時間を戻そう・・・。大切だから・・・。
心を無にして書いていました。
穢れのない2人の女の子の悲しい恋愛ものです。
「ずっとずっと大好きだよ?ずうーっと一緒にいたい。」
笑い合いながらそう嬉しそうにはしゃいでいたあの頃の夢を見た・・・。
カーテンの隙間から入る朝日の光が暖かいものだから
それすらも鬱陶しく感じてきて朝から気が滅入っていた。
朝の支度をしようとして何時もの様に手早く着替える。
黒のギンガムチェックのブラウスシャツに腕を差し込み、
慣れてはいるものの不器用に着替えながら考え事が頭から離れない。
ボタンを留める手が止まり・・・。
気が付いたら涙が込み上げてくるのを感じた・・・。
嫌な予感がしていた気がして・・・。
朝から頭痛がして頭が痛いんだ・・・。
昔、私には大好きな親友の女の子がいた。
お互いが本当に仲が良くて姉妹みたいで
血が繋がってるわけでもないというのに毎回
同じものを好み、同じタイミングで同じ言葉を話したりする。
なんだか「双子の姉妹」みたいな不思議な・・・
それでいてかけがいのない大切な大親友の女の子・・・。
大好きで大好きでいつも家で遊んでいた彼女の事を思い出していた。
それでもいつの間にか彼女には彼氏ができてしまい、
自分は置いて行かれた様な相手の男に盗られてしまった様な
複雑な嫉妬の様な感情が込み上げていてずっと無視していた・・・。
・・・避けていたのだ・・・彼女の事を・・・。
それから暫くして彼女から電話があった・・・。
「彼氏と別れた・・・。」
「・・・。ふーん・・・?そうなの・・・?」
「でも今度は違う彼氏が出来た。」
「・・・・・・。へえ?良かったね?」
「あんまり喜んでくれないの・・・?」
「・・・あ、いや、別に。そういう訳じゃないけど・・・。
ごめん、今時間がなくて・・・また・・・その話は今度・・・。」
「・・・わかった・・・。」
なんとなく後味の悪い電話を最後に彼女とは疎遠になる・・・。
「全く。あの子はいつもいつも・・・。何で私のことが大好きだよ大好きだよって
言っといてコロコロコロコロ男を作っては見せてくるんだか・・・。」
思い返していて腹立たしい思いが込み上げてくる・・・。
別に友達なんだから彼氏が出来たなら応援してあげればいいんだけども。
ただ・・・。問題は相手をコロコロ変えるところにもあった。
絶対幸せだと思えないから・・・余計に腹立たしかった・・・。
「くそ・・・。男め・・・。」
腹立たしい思いを何故だか相手の男にばかりぶつけてしまう。
醜い嫉妬の感情は今でも自分の中に根付いていたのだと
自己嫌悪に陥り吐き気がしそうな朝だった・・・。
仕事から帰り、疲れて帰宅・・・。
すると固定電話の方に留守電が入っている。
なんとなく嫌な予感がして・・・。
再生ボタンを震えた手で押してみた・・・。
「奈々(なな)ちゃ~ん・・・。たすけてよ~・・・。」
物凄く気になる「助けの言葉」を耳にした私は・・・。
居てもたってもいられずに慌ててその番号にかけ直した。
彼女・・・。
そう、昔の大親友の・・・大好きだったあの子・・・。
「雪ちゃん」からの・・・メッセージが残っていたのだ・・・。
電話口に出た彼女の言葉に絶句した・・・。
「薬飲んだ・・・。苦しい・・・。助けて・・・。」
「?!何飲んだ?!劇薬か?!睡眠薬でも大量に飲んだら
ヤバいんだぞ?!お前は馬鹿か!!!」
「・・・馬鹿でした・・・。苦しい・・・。助けて、奈々ちゃん・・・。」
「すぐ行く!!今どこ?!タクシー拾ってそっち行くから!!」
雪ちゃんの今現在住んでいるマンションに慌てて駆け込む。
「何やってんだ!あの馬鹿はっ!!!」
部屋の鍵は幸いかかっていなかった。
バターン!とドアを乱暴に開けて侵入するかの如く雪ちゃんの
部屋に急いで入った。
「どうしたーーーーーっ!!!」
その光景に絶句している私・・・。
彼女の部屋は散らかり放題で物は散乱していて・・・。
彼女・・・。雪ちゃんはベッドから転がり落ちそうになりながら
