ガビとサリ
ガビは四つ足で立っていた。
尻尾を天に向け、相手を睨む。
体表には静電気がほとばしり、火花のような音が弾ける。
サリは巨大な翼を羽ばたかせた。
熱気が風となって吹き荒れた。
ガビの肌に刺すような痛みが走った。
火山を背にした二匹は、しばらく佇んでいた。
一ミリたりとも動かなかった。
静電気が音をたてる。
ガビが走った。
尻尾が銀色に染まる。
太陽を受けてきらりと輝く。
岩肌の地面を疾走し、加速する。
尻尾の硬度が増していく。
サリは動かない。
ゆっくりと翼を動かし、ガビを見下ろしている。
しかし、ガビは感じていた。
肌を刺す熱気。
大量に吹き出してくる汗。
火の中に飛び込んだかのようだった。
気温が上昇している。
それでも走った。
落雷の如く駆け抜けた。
尻尾はもはや、ダイヤモンドの硬さを帯びていた。
ガビは尻尾を構える。
サリが地面を叩いた。
咆哮を発した。
震動が大地を駆け巡る。
炎の球が、空間を埋め尽くした。
空を覆った。
ガビの皮膚が溶け始めた。
汗のように滴り始めた。
体中が真っ赤に染まり、皮下組織が見え隠れしていた。
全身に激痛が走った。
炎球が降り注いだ。
全てが真下に落下した。
ガビは、敵から目を離すことなく、右に飛んだ。
炎球が地面に直撃し、じゅう、という音が鳴った。
蒸気が舞った。
丸い窪みを作った。
立て続けに左に飛ぶ。
地面が溶ける。
身体感覚は、刀身のように研ぎ澄まされていた。
それを信じ、右に左に蛇行した。
炎球は止まない。
サリの目前に迫る。
ガビは跳んだ。
尻尾を後ろに跳ね上げ、大きく振りかぶる。
サリの横っ面を叩いた。
鈍い音が鳴り、尻尾が顔にめりこんだ。
抜けた歯が、弾丸のように吹き飛んだ。
ガビは、そのまま尻尾を振り抜こうとした。
しかし、動かなかった。
サリの目が、ガビを睨んでいた。
口内に火種が見えた。
瞬間、炎が口から溢れ出す。
熱波が押し寄せ、ガビの体から蒸気が噴き出す。
体内が煮えくり返っている。
尻尾は押し流された。
縦に開いた口と、肥大していく炎が、ガビの視界を埋めた。
恐怖が体を駆け巡る。
体が硬直する。
ダイヤモンドのように、硬く。
火炎放射が放たれた。
鼻先が溶け、顔面の半分が削ぎ取られ、体の半分が蒸発し、全身が消滅した。
空中に灰が舞った。
地面にふわりと落ちた。
かすかに、静電気を帯びていた。




