかったがピエピエと鳴く子供達全員にもしっかりと手ずから食べさせた。


もちろん、リリにもだ。


「お前達、食べたかー!」


『『『『ピィイイイ!』』』』


「満足したかー!」


『『『『ピュイイイイ!』』』』


「だったら、ご馳走様でした。だああああ!」


『『『『ゴちそうさまデシたあああああああ』』』』


「いよおおおし!解散!」


しっかりとアフターケア?を行いぽっこりと腹を膨らませたハーピー達は飛ぶのが辛いのか右に左にヨタヨタと歩いて帰って行く。


しっかり食べ、しっかり眠れ。そして明日からまた食料調達頑張るんだぞ!


俺も大満足し、うんうん!と頷いているとクーが挨拶にきた。


「ミドウさん~本当にぃ、ありがとうございました~。食べるものだけじゃなくって~こんな美味しく料理してくれて~本当に感謝してますぅ」


「いいって。俺がやりたくてやったんだ」


「でも~私達はミドウさんからもう離れられませんので~」


「なんで?!俺、この件が落ち着いたら街に行くんだけど?!」


「だって~こんな美味しいもの食べたら~もう他のものなんて食べられませんよぉ?」


「いや、そんな事言われても。それにちゃんと言っただろ?お客様って。ハーピー達は我が子のように可愛いがな?」


「何言ってるんですか~?私達は~もう家族ですよぉ?」


「「はい?」」


静かに聞いていたリリと声が被った。


「ミドウ様?いったいどういうことでしょう?」


「え?知らない。俺何も知らない」


「契りを交わしたじゃないですか~」


「「えぇ?!」」


おい!何言ってんだよ!何もしてないだろ?!


あ、ヤバイ気配がする。汗が止まらない。弁解しないと命に関わるかも知れない。


「リリさん?聞いてもらえますか?」


「どうぞ?」


「本当に何もしてないので…」


「それで?」


「以上です…」


「うふふ~」


「おい、変な誤解されてるだろ!どういうことか言えよ!」


「本当にわからないんですか~?」


「わからないな」


「名付け、ですよ~」


「だから?」


「従魔契約ですよ~?」


「それで?」


「えぇ~?」


「ん?」


「はぁ…ミドウ様。よくわかりました。いいですか?従魔契約って言うのは……」


俺は精魂尽き果てるまでリリに絞られた。


ねっとりネチネチと従魔契約がどういうものかを教え込まれたのだ。


リリペディアがなかったので知らなかったが名付けは相手が魔物であり、認め認められる仲でなければ成立しないものなのだが成立すると様々な恩恵が貰える。その代わり大切に扱わないと天罰が下るらしい。


天罰だと?なにそれ、怖いんだけど。


つまりクーは俺を脅しているのだ。


私達を置いていくと食事を摂らないで飢え死にしてやるぞ?いいのか?天罰くだっちゃうよ?と。


なんて奴だ。小細工は止めろと言ったのに…いや、これは知らなかった俺が悪いな。含んだ言い方をしてリリをイジってはいたがクーは本当に従魔契約の事を俺が知っていると思っていたのだろう。


となれば男としてやる事は一つしかない。


「すみませんでした」


DO GE DA だ。


「あら~困りました~私達はミドウさんを困らせたかった訳じゃないんですよぉ?」


「だろうな…美味しいものが食べれたらもっと、と思うのは当然だ。俺の配慮が足りなかった。だが俺は止めるつもりはない。礼には礼を。相手が困っていて、礼を忘れない相手ならば俺はまた同じ事をするだろう」


「うふふ~いいと思いますよぉ?私達は~そんなミドウさんが好きでついていくんですから~」


「私もです!」


「悪い。だが、ありがとう」


「いいんですよぉ?でも、これからも美味しいもの食べさせてくださいね~?」


クー達は完全に付いてくるつもりらしい。


リリに聞いてみると小さな町だと住民が怖がるから無理らしいが王都など大きい都市なら従魔使いの冒険者がいたりするから大丈夫な場所もあり、家を購入できれば問題はないとのこと。


ならば何とかなるかも知れないが…


「クー。聞いた通りだ。家を買うまでは無理だ」


「そんな~」


「無理ったら無理!」


「仕方ないですね~出来るだけ早くお願いしますねぇ?」


どんどんやる事が増えていく…ハーピー達は20人?程だから相当大きな家を買わないと厳しいだろうな…何年かかるのやら。

となると俺は通い妻か?普通逆じゃないか?色々とおかしいだろ!


