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始まる前の日常

「不肖この玄海哲也、人の皮を被った怪物であると自覚しております。ですのでどうか姿形がまだ子供であるからと遠慮なさらず、死力を尽くして抗い下さい」


その存在は何ら躊躇いも無くそう言い放つと威嚇する事も構える事も無く悪魔の前に立ちはだかった。

馬鹿か阿呆か…とりあえず頭の構造は普通ではないだろう事は悪魔も一瞬にて看破した。


そして悟った。この一見どこにでもいそうな少年は己より強いと。


悪魔とて元は普通の人。万人と等しく何ら変わらぬ赤子から悪魔になるまでに色々な経験をしている。

泣き叫ぶ女性を力づくで犯した事もあれば抵抗する男を力の限り殴り続けた事もあるしそれらの死体で遊んだ事もある。


だから分かってしまう…経験した事が無くとも予想が出来てしまう。

自分はこの存在に歯もたたずに殺されるだろう事を。


170センチ半ばの体格はその大きさに見合わぬ腕力と瞬発力を持っているだろう…纏った漆黒のコートの中にはさながらパンドラの箱が如くあらゆる厄災が詰まっているだろう。


「流石は現代のジャックザリッパーと呼ばれるだけはあります。素晴らしい洞察力と観察力、推理力です。初見にてここまで見抜かれるとは思っていませんでした」


輝かぬ瞳のまま嬉々として哲也はコートを脱ぎ、両の手に力を込め上半身のみを前へと傾ける。

構えと呼ぶには酷く原始的で交戦的、だが型なきこの型は場所によりその姿を最適解に変えるであろう無形の型。即ち暴力の在るべき真の姿。


一縷の光も射さぬ闇の中にて悪魔は生まれて初めて神に祈りを捧げた。叶わぬ願いと知りながら、聞き入れられぬ声と承知しながら。


次の瞬間には豪腕が風を置き去りに悪魔の脳を頭蓋ごと地面へとぶちまける。間髪入れずに首が捻れ狂いながら千切られ、付いた結末に満足出来ぬと腸に右の膝が突き刺さる。

絶命の原因となった両腕もさることながら、突き刺さした威力も凄まじく、己が倍近いであろう悪魔の身体を重力が捉まえるまで無残に宙にへと浮かせる程だ。


悪魔の身体が地面へと戻る頃には哲也の両腕に込められた力は抜け、闇は在るべき静寂を取り戻していた。


とは言えこれで終わりではない。次の仕事が入っているのだから悠長にはしていられない

次は日本、生まれ育った法治国家での仕事が待っている。


17年の短い生涯の15年は日本で過ごしたと言うのに毛程も懐かしさを覚えないのは己らしい…哲也は物言わぬ骸を一瞥すると踵を返しコートを拾いその場を後にした。

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