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狐と葡萄

作者: 古河晴香

狐1と狐2は

何度ジャンプをしても、

葡萄に届かなかった。


狐1は「この葡萄は酸っぱかったに違いない」

と言って立ち去った。


狐2は、

「きっと甘かったに違いないのに、

届かなかったなんてショックだ…!

自分はなんてだめな狐なんだ…!」


と落ち込み、トラウマになった。



狐1は自分の巣穴で更に考えた。


「きっとあの葡萄は、

本当に酸っぱかったに違いない。

神様が自分のことを思って、

わざと届かないようにしてくれたんだ。

届かなくて良かったんだ」


と、届かない結果を、

届いた結果よりも良しとする、

更なるポジティブ思考により、

よく眠ることができた。



狐2は

自分のジャンプ力が足りなかったことが、

悔しく、悲しく、

全然眠れなかった。


おいしそうな葡萄の姿が、

目の前から離れなかった。


そこで狐2は決意した。

「ジャンプ力を1年かけて鍛えて、

来年、葡萄がなる時期には、

どんな葡萄にも届くような

ジャンプ力になろう! 」


トレーニングに励んだ結果、

翌年は、 葡萄だけでなく、

他のおいしい果物もどんどん、

ジャンプで取れるようになっていた。


そこで、狐2はあの葡萄に感謝した。


「あの葡萄があったからこそ、

自分は、自分のジャンプ力の無さに気づけたんだ。

もしあそこで失敗していなかったら、

ジャンプ力を磨こうなんて思ってもいなかったし、

その結果、

今年こんなにおいしい果物を

取れるようにはなっていなかった。

だから、あのとき失敗して良かった。

ありがとう」


狐2は狐1に会った。

ジャンプ力を磨いたおかげで、

今年は葡萄を取れるようになったことを話すと、


狐1は、去年葡萄を取れなかったことを

すっかり忘れていた。


そして、

「別に葡萄が取れなくても、

他においしいものはあるし、

自分は毎日幸せだよ。

自分の能力以上のことを高望みしなくても、

今手元にある幸せで満足しているよ」

とのこと。


狐2は少しがっかりし、

眠れなかった辛い日や、

大変なトレーニングを思い出した。


狐1の、今の現状を幸せだと思い、

葡萄が取れなくても、

逆にその方が良かったと思うポジティブ思考。

穏やかで、強い喜びもなければ、落ち込みもない。


狐2の、高い葡萄を目指して、

落ち込み、自己嫌悪し、努力し、

現状に満足せず、

常に幸せを追い求める思考。


強い落ち込みがあるが、

それをバネにして、

強い喜びを手に入れる、

感情の起伏の激しい思考方法。


狐1は幸せだった。

狐2も幸せだった。


ただ、お互いに何だか

相容れなさも感じた。


しかし、これが林檎の場合となると、

俄然はりきるのは狐1の場合だって、

あるのである。


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