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サヨナラをもう一度〜夏のフェアリーの物語〜  作者: マナマナ


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フェアリーではいられない

「あれからどこで過ごしていたとか聞いてもいい?」


 アリアは聞かれることが分かっていたみたいに話し出す。

 

 夏は・・・少しずつ変わってゆく。


「・・・遠い昔のことだから。でも一つだけ覚えているのは、あんまり楽しい人生じゃなかったってことかな。知っているでしょ・・・私の目がどうなったか」


 聞いた話は私の脳裏に焼き付いているし忘れることなんてできない。


「私は元いた場所。東京に戻った。この町に来たのは病気の療養が目的だった。私ね。物心ついた時からお医者さまには二十歳までは厳しいかもなんて言われたこともあった。だから来たばかりの頃はずっと家にいたわ。でもね不思議なこともあるのね、この町の空気は私にとても合っていたみたい。だんだん胸の苦しみがなくなってきたの。走ることなんてできなかったのに少しならできるようになった。だから学校も少しならって。けど東京と違って私の容姿はあまり受け入れられなかった。ショックだった。少なくとも今まではなかったことだった。それに・・・こんなことに巻き込まれるなんて・・・でも田中君には感謝しかない。私を笑顔にしてくれた。それだけで幸せだった」


 アリアは思い出すように笑顔になっている。あの日だって本当は同じ笑顔で過したかったはず。


「・・・東京は苛めとかなかったの?」

「そんなことは一度だってなかった。だって私は自分のことちゃんと分かっているつもり。むしろ珍しがられたりはしたけどね」


 ・・・・そっか。その想いだけで世界に留まっているのかな?


「病気は治ったの?」

「東京の空気はここより悪いからまた具合が悪くなった。けどもうパパもママもどこにも行くつもりはなかった。私は大きな病院で治らない目と治る見込みのない病気の治療の日々を過ごしていた。やっぱり見えないのはいろいろ不都合があった。手紙も書けないしね。電話だって番号知らないから出来なかった」


 遠くを見つめている。青い瞳で一体何を見ているのだろう。そんなことを思いながら彼女の横顔を見ていた。視線を交わすことなくアリアは話の続きを始める。


「ある夜。花火の音が聞こえたの。すごく大きくて雷みたいな音。すぐ近くだって分かったわ。ワクワクとドキドキで心臓が楽しんでいる。どんな花火が上がっているのだろうってずっと暗闇で響く音で想像した。赤色や青色、黄色や緑。とにかくあらゆる色を思い浮かべたわ。私でも想像の世界ならいくらでも見えるモノがある。でもそれは現実じゃないの。確かめたかった。だから少しでも近づくために窓まで行ったの。ビリビリ揺れている窓を開けると音が空気に乗って体中で響くの。とても心地良かった。花火ってこんな楽しみ方もあるんだなって。だからかな、すぐ目の前にあるような気がして手を伸ばした。けど・・・・それから花火のことを覚えていない」


 その時の光景を思い出すように静かに瞼を閉じている。きっと今、彼女の目の中にはたくさんの夜空を照らしている花火があるんだろう。私にも何となく分かる。でも最後の言葉の意味が気になってしまう。

「・・・覚えていないって?」

「・・・ここまで言えば分かると思ったけど」

 アリアは悲しいような口惜しいような、そんな曖昧な笑顔を浮かべている。


「多分手を伸ばした瞬間。窓から落ちたみたい。馬鹿みたいでしょ。自分がそんなことになっていることが分からないなんて。全身に広がる衝撃は花火なのか、それとも地面に叩きつけられたからなのか。目が見えないって方向感覚が分からなくなるの。でもね不思議と痛いとか苦しいって感じないの。ただ真っ暗な中に浮かんでいるって言えば分かってもらえるかな。手の感覚も足の存在も感じない。そんな時に私が聞いたのはあの子の声だった」


 あの子って?・・・もしかしてラピスのこと?