横たわっていた・・・。
死にそうな顔・・・。
「泣いていたの・・・???!!」
「・・・うん・・・。苦しい・・・。」
とりあえずつけっ放しのテレビのチャンネルを消して
慌てて119番に電話しようとする・・・。
「あっ!何飲んだ?!それ聞かないとっ!!」
「お薬・・・。10錠ほど・・・。一気に・・・。」
涙を流す死にそうな顔の彼女の顔を見て電話の受話器を置き、
思わず駆け寄る・・・。
「何があったの・・・?」
聞かずとも分かった気がした・・・。
彼女の手首には古くからなのかリスカ痕が生々しくあったからだ・・・。
「・・・誰だよ・・・こんなにボロボロにしやがって!!」
こっちも涙が浮かんで相手の男を殺してしまいたい程に憎悪した。
「奈々ちゃんに逢いたかった・・・。ずっと・・・。
もう・・・ボロボロなの・・・。ねえ?苦しいの・・・。
ねえ。奈々ちゃん・・・。お願い・・・。私を「抱いて」よ・・・。」
その言葉を聞いた瞬間に頭が真っ白になった気がした・・・。
ボロボロに傷ついた彼女はそれでも尚、「綺麗」で・・・。
思わず彼女の上に乗っかってしまう・・・。
そこではたと気が付く・・・。
「あれ?何やってるんだ私は・・・。こんな時に・・・。
・・・これじゃあ・・・私が「男」みたいじゃないか・・・。
そもそも・・・。女同士ってどうすればいいんだ・・・。
具体的に・・・。ええーと・・・。」
そんな馬鹿な事を考えていたらふと・・・。
真下にある彼女の泣き顔に目が止まった・・・。
「これは・・・違う・・・。こんなの・・・違う・・・。」
「・・・奈々ちゃん・・・?・・・。」
「私をそんじょそこらの男どもと一緒にするな。
だから・・・これは違う・・・。」
彼女から離れた私は迷わずに冷静に119番に連絡していた・・・。
電話を切った直後・・・。
「私は・・・雪ちゃんのことが大事だから・・・。
私は・・・あんたのことを傷つけたりしないよ・・・!!」
振り向きもせずに淡々と彼女にそう返答した・・・。
雪ちゃんは驚いた様子でもなく・・・。
「相変わらず・・・変わってないなぁ・・・。あはは・・・。」
「何笑ってんの・・・。こんな時に・・・もう・・・。」
救急車が到着して・・・。
彼女は近所の割と大きめの病院に搬送された・・・。
私はずっと付き添っている・・・。
幸い薬の量が少なかったので「胃洗浄」もせずに済み、
点滴を受けていた・・・。
雪ちゃんのては彼女の名前通り、「まるで雪の様に白く冷たかった」。
ずっと彼女の手を握っている・・・。
目を覚ました彼女は・・・。
「・・・ありがとう・・・。優しいね・・・。大好き・・・。」
ほんの少し微笑む雪ちゃんの手を強く握りしめた・・・。
「ごめんね・・・。私・・・。私だってずっと・・・。
好きだった・・・。忘れられなかった・・・。ごめん・・・。ごめん。」
私も顔を下に向けたまま涙を流していた。
止まらなかった。涙が・・・。
「遠回りしてごめんね・・・。ただいま・・・。」
「・・・おかえり・・・。」
病室で2人は静まり返った様な静寂の中で・・・。
ようやくお互いの存在の大切さを確認していた・・・。
失われた自分の半身を取り戻すかの様だった・・・。
そんな時間だった。
2人は暫く、あの頃の2人に戻れたような感じに鳴り、
また昔の様に・・・。
2人、同じタイミングで笑ってしまった・・・。
「あの時と一緒だね・・・。」
また言葉がハモる・・・。
私は笑ってこう告げる・・・。
「戻ろう・・・。あの頃みたいに・・・。」
辛い筈なのに不思議と今は物凄く「幸せそうに笑う」彼女・・・。
そんな雪ちゃんだから・・・。
ずっと大好きで・・・。
愛おしくさえも思えるんだ・・・。何時までも・・・。
「・・・大好きだよ・・・。」
敢えて何も語ることはありません・・・。
描いた内容が「全て」ですから・・・。
一応、百合ものですが「人間ドラマ」の様な・・・。
そんな悲しい恋愛ものです・・・。