7月9日水曜日
知らなければよかった........。
足が震えてきた、どうしよう俺このまま現実に戻れなかったら...まだやりたいこといっぱいあるのに...もう、嫌だこんな世界.................。
嘆くことしかできなくなった時、声が聞こえた。知らない声でも、どこか懐かしい声が。
あのう?))
なぜ落ち込んでいるのですか?もう殺しにいったのですか?それとも殺されかけたのですか?))
けがはありませんか?おなかはすいていませんか?))
「誰だっ!!」
俺は精一杯の声で叫んだ。震える足で、この体を支えながら。嘆くことしかできないこの口で
ふぇ?私サイケデリック564219バージョン通称「殺人鬼」です。))
どうかされましたか?))
サイケデリック564219ってこのヘッドホンか!安心した。もう俺は大丈夫な気がした。それにしても、通称殺人鬼って...やっぱ....そうゆう感じですか......。と、言いますか、この殺人鬼さんってアンドロイドですかねぇ?
あの、見えないんですか?))
あぅ実体化するの忘れてしまいました。申し訳ございません。では実体化します。))
ブーンピピピッピッピッピッピ――――――――――――――――。
耳がピリピリする。あえていうなら頭が、痛くなりそうな、そんな機械音が当たりに響き渡った。
機械音が消えた後、俺は目の前が光に包まれた。優しくて全てを包み込んでくれるような、そんな優しい光が。
しばらくすると自然に光が消えた。光は最後まで俺に、優しく包み込んでくれたそんな気がした。
「はあ、えーと初めまして殺人鬼です。」
目の前に現れたのは、血で真っ赤に染まった服を着て、鋭いナイフを持った、息のあらい目が虚ろな精神異常者の正反対のような少女だった。
銀色に染まった、これでもかと思うくらい長い髪をふんわりなびかせて、神の国にいたのかと思わせる真っ白な肌、真実だけを見るような淡い桃色の瞳、まだ幼さの残るあどけない顔、白いローブのようなもので身を包んでいる小さな体。
何処が殺人鬼なんだ。可愛らしいただの少女じゃないか。
「あの、どうかいたしましたか?ご主人様」
「なにそれ?」
ご主人様?いったい俺は夢でも見ているのだろうか。
「私はあなた様の奴隷ですので、ご主人様と呼ばせてください。」
「奴隷?」
「ハイ。私はあなた様がこの世界で戦いをする時、死ぬまで、つまりこの世界から永遠追放されるまで貴方様に仕えさせていただく奴隷です。なので、何かありましたらすぐに私に言ってください。」
奴隷と、言うよりかはメイドさんのような少女。せめて名前だけでも、可愛らしくしてやりたい。
「じゃあ、早速だけど」
「なんでしょうかご主人様。」
「名前を変更してもいいか?」
「それはだめですご主人様。旦那様のプログラミングを変えることはできません。申し訳ありません。」
ご主人様より旦那様の方が上かぁ
「旦那様って誰なんだ?」
「木下裕也様です。」
キノシタユウヤ....生徒会長か.....。
しばらく、考えをまとめていると鬼人鬼が、何かを思い出したように、ガタガタ震えだした。
「どうかしたか?」
「申し訳ありませんっ!!旦那様の言うことは絶対なんですっ!何でもします!!だから.......ダカラ.....ワタシヲ....私を...私を壊さないで...く..だ......さ.い...。」
聞く耳を持てないくらい殺人鬼は生徒会長を怖がり始めた。
そんな殺人鬼を愛おしいと感じたのか俺は彼女のことを、ギュッと抱きしめてしまった。
嫌がるそぶりをしない彼女のことが、余計に心配になってしまった。
小さな体で、いったいどれほどの大きなことを抱えていたのだろうか。
助けてやりたい。この世界ではなく俺の生きた世界に連れていきたい。そこで一緒に笑いたいそれしか考えられなくなってでも、かなわないことは、すぐに分かってもう一度抱きしめた。