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[5]終

やっと終わりました。凄まじいものです。

非常に時間がかかった作品でしたが、最後まで書き終えられた点で自分、よくやった。


それと、我が恩人たるX氏、このプロジェクトはあなたあってのものです。

ありがとうございました。

そしてこれからも宜しくお願いします。


では、スカイブルー・エチュード。最後まで席をお立ちにならず、乗り物から手、足、頭を出さずにしっかりと手すりに掴まってお楽しみください。

エルモンドは既に後方に送られていた。前方でストリアがやられた、という話を伝達された瞬間は目の前が真っ暗になったが、再びあの蒼い閃光を見た時は驚愕と共に強い希望を感じた。


「ストリアさんは帰投したはずでは…!?」


「…エレイン君、だね。間違いなく」


主任が背後に立っていた。

ようやく着いたらしい。


「なぜ…」


「この前ね。エレイン君がストリアちゃんに教えてもらってるの見かけたんだよね」


「…だがそれをいとも簡単に…」


「うん…あの子はすごいよ」


「天才の子は天才…か」




最前線は快進撃を続けていた。

少年の猛攻はどんな兵士も防ぐことはかなわず、敵の前線が逃げ出すような有り様。

圧勝はもう目前にあるように見えた。


「貴様ラ…ナンデマダ生キテンダヨ…ザケンジャネェゾォァ!!」


一撃一撃が全て重撃だ。

地形が変更される。

絶え間なく人が消えていく。装甲車に乗り込んで逃げる兵士たち。武器を捨てて走り出す兵士たち。

白旗など、怒りの権化と化した少年にとってはただのオブジェクトでしかなかった。

よくわからないことを喚きながら敵兵の方へ走っていく。突如現れた狂人に退却する敵軍。

そして入れ替わりに前進する兵器の軍勢。


戦車砲射撃を受けてもなお進み続ける少年をさらに攻撃する爆撃機。


もはや敵は少年を人間とは見ていなかった。


「あれは人間ではなく兵器だ」


共和国軍上層はそう言って攻撃をさらに激化させた。彼らとしても退却する訳にはいかない。

これが最後の攻撃だ。


「大佐!最後の重力兵器が到着しました!」


「すぐに撃て!奴を始末しろ!」


「了解!」


上層も冷静さを失っていた。

とにかくあの化け物を始末することに執心していた。その兵器の威力などどうでもよかった。オーバーキルでも構わない。

奴が消えさえすればいい。


重力兵器が飛翔する。

少年は全身から力が抜けた様子で腕を垂らした。

虚ろな目でその光を追う。

手を上げ、掌を天に向ける。


兵士たちが固唾を飲んでそれを見守る。


着弾の瞬間、先ほどとは違う凄まじい衝撃波が戦場に吹き渡った。粉塵が視界を阻害し、爆音が聴覚を奪う。


「勝った」


共和国軍はそう思っていた。

突撃の命令を下そうとした。

次の瞬間、雄叫びと共に粉塵が消滅した。少年がそこに立っていた。


あの兵器の一撃に耐えたのだ。


「何…だと…!?」


上層は呆然としていた。

目の前の光景を信じられなかった。


もう勝ち目はない。そう判断するに値する現象だった。


「…全軍に告ぐ…現時刻を以て侵攻を中止、勝算は皆無と判断した。よって司令塔命令により退却を命ずる…繰り返す…」


軍勢が引いていく。


角笛が鳴り響く。


銃声はもう鳴っていない。


もはや風の音しか聞こえない。


赤茶けた大地に少年が立ち尽くす。最後にその目が閉じられた時、力なく地に伏した。






「エーレイーンくーん」


いつものように主任がエレインの後ろから駆け寄る。

そしてまた、二人は話し込みながら師院の中を歩んでいく。


フォレジアはあの後、正式に無条件降伏した。


ユクシオンはフォレジア属国同盟から称賛された。奪われた領域は返還され、フォレジアはその領域の一部を無条件に割譲した。この地方においてフォレジアが持っていた独裁的なまでの影響力は完全に消滅した。


あと変わったことと言えば、

エルモンドが亡くなった、ということだ。


あの時足に撃ち込まれた銃弾に何らかの生物兵器が塗り込まれていたようで、そこから侵入したウイルスによる発作で終戦翌日に亡くなった。


「そうか…これでまた、私もあの場所に帰れる…」


それが、終戦直後の彼の最期の言葉だった。


もう一つ言うと、ユリアとラスコーは正式に市民権を与えられた。

この二人は既に恋仲にあるという話もあり、二人もそれを認めた。




エレインはその力を認められ、王立魔術師院主任補佐官に任ぜられた。エルモンドの座を継ぐ形となる。

また、あの最後の戦いでエレインが見せた姿、そしてその絶大な魔力は研究員たちの関心を集め、彼は研究対象として数多くの実験に参加した。


全体的に言えば、着実にこの地方は平和に向かっている。


戦争が終わって1週間後の夜。


「エレインくん」


二人はいつものように師院の屋上にいた。


南風が吹く。

黒猫が笑ったような顔を洗う。

満月が半分雲に隠れている。


「はい?」


「あのさ、いきなりって感じなんだけど…」


主任がエレインに擦り寄る。


「考えてたんだ、これから先どうすればいいのかって」


「はい…」


「それでね。やっぱり、私がやりたいことをやろーって思った」


「やりたいこと…?」


「うん…それでね、最初にやることはもう決まってるんだ」


主任の目が輝く。


「エレインくん、前から気づいてたかも知れないけどね」




「私と付き合ってくれないかな」




恥ずかしげに顔を伏せたが、視線はエレインの方に向いていた。エレインも少し動揺したが、主任と手を重ねて微笑んだ。


「はい、勿論です」



==========


『終』


煉瓦の部屋に朝日が差し込む。

毛布の中の少年が起き上がる。

傍らで少女が笑う。


少年は師の写真を見る。

少女もそれを見つめる。

黒猫が小さく鳴く。


時計が午後2時を指す。

二人はマントを羽織る。

空に雲はない。


扉が開かれる。

魔術師たちが頭を下げる。

歴史はまた、動いていく。




-The END-



[ベルネス王国がユクシオン公国の全領土を割譲した理由]


・脅威をなすりつけるため


ベルネス王国側が国土内に希少鉱物が埋蔵された地域を発見。フォレジア共和国がこれを狙って属国になることを迫る可能性があるとしてこの部分を誰かになすりつけようとした(第一次領土切り離し)。しかし周辺国家もフォレジアの侵攻を恐れて受領せず、最終的な手段として王国内にいた魔術師団の団長ユクシオン2世を唆して建国させ、領土を切り離すことに成功した。現在その事実を知る者は王国外にはいない。しかもベルネス王国は貿易においてその鉱物を法外に安値で輸入していた。

しかし、エルモンドはある事がきっかけでその事を知ってしまい、調査を開始していた。その動きを察知した王国が共和国に工作員を派遣し、最後の戦いの戦場でエルモンドを狙撃した。

エルモンドの口封じは成功したことになり、フォレジアが弱体化した今、もうユクシオンが独立している理由はない。


―――――――


さて、いかがでしたでしょうか。設定には少し凝りました。

次回はどんなものになるか、まだX氏とは話し合っておりませんが、きっと次の作品も力の入った作品になると思います。


では、最後まで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。


ではまたいつか、


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