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こんばんわ。

夜ですよね?夜ですよね?

23:48に見たあなた、この文書いてる時間と同じ時間に見てますからねー?

ぴったり23:48にこれを見た方、ご連絡下さい。


今回で3つ目でして。

こちらはちょっと本編を外れた、言わば外伝みたいな扱いでいいです。


主任ちゃんファンの皆様、あなたたちの時代がやってきましたよ。


あと警告、


リ ア 充 を 過 剰 に 嫌 う

あ な た 、

絶 対 に 読 み 飛 ば し て

く だ さ い 。


では、お気をつけて。




『参』




主任が手に負えないほどの自由人だということは知っていた。

ただ、このような話が来ることは予想外だった。


「エーレイーンくーん」


廊下で背後からその光輝くようなオーラを纏った影が急速接近してきたのは、現在から数時間前のことだった。


「な…なんでしょう…?」


「いやー実はさぁーこれからエルモンド君と城下降りる予定だったんだけどねぇーエルモンド君別の用入っちゃったのよー」


そのあとに続く言葉の予想はできていた。文脈、状況、そしてこの擦り寄ってくるような仕草から導き出せる最高確率の可能性。それは…


「一人で行くのも何だからーキミに一緒に来てほしいなぁーとか思ったり」


やはりそう来たか…




というわけで、いまエレインは久々に城下町に降りてきている。レンガ造りの美しい町並みを見ていたが、それよりとにかくこの先のことが非常に、非常に心配だった。主任を待つ。


「お待たせーっ」


主任は完全私服で目の前に現れた。普通の25才が着るような服装ではなかったが、「主任だから」という理由で許されてしまうような感じだった。不覚にも少し心を奪われた。


「はぁー…服どれにしようか迷っちゃってさぁー」


「いや…通常の服装で良かったのでは…?」


「それじゃ面白くないじゃーん」


「…」


「せっかくのデートなんだしー」


…ん?


「ちょっ…主任…今、何と…?」


「え?」


当然のように、その台詞を繰り返した。

頭脳が思考に占領される。

何だ?この方は何を考えているんだ?なぜこの状況をデートと表現したんだ?ただの比喩か?とすれば何の比喩だ?むしろ何も考えていないのか…


「どうしたの?固まっちゃって」


「い、いや、ちょっ…主任、あの、えっと、色々、頭の中が収拾のつかないことになってるん、ですけど…」


「よくわかんないけど…あっ!」


何かに気づいたようだ。

今度は何を…?


「もしかしてエレイン君、」


何が放たれる…!?



「ロングの方が好き?」



…?


「♪」


…!?


