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ガビとサリ

作者: 谷 風汰
掲載日:2026/07/19

 ガビは四つ足で立っていた。

 尻尾を天に向け、相手を睨む。

 体表には静電気がほとばしり、火花のような音が弾ける。


 サリは巨大な翼を羽ばたかせた。

 熱気が風となって吹き荒れた。

 ガビの肌に刺すような痛みが走った。


 火山を背にした二匹は、しばらく佇んでいた。

 一ミリたりとも動かなかった。

 

 静電気が音をたてる。


 ガビが走った。

 尻尾が銀色に染まる。

 太陽を受けてきらりと輝く。

 岩肌の地面を疾走し、加速する。

 尻尾の硬度が増していく。


 サリは動かない。

 ゆっくりと翼を動かし、ガビを見下ろしている。

 

 しかし、ガビは感じていた。

 肌を刺す熱気。

 大量に吹き出してくる汗。

 火の中に飛び込んだかのようだった。

 気温が上昇している。


 それでも走った。

 落雷の如く駆け抜けた。

 尻尾はもはや、ダイヤモンドの硬さを帯びていた。

 

 ガビは尻尾を構える。


 サリが地面を叩いた。

 咆哮を発した。

 震動が大地を駆け巡る。

 炎の球が、空間を埋め尽くした。

 空を覆った。

 

 ガビの皮膚が溶け始めた。

 汗のように滴り始めた。

 体中が真っ赤に染まり、皮下組織が見え隠れしていた。

 全身に激痛が走った。


 炎球が降り注いだ。

 全てが真下に落下した。

 

 ガビは、敵から目を離すことなく、右に飛んだ。

 炎球が地面に直撃し、じゅう、という音が鳴った。

 蒸気が舞った。

 丸い窪みを作った。

 立て続けに左に飛ぶ。

 地面が溶ける。


 身体感覚は、刀身のように研ぎ澄まされていた。 

 それを信じ、右に左に蛇行した。

 炎球は止まない。

 

 サリの目前に迫る。


 ガビは跳んだ。

 尻尾を後ろに跳ね上げ、大きく振りかぶる。

 サリの横っ面を叩いた。

 鈍い音が鳴り、尻尾が顔にめりこんだ。

 抜けた歯が、弾丸のように吹き飛んだ。

 

 ガビは、そのまま尻尾を振り抜こうとした。

 しかし、動かなかった。

 サリの目が、ガビを睨んでいた。


 口内に火種が見えた。

 瞬間、炎が口から溢れ出す。

 熱波が押し寄せ、ガビの体から蒸気が噴き出す。

 体内が煮えくり返っている。


 尻尾は押し流された。

 縦に開いた口と、肥大していく炎が、ガビの視界を埋めた。

 恐怖が体を駆け巡る。

 体が硬直する。

 ダイヤモンドのように、硬く。

 

 火炎放射が放たれた。


 鼻先が溶け、顔面の半分が削ぎ取られ、体の半分が蒸発し、全身が消滅した。

 空中に灰が舞った。

 地面にふわりと落ちた。

 かすかに、静電気を帯びていた。

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