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サヨナラをもう一度〜夏のフェアリーの物語〜  作者: マナマナ


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34/37

切符

「最後のチャンスかも。彼はもうそんなに長くない」

 

「それって田中のおじいさんのこと?」

 ビックリして思わずラピスの顔を見てしまった。

「見ちゃ駄目って言ったのに」

「ご、ごめん、つい」


 なんで?なんでラピスは泣いているの?


「もう。しょうがないなあ。こんな顔見られたくなかったのに」

 今度は私の肩に頭を乗せる。夏の匂いが少し濃くなったみたい。私はくちびるを少し噛む。


「知ってる?あの時も今日みたいな青い色の空だった。彼女の想いは私を長い眠りから目覚めさせたの。遠い昔、遠い国からやって来てずっと眠っていた。それでね。彼女の血はこれ以上ないくらい悲しくて澄んでいたの。だから私は彼女の願いに協力したくなった。彼女の目が青いのは私が目を貸してあげてたからなの」

 その意味が分からない。目を貸すことなんてできるのだろうか?

 でもラピスならできるような気がしてくる。

 今は疑問に思うことがあってもすぐに現実として受け入れることができるみたい。これも満天の星のせいなのかな?


「鈴音は今も求めている?」

 急にそんなことを言われても思い当たることは・・・・・・ある。

「今日はまだだもんね。でもね。今はちょっとこれからのこと知りたい、かな」

「いいよ。それが鈴音の願いなら。この先に行くにはもうちょっと時間が必要なの。それまではこのまま留まって待たないとならない。まだ準備が必要。でも安心してきっと私達はあの汽車に乗ることができるから。この特別な夏は本当に特別なの」

 だから、今は・・ね。

 ラピスは目を閉じて、私はそれを受け入れて。甘い。いつもより甘い。私も静かに目を閉じた。


 フッと体が軽くなる。目を開けると私は一人ぼっちで防波堤に座っていた。余韻を感じながらもう一度蠍の心臓を眺める。それから心臓を狙っている矢を探してみる。けれど星が多過ぎて私には見つけることができなかった。 

 

 翌日。

 今日もまだ特別な夏の中にいるはず。ラピスはどこにいるのだろう。そんなことを考えながら朝ご飯を食べに部屋を出る。


「あ、鈴音、起きたの」

 お母さんがなんだか朝から騒がしい。なんか大変なことが起こったことは一瞬で理解できるし、それは一刻も早く知る必要があると焦る気持ちを押さえ込みながら

「一体何があったの?」

「田中のおじいちゃんが・・」


 え?

 何でここで田中のじいさんが出てくるの?心臓がトクンと大きな音を立てる。

 嫌な予感しかしない。というか昨日の今日だ。何が起こったんだろう?ラピスの言葉が頭を過る。

 そんなこと考えちゃ駄目なのに・・・駄目なのに、考えずにはいられない。私はお母さんの言葉を待つ。

 お願いだから不幸なことは言って欲しくない。でも早く聞かないとならない。じっと見つめる私の気持ちが伝わったのだろうか、唾を飲み込んで


「・・・今朝ね・・釣りをしていて・・う、海に落ちたって」

「え?・・・・海に?」

「なんでも急に立ち上がって何かを取ろうとして流されたみたいなの」

 お母さんが喋る度に私の心臓は鼓動を速めてゆく。それで、それで・・・・その先は考えたくない。葵さんいないのに・・・

「今は病院に運ばれたって・・・どうしよう・・・それでね、お母さん・・・・」

 居ても立ってもいられなくなってお母さんの言葉を最後まで聞かずに私はすぐに支度するとスマホを持って家を飛び出した。

 起き抜けの身体に全力疾走はかなり堪える。あっと言う間に呼吸が乱れる。けど止まるわけにはいかない。

 走りながら葵さんに電話を掛ける。でも繋がらない。

 お願い、気が付いて。何回コールしただろう。目の前にはもう病院の姿も見えてきている。諦めてすぐにおじいさんの元に向かった。


 救急搬送された病院では懸命な処置がされていた。処置室の前には助けた釣り仲間達がみんな暗い顔をして座っていた。

 私は駆け寄っておじいさん冷たくなった手を握る。なんで?なんで急に?私はどうしても伝えないとならないことがあるのに。だからお願い、目を開けて!

