江ノ電が走る街
鎌倉は、小さな電車「江ノ電」が走る街である。古と、トレンドが混ざり会うこの街の風景と不思議にマッチした、江ノ電とその路線沿線の魅力をちょっぴり紹介致します。それでは、いざ発車オーライ。
関東の古都として知られる鎌倉には、住民の足であり観光客にも人気の小さな電車、「江ノ電」が走っている。街に立つ平屋造りの民家の軒下のギリギリの隙間を縫うように、ガタンゴトンと音を響かせのんびりと進んで行く。その小さな電車の幼気にも思える姿が、緑溢れるこの街並に実に似合っているのである。
鎌倉駅を出発すると小さな商店街を抜けて最初の駅「和田塚」に到着する。歩いても10数分程の距離だが、路線の駅間は皆そんなものである。昔は更に今の3倍の数程の駅があった。隣同士の駅はお互い見えていた様であったそうである。
和田塚駅のホームの向かいには、人気の甘味処がある。民家をそのまま利用した店で、線路を跨いで渡らないと店には入れない。休日にもなれば、電車が行き過ぎた後は大勢の人が線路を跨いで渡っていく。ホームも、地元住民にとっては通路になっているようで、ぞろぞろと歩き抜けていく。駅の裏手にある住宅へは車道を廻るよりずっと近道なのだ。
由比ヶ浜駅を過ぎ、次の「長谷駅」では観光客がどっと降りる。駅周辺には大仏の他、紫陽花で有名な長谷寺や成就院などがひしめく。梅雨時にもなると紫陽花以上にカラフルな傘の花が路上を埋め尽くす。
長谷駅を過ぎるとまもなく「権五郎」への参道を横切る。江ノ電は神社の境内も走るのだ。そして、この参道の入り口に「力餅屋」がある。風情ある建物で売られる銘菓「力餅」。できれば草餅の季節に立ち寄りたい。
電車は極楽寺への切通に別れを告げ、トンネルに入って行く。トンネルを抜けると、まもなく「極楽寺駅」である。ここの駅舎や看板は、味わいがあり、数多くのドラマの舞台になったとあって記念写真を撮るひとが絶えないが、肝心の極楽寺へも立ち寄る事を忘れないで頂きたい。
次の「稲村ヶ崎駅」までの間、山間の田舎道と暫く平行して進む。海の近くとは思えない雰囲気が漂うが、駅を過ぎるとまもなく海が見えてくる。プリンスホテル下を抜け、海岸線へ出たと思うと、電車は再び海から離れて内陸へと向かい「七里ヶ浜」駅に到着する。
ここで電車を降り歩いて海辺へと出ると、気取った店が建ち並ぶ。ハリウッドセレブ御用達の朝食で知られる「bills」や、カレーの「珊瑚礁」へ行くのもよし、カジュアル気分で海べりの駐車場にあるファーストキッチンのテラスでバーガーを食べながらのんびりとサーファー達を眺めるのも良いが、上空のトンビには、充分に気を付けよう。
駅のホームから海を眺めるなら、次の「鎌倉高校前」駅が、抜群だ。ホームのベンチに座れば、目前のR134越しに相模湾が、よく見える。波間は眩しく煌めいて水平線まで見渡せる。目の前の車の渋滞も不思議と絵になる。走り過ぎる遠足のバスからは、子供達が、手を振ってくれる。
何本か電車を見送った後、再び先を目指す。次の「腰越」駅を過ぎると電車は路面へと出て、暫く車道上を進む。徐行する車とは1mと離れていない。祭礼の時などはこの道を所狭しと神輿や若衆が埋め尽くす。その中を掻き分けるように電車が進む姿はむ圧巻だ。
その通りに向き合う干物の店が見えたら、まもなくして路面と別れ「江ノ島」駅に到着する。この先、藤沢までは、地域住民の生活路線となるので、ここで下車し、江ノ島へと向かう参道を歩いてみよう。ノスタルジックな気分に浸るなら古い土産屋に入ってスマートボールや射的をやってみるのが良い。ゆっくりと流れるアナログな時間を味わえるだろう。島へと渡ったら、階段道の途中で焼きたてのタコ煎餅を買ってかじりながら山頂へと向かう。山頂に着いたら、サミエルコッキング苑へと入り、庭園内にある「ロンカフェ」のオープンデッキで、フレンチトーストを戴こう。吹き抜ける爽快な風を全身で感じながら、眼下に拡がるヨットハーバーを見下ろせば、日頃のせせこましく忙しい生活の事も暫し忘れさせてくれるだろう。
帰りは、夕方を選ぶ。鎌倉駅へと引き返す時間、夕焼けに染め上がる江ノ島と富士山に見送られれば最高の気分の1日に華を添えてくれる筈だ。
いかがでしたか?。ちょっとだけ鎌倉のミニ旅行の気分を味わって頂けたでしょうか?是非、読者も一度訪れて、自分成りの鎌倉、江ノ電の魅力を味わって頂けたら幸いです。




