7月11日金曜日
「「かっわいい~」」
声をそろえて言わないでください先輩方。
「今鏡もってくるねぇ~」
いや、いいですいいですからアー
「制服女子の持ってたんだ~おねえさんでもいるの?」
いいえ。会長に頂きましたとは言えず
「あ、はい。姉から借りました。」
メイクをしてくれる先輩の手つきはかなり手馴れている。ちょっと安心。
「メイクポーチも貸してもらったの?おねえさんやさしいねぇ」
いいえ。姉の部屋を勝手にあさりましたとは言えず
「ええ、もう使わないと言っていたので」
先輩達に引かれないように注意を十分にはらいながら(もう、引かれてるかもしれないが)俺は初めてスカートというものを穿いた。何か、アレだ風のないところに行きたい
美術室の端の方の机で難しい顔をしながらスケッチをする明智先輩に向かって
「明智せんぱーいどうですか?」
ちょっとかわいく言ってみた。
とりあえず考案者に見てもらうのが一番だろう。
「か、かわいいよ............。」
黒縁メガネを鼻にかけ直しながら俺を覗き込んでくる明智先輩。
なんで、顔がそんなに赤いんですか!そんなにかわいいですか!!
「ねえねえ、そろそろウイッグつけよっか?」
妙な雰囲気に気づいたのかなんなのか、女の先輩がナイスなタイミングで話しかけてくれる。
でも、俺に女装させるのはナイスではない。
「あ!はい。」
スカートを翻してその場から立ち去る。後ろはなんとなく見たくない。
「はい!できました!」
「「かっわいい~」」
「髪をさ、くるくる指に巻いてみてくれない?」
とりあえず先輩なので逆らわずくるくるしてみる。
「うん!どっから見ても女の子だね!!」
「...................あ、はい.........。」
「ねえねえこーゆー髪飾りどうだと思うー?」
「えー髪飾りはない方が可愛くなーい?」
「でもさ~この髪飾りならポニーテールの方がいいと思うー」
「いやいや、ツインテールでしょう?」
「え!ツインテールって言う?ツーテールじゃないの?」
「あたし、ツーテール派だわ」
「マジで!!ツインでしょー」
女という生物は話がどんどんずれていく生き物なんだろうか。
と、いうか俺の女装は部長にまったく似ていないのに、これで部長の身代わりなんてできるのだろうか?こんなもんで本当にいいのだろうか。スゴイ謎だ。
先輩たちは何か策でもあるのだろうか?
部長も部長でどこかに行く用事があるとかで、今日部活に来てないしなぁ
明智先輩も決闘状もう出してきてさ、決闘月曜だからーがんばれよとか、真っ赤な顔して言わないでほしい。
俺が女装しているなんてバレたら.....................最悪だ。
まず、クラスに友達という存在がいなくなり、そのうちいじめっ子という進化を遂げ、俺は女装したキモい奴マジこっち寄ってくんなオカマ野郎!!と罵られるいじめられっ子に変貌を遂げるだろう。
神様がいるのなら、今月の有り金3978円お賽銭箱に入れるのでこんな俺を助けてください。