プロローグ
極々普通の中学校。特に変わったところはない普通の中学校。そこに在籍する1人の少年がいた。名は伊沢晃。静かな場所を好む読書家。平凡を好む。将来は小説家を目指している普通の中学二年生。勉強が少し得意だ。後は並みだ。ただただ、平凡。運動も遊びも何もかも普通。上手くもなく、下手でもない。そんな感じだ。
そんな彼がこんなことになるとは神様以外予想することは出来なかっただろう。
多分、数分前。
晃はのんびりと教室で小説を読んでいた。家に帰っても暇。それなら、部活で誰もいない教室で読んだ方が断然良い。静かで鳥の鳴き声しかしない教室は良い。部活の練習の声はしない。何故なら、彼らが使う体育会やグランドからこの教室は結構な距離離れているからだ。此処じゃなければ屋上でいつもは読むのだが、今日は教室で読みたい気分だったため、彼は教室で小説を読み続ける。
すると、数人の男女が教室に入ってきた。人数は4人。男2人、女2人のグループだ。彼らはクラスで人気のイケメンと美少女だ。1人は湯崎慎太郎。長身でイケメン。正義感の強い男。クラスの室長をやっている。2人目は野本和。長身でイケメン。全てのことを湯崎に任せている。だが、やるときはやる男だ。3人目は小西結菜。身長はそれほど高くない。運動神経に優れている。クラスの副室長をやっている。噂では湯崎のことが好きらしい。4人目は嶋京子。身長は小西と五十歩百歩の差しかない。クラスの男子が認める美少女で人気ナンバー1。割と大人しい。
このメンバーに会うと中々厄介だ。面倒なことが起こりそうな嫌な予感しかしない。それは的中してしまうのだが。
「伊沢、まだいたのか?小説ばっか読んでないで運動すれば良いだろ?」
「余計なお世話だ。俺は運動神経とかどうでも良い。」
「なら、良いんだが。」
「でも、伊沢は頭が良いでしょ。羨ましいわ。」
「分かったから。静かにしてくれ。本を集中して読みたいんだ。」
そんな会話をしていると急に教室が光出す。変な紋章が下に写ったと思うと晃たちは気絶した。
晃が目を開けるとそこは知らない場所だった。広い広間。床には先ほど写っていた紋章と同じものが書かれている。そこにいるのは教室にいた晃を含めた5人。4人はまだ目を覚まさない。すると、広間にあるドアが開かれる。開いたドアが出てきたのは1人の少女だった。
「勇者様、大丈夫でしょうか?」
「勇者?」
「1人はお目覚めで。はい、勇者です。私はアクト帝国第1王女 アリサ・クラストです。勇者様を召喚した者です。ですが、おかしい。なぜ、勇者が5人もいるのでしょうか?」
「ご挨拶どうも。俺は伊沢晃。で、勇者はホントは何人なんだ?」
「文献では4人とありました。ですが、ここにいるのは5人。どういうことでしょう?」
「もしかして、勇者召喚のことかよ。だが、これは誰か1人が勇者ではない感じだな。この中では俺だろうな…」
晃は溜め息を吐く。この状況で勇者じゃないのは間違いなく晃なのだ。どんなラノベを読んでも同じだ。大体、正義感の強い男が勇者でその友達やグループが勇者の仲間。これが良くあるのだ。多分、今回もその例と変わらない結果になるのだろう。
「ん?此処は何処だ?」
「何処よ此処?」
「なんだ?」
「何ですか?」
4人が目を覚ます。呆然と広間の中をあっちこっち見る。4人とも何が起きたか理解していないらしい。やっと見知らぬ少女が前にいるのに気づく。
「誰?」
「アクト帝国第1王女だってよ。俺たち、勇者召喚されたらしい。」
「「「「はい?」」」」
「勇者召喚ってあれだよな。地球から異世界の国に勇者を召喚して、勇者が魔王とか、大国から国を守ってくれって言われるやつだろ?」
「そうだが。冷静だな、湯崎わ。」
「それはこっちの台詞だぞ。伊沢こそ、冷静すぎだろ。」
「俺はお前たちより早く目を覚ましたからな。」