「善処…する」


現代人の得意スキルを発動しておく。


すまんな、クーよ。


「じゃあ俺達もそろそろ寝るか」


「はい。でも、その…」


「ん?」


「一緒に寝て欲しいのですが…」


リリとは話す必要があるとは思っていたがどうするか…


「んー…」


「無理にとは言いません!これから置いていかれるとしても今だけは!今だけはミドウ様を感じて居たいのです!」


「置いていくって、なんで?」


「え?だって…え?」


「約束しただろ?破るつもりはない。守ってこその約束だ。リリを逃がしたのは俺の力が足りなくてリリを護れる自信がなかったからだ。責められる事はあっても俺がリリを非難する事はないよ」


「でも…でも…」


「リリはいつも泣いてるな。じゃあ今日は一緒に寝ようか」


「ううぅ…ごめんなざいぃ…」


「それじゃあ行こうか」


「行きましょう~」


「なんでお前も一緒に寝ようとしてるの?と言うかハピ子と一緒の事しないで?」


「あの子はよくてなんで駄目なんですか~?」


「ハピ子には俺の服をあげたからね」


「うふふ~私もミドウさんの物持ってるんですよ~?」


「ん?なんで?」


「あの子が持ってきたんです~」


「おい!そのテンガロン!大熊との戦闘後に無くしたと思って諦めてたのにちゃんと持ってきてくれてたのかよ。ありがとう。でも返せ。」


「えぇ~!」


「駄目だ」


「じゃあ代わりに~」


「ない」


「そんな~」


「ふふっ」


クーから愛用のテンガロンを奪い返しているとリリは少し元気を取り戻したようだ。


まだ二日?いやもう三日目か。たった数日なのに激動の毎日が楽しくて仕方ない。


まったく…


「ははは!まぁいいか。じゃあ皆で寝るぞ。家族だからな!」


「だって~子供達~」


『『『『ピュエエエ!』』』』


クーはこっそり風魔法を使って子供達に知らせていたようだ。


声を掛けられて集まってくるともみくちゃにされてしまった。


嗚呼…楽園はここにあったんですね…しっとりとして吸いつくような肌はとても滑らかでいい香りがする。

綺麗な先端は…駄目だ!子供じゃないけど我が子みたいなものだっていってるだろ!しっかりしろよ俺の理性!


目の前がくらくらする…限界だ。


『『『『ピィエ!?』』』』


そんな声を最後に俺の意識は途切れた。





目を覚ますと皆で食卓を囲んだ部屋で山になって寝ていた。軽いからいいのだが暑いし危ない。構って欲しいなら暇なときに来てくれれば遊んであげるのだが、それは落ち着いてからになりそうだな。


折り重なった羽の山から抜け出して小川で顔を洗って人心地ついているとリリも入ってきた。


「起こしちゃったか?」


「いえ、私はミドウ様の寝顔を…その…」


「またか?いいけど面白くないだろ?」


「いいんです。好きで見てるだけですから…」


「申し訳ない。嬉しいがやっぱり、まだ三日だ。これから先、色々な事があるだろう。俺に足りないのはリリだけじゃなく俺と一緒に居てくれる人に対する時間を掛けた性格の確認と俺自信が安心出来るかなんだ。ちゃんと返事はする。だが、時間が欲しい」


「わかっています。焦るつもりはありません。しっかりと私を見て下さい」


「あぁ…ありがとう。本当に」


「そっち行ってもいいですか?」


「駄目だ」


「なんでですか?」


「今、リリは服を着てないから」


「着てたら?」


「いいよ」


「じゃあ残念ですね」


「そうだな」


ふふふ、はははと笑い合い、穏やかな時間が流れる。


わかってはいるんだ。リリは落ち着いた大人の女性の雰囲気を持っているがどこか幼さも含んでいる。擦れていないと言うべきか。実直で真面目、何よりも真剣。俺には勿体無いくらいだ。


だからこそ申し訳なくて仕方ない。過去の事など忘れてしまえば楽になるが、この面倒な性格も含めて俺なんだ。だから料理と一緒で納得行くまでさせてもらう。早いか遅いかはわからない。

己の気持ちに整理をつけたとき、俺は…


「あら~二人でいい感じですね~?」


「離れろ」


「えぇ~」


「早く」


「もう~」


はぁ。とんだ邪魔が入ってしまった。


クーが起きてきた事でハーピー達も水を浴び始めた。


リリだけじゃない。この子達にもしっかり応えてやらねばならない。


「おはよう、皆。調子はどうだ?」


「ミドー!幸せ!」


「おぉハピ子、昨日はよく我慢したな」


「ピィ!ミドー!」


スリスリと擦り寄ってくるのだが濡れているので少し気持ちが悪い。乾かしてからにしてくれ、頼むよ本当。


「よしよし、水を乾かしてからな」


「ピッ!」


一瞬にして水が弾き飛ばされる快感。もう癖になってしまった。まだ二回目なのに!


