第二陣:少年と少女と。
「アンタ、名前は?」
俺は目の前に立つ少女に言う。
……まったく。コイツがこんな時に神社に来ていなかったら……。
そういや、そもそもこんな場所に何の用があって?
「人に名前を聞くときは自分からだよ」
俺の思考を中断させて、少女の声が脳内に響く。
よく通る声をしているな。女優にでもなれるんじゃないか?
……そんなぼやきはほっといて。
「……アラン。アラン・エンディフ」
俺は静かに言う。それを聞いて、少女も満面の笑みになる。
風が吹き、木々が揺れ、葉が落ちた。まだ、紅にもなりきっていない、夏の葉。
「私は……イノ。イノ・ユクラシャトって言うの!」
どうやらコイツは人に自己紹介するのが好きらしい。
良く言って目立ちたがり屋、悪く言って考えの浅い女。
……変な例えだな、済まない。
「さぁ! 自己紹介も終わったことだし、早速旅に出かけよう!」
イノは勝手に一人で盛り上がり、エイエイオーなんて言っている。当然だが、そんな気、まったくない。
「……誰がお前と旅に出るなんて言った。でたきゃ一人で出ればいいだろ」
しかし、イノは激しく抗議してきた。
「駄目ッ! まださっき助けてもらった事のお礼を返してないもの」
本当にしつこい奴だな。しかも、さっきから右手の感覚が無いと思ったら、コイツが掴んだままだったのかよ。
「しつこいな。礼なんていらないって何度も言っただろ。早く離してくれ。こんな所で時間食ってる場合じゃない」
実際には、嘘だ。別にいつ町から出ようと関係ない。だが、一刻も早くこいつから逃れらたい。
イノは、急に俯いてしまった。しかし、俺の手は握られたまま。
「……どうしたら一緒に連れてってくれる?」
「……。どうしてそこまで俺に付きまとう? 理由を聞かせろ。そうすりゃ気が変わるかもな」
その一言で、イノはピーンと起きた。それはもう、大気を振動させるような勢いで。
俺の身も危なかったぞ、今の。
「ぜひとも聞いて! 絶対聞いて!」
何をそんなに必死になっているのやら。仕方ない、聞いてやるか。
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イノのお話によると、昔からイノは両親に捨てられ、一人で生きていたらしい。それで、住処がここ、神社。
当然の事だが、金なんて無かった。働こうにも働き手が無いし、食事もすべて万引き。すごい盗賊じみた生活だ。
ある時――て言うか今だが――イノは旅に出たいと思っていた。だが、一人で旅に出るのは危険だし、まず金が無い。それで、諦めかけた所、突然あの魔物に襲われた。それで、運悪く俺が助けてしまったと。
……なんて意味の無いお話なんだ! 悲しいにも程がある!
「……何て言ったらいいか分からんが……しょうがねぇ。しばらくはついてきてもいい」
「えっほんと!?」
「ただ、気が向いたらそこら辺の町に置いて行く。いいな?」
「そのときが永遠に来ない事を誓ってあげるよ♪」
「……」
そんな訳で、俺アランは、馬鹿怪力少女、イノと旅をする羽目になりました。
これからどうなるか、果てしなく心配だ。
マウスが壊れそうです。
どうも。四重奏です。
書くことがありません。
……。
では、また次回。
……こんなんでいいのかw