すると、アリサが言いにくそうに手を挙げて口を開ける。流石に忘れすぎていたらしい。凄く、話しにくそうだ。
「あのぉ~勇者様、良いでしょうか?父上がお待ちなのでお越しください。」
「分かりました。」
アリサが先頭になり続くように5人が歩く。中は中世のヨーロッパを思わせるような城の作りだった。置物は瓶や鎧などから高額そうに見える時計など金を使っていることが分かる程の量の品々が飾られていた。アリサの合図と共に全員が止まり、中から入れと言う声が聞こえたため中に入る。そこには10人程のおっさんたちと玉座に王様らしき人物が座っていた。
「勇者たちよ、よう参られた。我がこの国の王 ブルフ・クラストだ。まずは謝罪したい。このようなところに無理に来てもらったこと悪く思う。」
「いえ、我々はこのように呼ばれたのです。名誉でありがたいことです。それで僕たちが呼ばれた理由は何ですか?」
「今、この世界は様々な種族が存在する。人間、獣人、ドワーフ、魔族。この国は人間だけで作られた国だ。だが、ドワーフとは仲良くやっている。ドワーフも多く住んでいる。他にも、獣人の国や魔族の国が存在する。我らが頼みたいのはその2つの国から我らを守ってほしい。無理にとは言わない。」
「あのぉ~ドワーフに国はないんですか?」
「ドワーフは様々なところで生活をするため国がないのじゃ。ドワーフは武器を作るのに優れた種族だ。その為、色々なところに行って、素材を集めないと行けないから国がないのだ。」
晃はテンプレ乙と思った。まさか、ラノベで良くある話がこうも簡単に起きてしまうのだから運命とは不思議なものだ。ここまで来るとステータスとか、スキルがあるのは容易に予想が着く。また、種族の問題も何かありそうなのは眼に見えている。晃は答えを出す。当たり前だが、やるつもりはない。何故、知らない世界の国を守らないといけないのだ。早く帰りたいわ。
「分かりました。俺やります。3人もやるよな?」
「当たり前だ。/当たり前よ。/皆がやるなら。」
「あ、俺はやりません。王さま、無理にとは言わないと言いましたよね。これって、この世界から元の世界に帰れない感じですよね?」
「そうだな。すまない。勇者たちを元の世界に返すことは出来ない。本当にすまない。」
「それは良いんです。ですが、俺がもし、国は守らないけどこの世界を旅したいので必要な道具や金を用意してくれますかと聞いたら、貰えますか。」
「それは当たり前だ。勇者たちには迷惑を掛けているからな。その前にまずはステータスを見てほしい。ステータスと言えば、目の前に表示されるだろう。」
「「「「「ステータス」」」」」
伊沢晃 14 男
レベル1
筋力:300
体力:300
耐性:300
敏捷:250
魔力:500
魔耐:350
《魔法属性》無
《魔法》言語魔法
《スキル》仏眼、剣術(一刀流、二刀流)
《称号》巻き込まれた者、異世界人、言語使い、二刀流使い、平凡を愛する少年
湯崎慎太郎 14 男
レベル1
筋力:150
体力:150
耐性:100
敏捷:250
魔力:200
魔耐:200
《魔法属性》聖
《魔法》神聖魔法
《スキル》剣術、心眼
《称号》勇者、異世界人、正義感の強い男
野本和 省略
レベル1
筋力:100
体力:150
耐性:150
敏捷:250
魔力:200
魔耐:200
《魔法属性》聖
《魔法》神聖魔法
《スキル》剣術、心眼
《称号》勇者、異世界人、やるときはやる男
小西結菜 14 女
レベル1
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:200
魔力:200
魔耐:200
《魔法属性》聖
《魔法》神聖魔法
《スキル》心眼、疾走
《称号》勇者、異世界人、運動神経に優れた者
嶋京子 14 女
レベル1
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:300
