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俺、元魔王軍従業員。幼馴染み、元勇者  作者: くま太郎
第ニ章再び異世界へ
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彼女の理由

お待たせしました 活動報告にリクエストが多かったので

 翼と旅費。どちらも幸守が喉から手が出る程、欲しい物である。直ぐに承諾したい依頼であったが、ある疑問が幸守を躊躇させていた。


「王家の墓ですか。その様な大事な場所を守るのは、私達より適任な方がいると思うのですが」

 巨大な身体を持ち強力なブレスを吐けるドラゴンは、この世界において強者に属する種族である。まだ幼竜のコアタでさえ、猿人の騎士団に引けをとらない力を持つ。

 そして王家の墓はワーカミ国における聖地である。一般庶民でさえ立ち入りを禁じられている場所の防衛を異世界の猿人に頼むのが不自然なのだ。


「最近ワーカミに強力なアンデットが出没しているのよ。倒しても倒しても、蘇ってきてキリがないの。しかも対ドラゴン用にカスタマイズされていて、ブレスも効き辛いのよ」

 もちろん騎士団長クラスのドラゴンなら難なく倒せるが、強力なブレスは国土にもダメージを与えてしまう。

 何より無限に湧き出て来るアンデット相手に毎回騎士団長が対応していては、国民に不安を与えてしまうのだ。


「ドラゴンのブレスを防ぐ……ここ数ヶ月で謎の死を遂げたドラゴンや荒らされた墓はございますか?」

 幸守はタラプ時代、研究者として過ごしていた。もちろんドラゴンのブレスについても詳しい。


「ゆー君、それってまさか……」

 そして陽向も勇者時代にドラゴンと闘った事がある。


「ああ、ドラゴンのブレスを防ぐには、ドラゴンの鱗が有効だ。そしてそいつ等が狙うのは、王家の墓に眠るご遺体ですよね」

 王族のドラゴンは強力な力を持った者ばかりである。もし、ドラゴンゾンビとして蘇ったら、対抗出来る物は数える程しかいない。


「ああ、アンデット討伐に向かった戦士の遺体がアンデットとして蘇ったとの報告がある」

 ワーカミの民は親族を大切にし、王族を敬愛している。

 見知らぬドラゴンゾンビであっても、誰かの家族だと思って攻撃する事を躊躇うだろう。ましてや王族がドラゴンゾンビとなってしまえば、戦意が潰える危険性がある。


「分かりました。陽向とこげ丸と共に、王家の墓に向かいます」

 元勇者の陽向や金剛狼であるこげ丸がいれば、大抵のアンデットに対応出来る。なにより幸守は闇神エスクリダオンに仕える神官である。アンデットとは数え切れないほど戦ってきた。


「幸守、私も連れて行ってくれないか?雀を守れる位強くなりたいんだ」

 長姉だけあり千鶴は責任感が強い。そして何より弟と妹を大切にしている。


「兄貴、僕も連れて行って。千鶴姉を巻き込んだのは、僕なんだもん」

 雀は涙目になりながらも、じっと幸守の事を見つめていた。歯を食いしばりながら、必死に涙を我慢している。


「遅かれ早かれ、本当の戦いを見せなきゃいけないと思っていたんだ。条件は二つ。俺の張った結界から出ない事。それときつかったら目を瞑る事」

 千鶴や雀は殺し合いどころか喧嘩すら見た事がない。ましてや相手はアンデットだ。見た目だけでも、精神的にきつい。


「それでは皆様はヒナタさんと一緒に準備をして下さい……あっ、プラータは少し残ってね」

 レイアの提案に幸守は、胸をなで下ろした。何故ならどうしも彼女に聞きたい事があったのだ。

 陽向達が退室したのを見計らって、幸守が口を開く。


「その……レイア様、陽向……ジゼルは何か言っていませんでしたか?」

 幸守は、顔を真っ赤にしながら尋ねる。

 幸守はリュミエールを出てから、陽向の態度が素っ気なく感じており気が気でないのだ。


「なにかって?きちんと言わないと分からないわよ」

 一方のレイアは満面の笑みを浮かべていた。かつての仲間である堅物神官プラータが恋に悩んでいる。これが一刻も早く五英傑会議に掛けたい議題なのだ。


「そのリュミエールを出てから、陽向の態度が素っ気なくて……魔族の姿にドン引きしたのかなって……」

 幸守は胸の前で人差し指をくっつけながら呟く。その姿は今にも消え入りそうな位、覇気がない。


「……三百歳を越しているのに、乙女心に疎いわねー。魔族の姿にドン引きしていたら、あんなに真剣に怒らないわよ」

 レイアの言葉を聞いた途端、幸守の顔がパッと明るくなった。


「そ、それは本当ですか?でも、なんで陽向の態度が素っ気ないんだ……」

 再び落ち込む幸守。その情けない姿にレイアだけじゃなく、部屋にいたメイド達も溜め息を漏らす。


「あのね。ジゼルは貴方が契約してくれないから、怒っているの……陰謀や企みには強い癖して、本当に鈍いんだから。アンデットを倒したら、ジゼルに契約を申し込む事、分かった!」

 レイアの言葉に背中を押されながら、ようやく幸守は部屋を後にした。


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