だが二度も同じ轍を踏むつもりはない。気持ちよさに感けて可愛がっちゃうと腰砕けになってしまうからな。軽めに頭を撫でて頬ずりする程度にしておく。


クーは長と言うよりやっぱり親なのか、俺がハピ子や他のハーピーを可愛がっている時は優しい目で見守っている。変なところで大人っぽいんだよな…


「それで、とりあえず大熊は倒したからこれで狩りにはいけるよな?」


「そうですね~」


「なるべく早く皆で住める家を手に入れたい所だが、そう上手くいかないのが人の世ってやつだ。悪いが頑張ってほしい。でも我慢できなくなったら臭いでも辿って来てくれ。森に入ることもあるだろうからその時にでもな」


「その必要はないですよ~」


「お?我慢を覚えたか?」


「違いますよぉ?従魔契約を結んでいるので念話が使えるんです~」


「へぇ?」


念話ってあれだろ?コイツ…頭の中に直接…!ってやつだ。そうなるとプライバシーどうなるんだ?


『ミドウさ~ん』


「うお!どうやってやったんだ?!」


『ん~、心の中で~話かけてみてください~』


んんんっ…!心の中で語りかける…


よくわからないな。


じっとクーを見つめる。


『やっぱりクーは綺麗だな』


「えっ!」


「え?」


「?」


リリには伝わってないみたいだ。それもそうか、従魔じゃないしな。


「え?今の伝わったの?語りかけてないんだけど」


「照れますよ~早く愛の巣で子供作りましょうね~」


「?!」


「ミドウ様?どういうことですか?」


「いや…ち、違うから。またクーが勝手な事を言ってるだけだから」


「そんな~綺麗だって言ってくれたじゃないですか~ハーピーからしたら十分な求愛ですよ~?」


「俺がハーピーの生態なんて知るわけないだろ?!」


「えぇ~?」


「そういうわけだ、リリ。クーの思い込みだ」


「はぁ…もう、驚かせないでください」


「申し訳ない理解してくれて助かるよ…」


「まぁ~ハーピーは体力と魔力があれば番がいなくても卵産めますので~。あ、もう少ししたら卵産めると思いますが~食べますか~?」


「「えっ?!」」


「何驚いてるんですか~?」


「え、いや…自分で産んだの食べるんだと思って…」


「クイーンの意思で子供を作らない限り生まれてくるのは魔力の塊の卵なんですよ~美味しいですよ~?孵化しないので安心してくださいね~」


無精卵と有精卵まで…まさしく鶏だ。


「是非貰おう」


「産んだら~届けますね~」


「頼むな!楽しみにしてる!」


「ぐぅ…!」


「リリ?どうした?」


「いえ…」


「そうか?腹が痛かったら無理するなよ?」


「違います!」


「すみませんでした」


リリを怒らせてしまった…反省しなければ。


クーが体力を取り戻してるって事は他の子達も大丈夫だろう。

なんにせよよかった。


だがラミアと縄張り争いしてるって事だしこれも解決しないとな…


気が重い…


「なぁ、クーさんや?ラミア達との縄張り争いどうするんだ?」


「どうしましょうね~?人数も少ないですし~私達の敵ではないので~適当にあしらってたんですけど~」


「そうなのか?」


「そうですよぉ?私達は知性ある相手を無闇に殺したくないですから~」


「そうか。ハーピー達に被害が出てたら殲滅してたかも知れないけどそうじゃないなら相手の問題も解消してやって、ハーピーを連れていくまで仲良く協力してくれると助かるしな。ところで大熊とクー達、ラミア達との強さってどれくらいなんだ?」


「タイラントマッドグリズリーは~私達の群れで何とかって所ですね~。ラミア達は~弱いのでわかりません~」


「そ、そうか…」


辛辣だな。だが野生なんてのは食うか食われるかだから当然か。


しかし、そうなるとよく生きてたな俺…本当に色々運がよかった。群れで倒す熊を俺一人で相手取ったからこそクー達に認められたのもあるだろうしな。


「ハーピーの群れはAランク中位、タイラントマッドグリズリーはAランク上位です。ラミアは群れでもCランク上位からBランク下位と言ったところでしょうか。本来は大人しい魔物のはずですがミドウ様の相手いはならないので大丈夫です」


リリさんも辛辣です…


「そうか。相変わらず博識だな。いつもありがとう」


「いえ、そんな」


「リリのおかげでラミアが大人しいって知れてよかったよ。クーもな。前に襲って来てる理由も聞いてるから、ちょっと挨拶でも行って来るよ。住処の場所って知ってるか?」


「知ってますよ~あの子に案内させますね~」


「ピェ!」


「よしよし、ハピ子さんや。また宜しく頼むぞ」


「ッピ!マたミドーと一緒!」


可愛いやつめ!


相変わらず背中からホールドを決めて定位置についたハピ子はクーがいて甘えられなかったぶんを取り戻すかのように我が物顔でマーキングをした。


こいつは、ほんっとうに…


「お前なぁ?」


「ッピ!ミドー!」


「あらぁ?ミドウさん、お客さんから来てくれたみたいです~」


「え?」

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