魔耐:200
《魔法属性》聖
《魔法》神聖魔法
《スキル》心眼
《称号》勇者、異世界人、大人しい者
「全員、ステータスはどうだった?」
「「「「100以上だったです。」」」」
「俺も一応、越えていた。」
晃は思った。「チート過ぎじゃね。てか、やっぱり巻き込まれたのは俺だったか」と。だが、これは晃の運命であったため仕方がない。晃は何も言わずに王の行動を見る。
「勇者じゃないのは誰だ?」
「俺だ。」
「そうか。本当にすまない。勇者たちにはそれぞれ武器を与える。まずは4人には聖剣を与える。勇者の世界は殺しあいはない平和な世界だと文献に書いてあった。だから、1人1本だ。4本から選んでくれ。」
「俺には無いのか?」
「君にはこの2本の剣を与えよう。これはその昔封印された魔剣。殺した者の血を得て力を加える恐ろしい剣だ。名は氷菓と霧雪。これを昔、刀と呼んだ者が居たそうだ。」
「分かった。ありがたく貰う。これを背中に背負えるようにしてくれ。」
王は部下に命じる。明日には出来てると思うだそうだ。その話をした後、本題に入る。王の目は真剣だ。1人でも勇者と同等の存在を逃がすのは惜しいと考えているのだろう。それはそうだ。これから戦争をするかもしれないのだ。そのときのために人材は必要だからだ。分かりきっている。そんなことは。
「で、君は旅をしたいと言ったが旅は危険だぞ。こっちでもう少し教えてからでも良いではないか?」
「いや、俺は剣術を習っていたから大丈夫だ。それより、冒険者ギルドとかあるか?明日にはここを出たいから教えてほしい。」
「ああ、冒険者ギルドはある。分かった。明日までに準備が出来るように支度をしよう。それなら、解散だ。全員を部屋に連れていってやれ。」
話し合いが終わると全員がそれぞれの部屋に送ってもらった。これでひとまず今日はゆっくり出来る。良かったことはエナメルを持ってこれたことだ。この中にはたくさんの本が入ってる。暇になることがあったときのために必要になるだろう。それを考えると小説は必要だ。そんなことを考えているとドアからノックの音がする。
「どうぞ。」
「よう、伊沢。ホントに行くのか?異世界だぞ、小説とかみたいなことはないと思うんだよ。それなのに旅に出るのか?しかも、来た初日に。」
「ああ。この国は何かありそうだ。俺は面倒ごとに関わりたくない。それなら、のんびりと旅をして食いたいもん食う。そっちの方が良いだろ。」
「お前が決めたなら何も言わないが、死ぬなよ。お前の幼馴染みが悲しむからな。」
「もう、会えないだろうがな。彼奴らには…」
「それだけだ。悪かったな。こんな時間に。」
「いや、良い。気にするな。」
湯崎は部屋から出ていく。やっとこれで1人になれた。晃はステータスをもう一度見る。高すぎる。湯崎たちは100を越えていると言ったが大体、200、300ぐらいだろ。だが、これは正直酷い。ほとんどが300で魔力は500。どうかしているしか思えない。ステータスは良い。だが、魔法だ。言語魔法って、何だよ。晃は言語魔法を指でクリックする。すると、説明文が出てきた。
《言語魔法》
言語を使い発動する魔法。最初は一語解放。一語解放とは例えば、光と言えば光る。火言えば火が出るなどのこと。
まるでRPGだなと晃は思う。この世界はこんなものなのか?こっちの方が楽だろうが。
「やってみるか。火」
すると、手のひらに火が出てくる。魔法行使者に影響はないようだ。まるで熱くない。
それから晃は寝るまで魔法の練習をした。
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次の日
城の門の前に晃と湯崎たちの姿があった。
「死ぬなよ。」
「ああ。じゃあな。」
晃は歩き出したのだ。この世界を見るために。




