クリスマス・ワイン
「殺傷度、を示しております」
「は?」
耳を、疑った。
「クリスマス・ディナーのワインを頼むのに、どうして殺傷度などが関係してくるのだ?」
改めて店員に聞いてみた。
「まったく、関係しません」
「ではもう一度聞く。このラベルの『弱弱』というのは、どういう意味だ?」
「殺傷度、を示しております」
かしこまって店員は繰り返す。
「もう。裕司さん、そんなこといいじゃない。せっかくのクリスマス気分が台無し」
「す、すまん」
嫁に呆れられた。どうやらクリスマスに殺傷度を気にする俺が悪いらしい。
「‥‥普段は『強強強』を飲んでるくせにね」
ぼそりと、嫁。
待て待て。普段それを飲ませているのはお前だろう。そして今これを注文したのもお前だ。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
他サイトに発表した旧作品です。
嫁の乙女心を楽しんでいただければ幸いです。