7月11日金曜日
「最悪だ~!!」
まばゆい朝日に向かって叫んでみる。すっきりするもんだな。
昨日のことを思い出すと多少頭が痛い。
俺は確かに運動はできるが、この部活に運動ができる奴はほかにもいる。
昨日あの後なぜ、俺を選んだんですかと明智先輩に聞いても「秘密だ。」を連呼。
どうして俺が選ばれたと思います?と部長に聞いても「わかんないや。」で済まされた。
女装させられる覚悟で、今日はいろいろと姉の部屋をあさり、とりあえず使えそうなものを持ってきたせいで肩も精神も重い。持ってこなきゃよかったな。
「おはよっ!!」
いつの間にか学校まで来ている。無意識に道を歩いていたと思うと怖い。
「うん......。」
口も重い気がする。
「えー?生徒会長向かってねーそれはないよぉ、おはようございますって言ってよぉ」
「いいじゃんか....今日は疲れるからさ................え?」
「かいちょうううううううううう!!」
まさか、会長が俺に話しかけてくるなんて思わなかった、なんで話しかけられてんだ!?
「ちょっとさぁ来てくれるかな?」
ニッコリ笑っている会長だが、目は「来ないとどうなると思っている?」と、静かに語っている気がする
返事は一つしかない。生徒会長に逆らう馬鹿はこの学校にはいない。
「いいともぉ!!」
日曜にしか見ない番組名を必死に叫びながら俺は会長に連行されていった。
ガラっ
一般生徒には固く閉じられたドアをいとも簡単に会長は思いっきり開ける。
「「会長おはようございます」」
役員は待っていたかのように会長に向かって挨拶をした。
「おはよう。矢口ぃ~白石ぃ~」
天井を見ると歴代の会長の写真がずらっと並んでこちらを見ている。
無機質な会議をするための机とパイプ椅子がきっちり並び大人な香りがプンプンしてくる。
「どうぞこちらへ座ってくださいな。九条さん。」
優しい口調で優等生定番の三つ編みヘアの白石先輩は立てかけてあったパイプ椅子を開く。
「今日は話があるんだよねぇちょっと聞いてくれる?ああ、大丈夫。先生に許可してもらったから授業をさぼったことにはならないからね。」
笑い顔でないときに、会長のこの口調はかなり怖い
「君さ、すでにコピーの世界行っちゃったよね。」
やっぱりまだ行ってはだめだったパターンだったのか
「それさ、ルール違反なんだけどねえ。まあ、ルール聞く前に行っちゃったから、仕方ないんだけどさ」
話ってお説教かよ........。
「でもぉよくリスクがある中行って帰ってこれたから、これあげる」
会長がくれたのはこの学校の女子制服だった.................え............。
困った顔で会長を見つめると、会長はニヤニヤしながら
「だってするんでしょ、女装。」
ボンっとこれが少女漫画だったらこんな効果音が出ても不思議じゃないくらい恥ずかしい。
「くふふふっ監視カメラでちゃーんとみていたのさ!だってリアルにこの世界をコピーしたいじゃん。だからさ、一時間ごとにこの学校だけはスキャンしているんだよね。で、聞いちゃった♪」
「そしてしかも、こんなものまで持ってきていますよ。会長!」
矢口先輩はかなりひきつった顔で、俺のカバンをごそごそ.................。
今朝、姉の部屋をあさって持ち出してきた、グロス、チーク、鏡、ウイッグ、ビューラーなどなど、もう女装する気満々だったのねと思わせる代物ばかり出てくる。
「というわけで、コレもらってくれるよね♪」
にんまり笑っているが、目は「こんなに禁止物なものもってきてるんだから、面白いことしろよ」と言っている気がする。
こうして、俺は奇怪な目で見られながら生徒会室を後にした。