「見えないから声しか分からない。でも誰なのか鈴音には分かっている」


 私は『多分』とだけ答える。アリアの前には私の知らない本当の姿をしたラピスの姿があったはず。


「彼女は突然こんなこと言ったわ。『あなたの想いが本物なら願いを叶えてあげる』普通はそんなこと信じられない。けど私には信じることが出来た。だから言ったわ。願いは二つ。一つは目が見えるようになること。もう一つは田中君に会いたいってこと。私の願いに彼女は同意してくれた。そして二つ条件を出した。一つは今までの記憶をなくして夏の季節だけフェアリーとして生きることができること。そしてもう一つは記憶は自分で取り戻すこと。これって私の想いが本物かどうかを試す試験みたいなものだって」

「そんなのよく分からない。記憶がないなら思い出すことなんて出来ない」

「その通りよ。でもね、彼女は言ったわ。私の想いが本物ならきっかけがあれば思い出せるって」

「きっかけ?」

「記憶を失くしたまま何年も過ごした。夏は私にとっての存在理由の季節になった。夏のフェアリーとして生きていた。そして。鈴音が現れて変わっていった」

「・・・私が?」

「だってあなたは彼女と出会った。私をフェアリーに変えた彼女に。鈴音の目の前に現れた彼女は私とそっくりだった。だから気になってしばらく見ていたの。私は人間には見えない存在だから夢であなたに近づくしかなかった」


 でも今はこうして現実の世界で会えている。もちろんあの洋館でも。


「じゃあ今は?夢じゃなくてもこうして会えている」

「それは・・・私がフェアリーではなくなっているということ。今なら田中君に会うことができる。でも今はちょっと恥ずかしいな。どんな顔して会えばいいんだろうってずっと考えてるんだ。きっとすごく驚くと思う。そしてすごく喜んでくれる。そうなったら嬉しいって思うの」

 アリアは頬を赤く染めている。恋バナってこんな感じなのかな。それにこんなに誰かを想うことできるんだ。私はまだ恋を知らない。でもアリアの心臓の温もりは感じることができる。


「あなたの持っている切符。田中君のもある。渡すように頼まれているの」

 私はポケットから預かった切符を出して見せる。アリアは受け取ると両手で並べて見比べている。

 思った通り。模様はまったく同じだった。ということはこの切符も片道切符なのだろう。


 銀河鉄道にも切符はあった。でもジョバンニとカムパネルラはそれぞれ違う切符だった。ということは私に渡される切符は二人とは違うのだろうか?


「もうすぐ会えるってことでいいのかな。二つ目の願いがいよいよ叶う時が来たってことでいいのかな?」

 とても嬉しそうな表情で話すアリアは理解しているのかな?片道切符だってこと。私は伝えた方がいいのだろうか。そんなことで迷っていると


「ねえ。鈴音は奇蹟って信じる?私は信じる。いろいろあったけどみんな幸せになってゆく気がする。そう信じていればね。私、そろそろ行くね。また会えるといいな」

「ちょ、ちょっと・・・って消えちゃった。どうしてラピスやアリアは自分の話したいこと話したらいなくなっちゃうのかな」


 もう少し話していたかった。なのにこっちの都合は何も聞いてくれない。

 また一人ぼっち。でも今はその方が良さそう。けれどなかなか一人になれない。みんなが私に話したいことがあるみたい・・・・・・ちょっと考え過ぎかな?

「葵さんだ・・・もしもし、ホントですか・・・よかった。今ですか?えっと近くの海にいます」

 電話が終わって私は病院に引き返えす。


 相変わらす蝉の声は聞こえない。私に聞こえるのは潮騒の音だけだった。


前回のアップの日。申し訳ありませんでした。

読んでいただきありがとうございます。

当日。かなりバタバタしていた。←言い訳

ちゃんと確認せずにこっちを先にアップして。

気がついて慌ててアップやり直し。

物語はみごとに削除されて、せっかく書いたのが水の泡。←自業自得

こんなことでへこたれるもんか。書きました。

前より読みやすくなっている。←自己満足

次回もまた見に来て下さい。よろしくお願いします。

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