表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サヨナラをもう一度〜夏のフェアリーの物語〜  作者: マナマナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/36

ドライブインで朝食を

 車は海岸通りに面しているドライブインに入った。

 駐車場には大型トラックがほとんど占めていて、その中で真っ赤な車はずいぶん目立っていた。

 店内に入ると席のほとんどを占めているのはいうまでもなくトラックの運転手さんだ。みんなご飯を楽しむというよりはただひたすらエネルギーの補充とでもいうような感じで口の中に目の前にあるモノを機械的に運んでゆく。

 混み合った中、席を探しているとちょうどカウンターに二つだけ空いているのを見つけて座ることができた。すぐに店員さんがやって来てお茶を目の前に置いてくれた。お客さんもお店の人も実に手際が良い。

「何にする?」

「何があるんですか?」

「そっか。当然初めてだよね。こういうお店って。私はサーファー仲間とたまに来てたんだ。この喧噪がいいんだよね。かえって落ち着くんだ」


 葵さんはいつも元気で活気があって、そして現実を生きている。私は彼女のおかげで現実と繋がれていると思う。

 お店は食べ物の湯気やタバコの煙が立ち込めている。ホントならタバコの臭いなんて我慢できないけど、葵さんが言ったように今はこの喧噪が妙に落ち着く。

「なんか活気があっていいですね。生きてるって感じるし自分も現実にいるってことを実感できます」

 私の言葉に葵さんは目を覗き込んで確認する。

「ほんとだ。少しずつだけど目がしっかりしてきたみたい。さっきまではどこを見ているか分からないくらい遠かったから。じゃあオススメ。ここの卵焼きは絶品だよ」

「卵焼き。いいですね。食べてみたいです」

 葵さんは頷いてから店員さんを呼んで卵焼き定食を二つ頼んだ。

「私は納豆も付けるけど、どうする?」

「はい。お願いします」


 5分程で料理が運ばれてくる。朝にしてはなかなかのボリュームがある。ご飯はどんぶりに盛られているし味噌汁も具沢山だ。その中で横たわっている卵焼きの圧倒的な存在感。厚みがあって焼きたてを主張している湯気の意思。正直全部食べられるか自信がない。でも・・・あぁ・・・惹かれてしまう。

「さ、熱いうちに食べよう。いただきます」

 私も葵さんと同じようにいただきますと手を合わせてから箸を取った。

 先ずは味噌汁から。これって日本食を食べるときの作法みたいなもの。箸先を濡らすことでご飯がくっつかないようにする。昔の人はいろんなこと考えてたよね。でも先人の知恵や知識って意味を知れば『なるほど』と思うことが多い。人の歴史は新しいものを生み出しては新たな歴史として残ってゆくんだ。


 ・・・・・・温かい

 具材には大きな豆腐にワカメに玉ねぎが入っている。

 この一口で私の食欲は目が醒めたようにイッキにギアを上げてゆくきっかけになった。気持ちがどんどん持ち上げられゆく。

 いよいよオススメの卵焼きに取りかかる。箸でちょっと触れただけなのに出汁をたっぷりと含んでいるのが伝わってくる。一口大に切って口の中に放り込む。見た目通りプルっとした食感が心地いい。熱々ご飯は炊きたて・・・あ〜しあわせ・・・

 私は夢中になって食べ進めてゆく。そして・・・

「あ〜美味しかった」

「でしょ。これぞご飯っていうものだよね。うんうんよろしい。残さずに食べたね」

「はい。私って結構食いしん坊かもしれません。こんなに美味しい朝ご飯久し振りに食べた気がします」

「なら連れて来た甲斐があったってもんだ」

 葵さんはお茶のおかわりしてその場で勘定を済ませた。

「あ、いくらですか?」

 財布を出そうとポシェットに手を掛けた。

「そんなこと気にしなくていい」

「そんな・・・あの、私、葵さんにごちそうになってばかりですよ」

「そうだね。そうかもね。でもご飯を奢るくらいのことを鈴音はちゃんと返してくれている」

「?・・・えっと・・・ぜんぜん身に覚えがないんですけど」

 葵さんは正面を見ている。そこには厨房がある。けれど葵さんはもっとずっと遠くの何かを見ていた。

「もしこの夏、鈴音と出会っていなかったら私は妖精のことをただの言い伝えとして研究していたところだった。私には見えないけど鈴音がその存在を証明してくれたような気がするんだ」

 葵さんは自分自身に笑っているように見える。私はちょっとだけ複雑な気持ちになる。

「あの、私だって現実とは思えないんです」

「そうだとしても鈴音の近くにはフェアリーがいることは間違いない。いろいろ調べるためにこれからすぐにでも東京に戻ることにした」

「え?これから?」

「と言っても一回帰っておじいに説明しに帰るけど」

 葵さんはやる気に満ちた背伸びをする。隣りにいる私にも肩の辺りからパキパキと解れる音が聞こえた。


 店を出て駐車場から目の前にある海を見ると急に現実的になるというか、自分が今ここでちゃんと生きていることを肌で感じることができる。

 今日が昨日なんて思えない。そんなこと起こるはずもない。

 車に乗り込むと葵さんは窓を全開にしていつものように力強くアクセルを踏んでエンジンをフカすと待ってましたと言わんばかりの軽快な音が辺りに響く。振動だって肌にビリビリくる。

 葵さんはハンドルをしっかり握ってからギアに手を掛けて走り出す。お決まりの法定速度ギリギリで海岸線を抜けてゆく。窓からはたくさんの空気が入り込む。こんなに爽快な気分になったのはとても久し振りだった。


 家の前で降ろしてもらって自分の部屋に向かう。

 ベッドに横になってお守りを見ていると今朝起こったことが鮮明に蘇ってくる。時計を見るとまだお昼までには時間がある。


 ・・・夏のフェアリー


 まさかあんなことが起こるなんて。一体彼女に何があったというのだろう。会話のやり取りが今も耳の中に残っている。彼女の言葉一つ一つを簡単になぞることができる。

 

 私は何を思い出させてしまったの?


 真っ暗な瞳の奥はどんな光さえも吸い込まれてしまいそうだった。

 あれは・・・そう、最後にカムパネルラが下車した場所・・・ほんとうのさいわい・・・

 それがあんな真っ暗だとしたら・・・あ〜・・・ますます分かんなくなる。

 その先を私は知りたい。それは葵さんの話の続きに関係しているかもしれない。


「・・・・あの様子じゃ、もう行っちゃったかな・・」

 スマホを手にして葵さんの番号を見つめる。でも指はそれ以上は動かさない。戻るというからにはきっと何かアテがあるからなんだ。なら帰りを待った方が・・・でも七月はあと少しで終わってしまう。


「あ・・・そうだ」


 急に閃いた。葵さんから聞くんじゃなくて田中のじいさんから直接聞けばいいんだ。どうして今まで思いつかなかった?これが一番確実だ。なんたって当時者だから。そうと決まれば行動あるのみ。

 このことを知るのは今しかないような気がする。

 もし八月になったら・・・特別な夏じゃなくなるかもしれないのだから。

 部屋を出る私の心は不思議と落ち着いていた。

新年あけましておめでとうございます。

読んでいただきありがとうございます。

初詣には行きましたか?年末ジャンボは当たりましたか?

私の願いはただ一つ。自分の夢を叶えることです。

午年は上手くゆく。その言葉を信じて日々邁進してゆく次第です。

皆さまこれからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