 

 私は肩に触れる手を感じる。


「・・・ラピス」


 言葉と同時に涙が出てくる。ラピスは予言していた。けど、あまりにも急過ぎる。

 でもでもでもでも・・・・・・・でも知りたくなかった・・・・・。

 微かに手に力を感じる。私はすぐにおじいさんに声を掛ける。最初は反応がなかったけどラピスも一緒に手を添えると微かで小さな声が聞こえる。


「・・・・・・ア・・・リア」


 目を閉じたまま夢の中の言葉のように言ってから少しだけ瞼が開いた。意識が戻ってきたんだ。

 私が声を掛けると

「・・・・鈴音・・ちゃん?」

「うん。私。鈴音。分かる?」

「・・・ああ・・・・・・」

 ぼんやりとだが会話はできる・・・・・よかった。


 他にも話したいことあったけれど意識が戻ったことで治療が再開されることになって私とラピスは病室から出さされてしまった。

 意識を取り戻したということで釣り仲間達は帰ってしまい私とラピスが残っていた。

 

 ラピスにはいろいろ聞きたいことがある。


「なんで知っているの?」

「知りたいの?」

「だって・・・誰か聞いたの?」

「言ったよね。彼はもうそんなに長くないって」

「だからってまさかお迎えに来たってことじゃないよね」

 ラピスは顔を横に振って

「彼は見つけてくれたんだ」

「見つけた?何を?」

「私の帽子。気が付いてたと思っていたけど」

 言われて初めて帽子がないことに気が付いた。そういえば私も最近被っていなかった。


「あの時。風で海に飛ばされてしまったの」

「それってアリアさんの帽子のことだよね」

「そう。あの子が飛ばした帽子は私が見つけたの。でも昨日の雷でまた飛ばされちゃった」

「・・じゃ・・じゃああの帽子は・・・・」

「彼は覚えていたんだと思う。だから自然に体が動いたのかもね」

 私の見た限りアリアの帽子はどこにもない。


「風って意地悪だよね。せっかく手にできたのに海に落ちた時。また持っていっちゃった。せっかく彼女に返せると思ったのにな」

「だからずっと被っていたの?」

 ラピスは頷いて答えた。じゃあそのワンピースは?

「似合うでしょ。私の姿は目の色以外全部あの子と同じなの」

「・・・同じ?じゃあラピスの本当の姿は別にあるってこと?」

「さっきから質問しっぱなしだよね。それはね、内緒」

 くちびるに指を当てる。口惜しいけど可愛いな。ってそんなこと思っている場合じゃない。

「だったらおじいさんに会う理由は?」

「切符」

「キップ?」

「そう。片道になっちゃうけど銀河鉄道に乗るなら必要でしょ」

 どこにあったのか。手にしているのは葉書くらいの大きさでちょっと厚めの紙には不思議な模様が描かれている。渦巻きのような模様。私には何を表現しているのか分からない。

 たくさんの渦巻き。大きいのや、小さいのが絡み合うように模様を作っている。色は赤と言うよりはちょっと錆びたような赤色だった。


「これラピスが作ったの?」

「うん。よくできているでしょ。汽車に乗るための乗車場は分かるよね」

 急に言われてもなかなか出てこない。そこは私の知っている場所なのだろうか。

「鈴音にもあげる。でもそれは出発の日。今日はね。これを渡すために来たの。後は任せるね。ちゃんと渡して欲しい」

 私にキップを渡すとラピスは振り向いて歩いて行ってしまう。

 え?帰っちゃうの?自分で渡せばいいのになんで?ちょっと待ってよ。何か忘れてないかな?


 ラピスは立ち止まって振り返る。


「言ったでしょ。夏は終わらないとならないの。楽しみはもう少し先かな」

 ラピスは笑顔のままおじいさんのいる部屋の扉を見て

「ねえ、喉乾いちゃった」

 言われて私も喉がカラカラになっていることに気が付いた。


 案内板を見てみると屋上に自動販売機があることが分かった。ここからなら屋上の方が近い。

「屋上・・・行く?」

 ラピスは声じゃなくて頷いて答える。それから差し出される手。

 私は受け取るようにその手に触れる。冷たい・・・けどその奥の方からは微かな温もりも感じる。

 不思議と気持ちが落ち着いてゆく。


 でも。この手はいつか、ずっと離れてしまう。そんな気がしてならなかった。

都内は乾燥していてあかぎれが耐えない毎日です。

読んでいただきありがとうございます。

昨日髪を切りました。ほんとはがっつり切りたい私です。

でもいきなり短くすると体調を崩すのが難点です。

『そんなことあるか』ってよく言われます。

他にも同じような体質の方、募集中。←意味不明

悩み?は似た者同士にしか分からない。

長くなりましたが今のところ体調は万全です。

この調子で次回もよろしくお願いします。

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