第三陣:アランの独りよがりな推測。
独りになる、と言うのは、俺にとって別に怖いものでも何でも無かった。かえって一人のほうが落ち着く時だってある。考え事に集中したい時とか。
だが、俺の隣を歩く少女――イノ……だっけ――は独りが嫌いらしい。
何か話が矛盾してるよ。今まで独りで生きてきたんじゃなかったのかよ?
そう尋ねると、こう返ってきた。
「仕方ないじゃん! 頼れる人がいなかったんだから!!」
……え、良く分からないけどまぁいいや。ていうか、そしたら俺は頼れる人なのか!?
……コイツに頼られてもな……。
「さーて! どこに行くんだいっ! アラン!」
「そう馴れ馴れしく呼び捨てにすんなよ。ここに置いてくぞ?」
「……ごめんなさい」
……なんなんだろうな、本当に。俺も俺だ、こんな奴を何が起こるかすら分からない旅に同行させるなんて、どうかしてる。
……そう、どうかしてる。
「……まずはお前の身なりをそろえなきゃな。賊に襲われたりしたら大変だろうし」
そう言って、俺とイノは近くにあった服屋らしき建物に入る。
そして、入った途端、
「服選ぶからちょっと待ってて! 終わったら来るから!」
……当然、これは俺が払うことになるんだろうな。
イノが親に捨てられる前、どんな生活をしていたか分かるよ……。
けど、何でイノは捨てられたんだ? こんな住宅街なんかでは、子供を捨てる親なんて滅多にいない。それだけ治安がいいというのに、何でだ……。
多分、飽きた。か、育てられないほど苦しい状態になったか……。
後者の方はまず有り得ないだろう。この街では週一回、政府から各家庭内に30万アクム(日本の三十万円に換算)が送られてくる。
そのため、子供の教育費等には少なくとも10万アクムがかかると聞いた。しかし後の20万が残っているじゃないか。
この場合、親が30万アクムを自分達のために使いたいと言う欲望に負け、仕方なく(よくは分からないが)イノを捨てたんじゃないかと思う。
まぁ、あくまで推測だ。これを聞けば絶対イノも怒るだろう。しかしそう考えると、イノも可哀想に思えてくるな。
……いかんいかん、これはただの推理だ。アイツを心配するなんて、馬鹿げている。
それからしばらくして、マネキンの影からイノが顔を出す。
「おーわった♪ これに決めたよ!」
「ずいぶんと短かったな」
「まぁねー♪」
イノが服選びにかかった時間、なんと5分。コイツはそんな欲深な女じゃないのかもしれない。
俺はなんとなく苦笑しつつ、レジに向かった。
「いらっしゃいませー」
店員が静かに微笑み、イノの差し出した服を受け取った。
そして、静かに会計を済ます。
「またのご来店をお待ちしておりますー!」
俺らは外に出た。当然、イノはすでに新しい服――良く分からない、ほら、RPGとかで魔道士さんが良く着ている変な黒っぽい服――を着用して、用意万端だ。ちなみに、武器は拳のみと本人が言っている。
意外とアバウト。
「さて、と」
「これからどうするの?」
「……街を出る」
俺の言葉に、イノは素直に首を傾げた。……外の世界を知らないようだ。
「分かんなくてもまぁついて来い。旅の始まりだ」
「よぅっし! 張り切っていこーアラン!」
何でお前が言うんだか。しかも、また呼び捨てか……。
これからどうなるかなんて、そんなの誰にも分からない。
どうも。四重奏です。同じ日に投稿しているのにこう何回も後書きを書くのは色んな意味で可笑しい気がしてきました。まぁ、いいのさ。
さてはて、突然ですがこの小説は大体六十話程で完結させる予定です。まぁ、あくまで予定なので、長くなったり短くなるのは自明の理でしょう。
でもって、登場人物が妙に少なくなる予定です。いやもうこればかりはどうしようもない。まぁ、あくまで予定なので、多くなったり少なくなったりするのは自明のことわ(ry
御眼汚し失礼しました。