「そっかぁー!私ずっとショートだもんねぇー、じゃあ久しぶりにロングにしちゃおっかな♪」


主任が想陣を展開、局地的に時間を進めて髪型をロングにしていく様を、エレインはただ呆然と見ていることしかできなかった。


「どのくらいの長さがいい?」


「…腰くらいで…」


「わかったぁー♪」


腰の辺りまで伸びた長い髪を揺らしながらはしゃぐ主任の姿は、何だかもう年下にしか見えなくなった。明らかに、精神的には25才ではない。


「ロングなんて久しぶりーいつ頃やったっけ…」


「主任…とりあえず、どこへ行くおつもりで…?」


「あ!そうだったそうだったー、じゃあ行こっか!」


主任はエレインの側に駆け寄ると、エレインより少し低い位置から顔を見上げてきた。本音を言えば、この時初めて主任が意外と小さいことに気づいた。

エレインのほうもまあ、14才にしては背は高いほうだったが。


「さっきも言ったけど、今日はキミと二人っきりのデートなんだからぁ、主任じゃなくて[フィガロ]として接してねっ」


「では…何と呼べば?」


「[フィーちゃん]とかかなぁ、あと敬語も厳禁ねっ」


主任…いや、「フィーちゃん」の絶対的な権力を行使したその言葉に、エレインは抵抗もできないままに従うしかなかった。


「わ…わかった…」


凄まじい抵抗感に打ち勝ち、その名を読み上げる。


「…フィーちゃん」


フィガロがエレインの右手を握り、一瞬ニコッとした。


「さ、行こっ!レイくん♪」


いつの間にか、「レイくん」と呼ばれることが確定していたらしい。


エルモンドさん、あなたの苦労が少しわかった気がします…

本当にご苦労様です。


そんな言葉を声に出せるわけがなかったので、心の中でエルモンドに向けて言い放った。




「ねぇねぇ、これどうかなぁ?」


白いワンピースを身体に重ねてエレインに見せる。いつも通りの輝く笑顔ではしゃぐ彼女について行くことについては、案外と厳しすぎることはなかった。

こういう状況はエレインとしても初めてだったが、少しだけ「リア充」共の感覚を理解できる気がした。ほんの少し、周囲から優越した感覚。

結局のところ、フィガロの目的はただ普通の「デート」だった模様で、特に重要な用があって来たわけではなさそうだった。


「すっっごいかわいいと思うんだけど」


「うん…似合ってる」


こんな感じで言葉だけに底知れない抵抗感を感じつつ街中を歩き回っているのである。

もう数時間も。

彼女の体力はもはや無限と言っても過言ではない。どれだけ歩いてもテンションは不変で、その輝く笑顔を振り撒いている。

街の住人からの人望も厚いらしく、多くの人々が声をかけてきた。その度に笑って受け答えるその姿は、「これこそ君主の本来あるべき姿なのではないか」と思ってしまうほどだった。


日が暮れてきた頃。


背後から呼び止められた。


「おう、久しいなぁエレイン」


振り向いた瞬間、そこに誰がいるのかはっきりと判別できなかった。脳内を電気信号が駆け巡り、そこに誰がいるのかをやっと理解した。


「やるじゃないか…エレイン?」


ストリアが、ニヤニヤしながら仁王立ちしていた。


「やっ、やるじゃないかって?」


「今の状況を見る限り、お前も随分いい人に手をつけたなぁ、と思ってね」


「…!?」


祖母が何を言わんとしているのか、はっきりと理解した。


「いやっ!?これはその、違…」


「まあまあそう照れなさんな…お祖母ちゃん嬉しいぞー?」


ストリアはフィガロを見てウィンクしたが、エレインには気づかれていない。


絶対に事情は理解している。

事情を理解した上で、孫を遊んでいる。


「フィガロ…いま何をしてる?」


「え?普通にー、レイくんとデートしてるだけだよぉー?」


「ふむ…やはりそうかそうか…」


「いやっ!?だから違うって…」


「今日1日すっごく楽しかったよぉー♪」


「愛称まで決めちゃってね…しかも腕まで組んじゃって」


エレインは気づいていなかった、というか気づく暇もなかったが、驚くべき早業でフィガロはエレインと腕を組んでいた。完全に密着して「カップルです」アピールをしている。


「いやっ、ちょっ、主任っ!?」


「いいじゃないかいいじゃないか…お似合いだぞー(笑)」


「いや、だから違…」


こんな具合でやり取りが小一時間ほど続いたのだった。最終的にエレインが真相を知るのは、また後日になる。


完全に夜になった。


師院まで戻って来る際、馬車でいいか、という話になった。エレインとしても史上最悪の疲労による強襲を受けていたので、もう歩くことなど考えられなかった。

駅で周回馬車を待つ。


「今日はありがとねー」


「い…いや…大丈夫…」


「疲れきってるねぇー…早く帰って休もーか」


「う…うん…」


彼女もかなり眠いようで、もう眠気眼になって欠伸している。


「ねぇ…エレイン君」


「はい…?」


とろんとした甘い目で微笑み、エレインの黒々とした目を見つめた。


「また…いつかこうやって二人っきりで…デートしてくれる?」


少しため息をついて、微笑み返す。


「勿論ですよ、主任」


主任を肩に寄りかからせて、寝顔を見ながら師院へ戻った。

幸せに満ちた、安らかな寝顔だった。




ストリアはエルモンドに会っていた。


「よくやった。これで城塞は守られたわけだ…気づけなくてすまなかった」


「いえ、いいんですよ…最終的には伝達を遅延させたのは私ですから」


「それはそうと、お前の代わりにエレインが駆り出されてたな」


「エレインが…?はて、私に何か公務があったでしょうか?」


「え?今日フィガロがエレインを連れて歩いていたから茶化してやったんだが…お前が来られなくなったからエレインを呼んだと聞いたぞ?」


「いやいや、主任は私が今日出撃することをご存知だったはず…元より外出の予定はなかったのですが…」


二人は、その場で固まった。



嫉妬してない?大丈夫?


エレインは何も悪くないよ?


主任ちゃんがどんどん可愛くなっていきますが…不覚にもキュンとした君、これを機に主任ちゃんファンになろう。(提案)


こういう外伝がいくつか入るかもしれませんが、まあ大目に見てください。


では、次からは少し真面目に戻るので…また後程。



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