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サヨナラをもう一度〜夏のフェアリーの物語〜  作者: マナマナ


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私の心臓

 そこまでイッキに話した葵さんは喉を潤すために冷めてしまった紅茶を飲んだ。

 私もミヤさんもすっかり話に引き込まれていた。

 三人でやっと現実の呼吸をすることができた。現実の夏の空気を肺の中に入れることで私の頭は少しだけ落ち着きを取り戻した。


「これでもまだ半分くらいかな。もっと話していたいけどいい時間みたい。続きはまた今度にしよう」

 葵さんの提案には私もミヤさんも手を挙げない。

 こんなところで中断されたら気になって夜も眠れなくなってしまいそう。でも葵さんのいう通り中学生が出歩くには問題のある時間かもしれない。私は逸る心を抑えて

「あの続き、絶対話してくれますか?」

「ああ。もちろん。だから今日はもうお開きにしよう。ミヤもごちそうさま。今度はちゃんと買いに来るからな」


 私達の夜のお茶会は終わりを告げた。みんなでテーブルの上のモノを片付けていると

「二人共。よかったらこれ」

 ミヤさんは残っていたケーキを箱に入れて私達に渡してくれた。

「え!いいんですか?あ、ありがとうございます。私も今度は友達と買いに来ます。絶対です」

 ミヤさんは微笑んで頷く。

 そして私達を駐車場まで見送りに来てくれた。

「なんなら乗ってく?」

「そうしたいけど。私はバイクで帰るから。だから葵、今度ドライブ連れてってよ」

「OK。仰せのままに。じゃあまた」

 葵さんはアクセルをフカす。それがなんだか合図のように私は何の前触れもなく唐突に夢の中に落ちてゆく。


 日差しは眩しくて庭にはたくさんの向日葵が咲いている。みんな太陽を目指すように同じ方向を向いていて風に微かに揺れている。

 私の背後にはあの洋館がある。でもイメージが全然違っている。

 とても明るくてあの時とは全然違って日差しが眩しい。ここには夏の光が溢れている。

 

 私は一瞬で理解した。ここはアリアという女の子の家だ。同時にラピスの家でもある。違う所と言えばラピスの家に向日葵は一つとして咲いていなかった。それにもっと暗い感じがした。同じ夏なのに時間に置き去りにされてしまったみたいに寂しさが漂っていた。

 

 ここにも人気はない。話だと大きくて白い犬もいるはずだけど姿は見えない。玄関の方を見ると

「・・・あれは」

 金色の髪の少女が立っている。彼女も私のことを見ている、というか手を振っている。もちろん真っ白なワンピースで裾は微かに風で揺れていた。

 私は誘われるまま玄関に向かって歩き出す。ここにはあの時の夏がある。それは私の知っている夏ではない。

 どうしてだろう?歩いても歩いてもなかなか辿り着くことができない。


「あなたは一体何が知りたいの?」

 後ろから急に声を掛けられる。振り向くとそこには

「・・・あなたは・・・夏のフェアリー・・・でしょ」

 一瞬笑顔が揺れたように見えた。それは夏の揺らぎかもしれない。

「アタリ。分かるんだ。あなたの大切なお友達のナントカさんと間違えないのね」

 嬉しそうに笑っている。私には分かるもん、はっきりと。

「分かるよ。私はあなたとラピスに見分けくらいできるんだから」

「あなたはずいぶん私の、いや私達の存在を受け入れているのね。良いことだわ」

 そのまま私の顔にどんどん近づいてくる。

「ま、待って」

「どうして?あなたは望んでいるはずなのに」

 手はもう私の腰にある。『後は引き寄せるだけ』とでも言いたそうな顔で笑う。

 私の身体は反発するだけの力が出ない。本当は望んでいるの?こんなこと現実なら許されることじゃないのに。


 私の身体は彼女の体温を求めている。


「素直になった方があなたのため。そして私のため。だからもっと私のことを求めていいのよ。私なら彼女と違って一回なんて言わない。あなたが欲するままに夏を味合わせてあげる。これはとても気持ちの良いことなのよ。知っているでしょ」

 何回も?ホントに?あなただって最初に会った時は一回だけと言っていたのに。どこでそのルールは変わったの?もし私が二回目をしてしまったら世界はどうなるの?

「そんなこと・・・してみれば分かる」

 あと数センチ。私は抗えない。身体は確実に彼女を求めている。でも気持ちは望んでいない。私は一体どっちに向かってしまうのだろう。誰か・・・教えて・・・


 突然目が醒めた。私は葵さんの声に反応して目を開ける。どうやら助手席で眠っていたけど今はもう家の前にいる。私は、私は・・・自分でもよく分からないけどとにかく助かったでいいのかな、思わず安堵の息が漏れた。

「葵さん・・・・」

「大丈夫?車に乗った途端に電池が切れたみたいに眠っていたんだ」

「そうみたいですね・・・・私もあんまり覚えてないですけど」

「とりあえず着いたけど歩ける?」

「ありがとうございます。多分大丈夫です」

 車から降りると身体はまだどこかフワフワしてちゃんと地上に立っているという感覚がはっきりしない。でも今が現実なんだ。そう強く想うことによって少しずつだけど自分を取り戻し始める。何回か深呼吸する。もう大丈夫。私は大丈夫。


「今日は色々聞かせてくれてありがとうございます。続き、楽しみにしています」

「ああ。私もいろいろ鈴音から・・・まだそういう段階じゃないか。じゃ」

 葵さんはアクセルを控えめにして走ってゆく。テールランプが角を曲がって見えなくなる。

 空を見上げると静かな夜の中にいて街の灯りより小さな声の星がかすんで見えている。


「真っ赤な星・・・・心臓・・・」


 私も私自身の心臓に右手をおいて生まれた時から続いている自分自身の鼓動を感じてみる。小さくて控えめな音。あの星のように真っ赤なのかな?

 ラピスのことが急に頭の中に浮かぶと

「なんでこんなに元気になるかな・・・・・・」

 心臓は強く脈打ち始める。

 会いたい、とても・・・・でもまた明日。今はおやすみなさい。

 私の心臓は蠍の心臓に負けないくらい激しく燃えている。ゆっくりと呼吸をすることで気持ちを抑えているみたい。本当に・・・私はラピスのことが・・・・・・

「・・・・どうしたら・・いいのかな」


 夜の空に飛行機が飛んでいるのが見える。視界を通り過ぎると遅れて音が追いかけるように聞こえてくる。だから音だけ聞いているとその姿はもう遠くに行ってしまっている。

 今は平和な飛行機だけどあの頃の音は・・・見上げていると葵さんの話が蘇ってくる。遠い昔のことだけど戦争なんて大っ嫌い。知らないことだけどこれから先、絶対同じ過ちを繰り返してはいけない。

 そんな気持ちになるといつの間にか心臓の音は静かになっていた。海からの夜風が私をさらにクールダウンさせてくれた。おかげでやっといつもの私に戻れた気がする。

 

 また明日。それはきっと今日と同じ明日なのかもしれない。でもそんなことを明日にならないと分からない。なら今は・・・・・・

 玄関を開けると夕飯の匂いがする。今夜は・・・カレーだ。お腹が膨れたらもっと私は現実の私になれる。だから元気よく言った。


「ただいま。お母さん、お土産あるよ」



冬至の日には柚子湯に入りましたか?『ん』のつくもの食べましたか?

読んでいただきありがとうございます。

私はシャワー派なので柚子湯には入れず、『ん』のつく食べ物くらいです。

紅まどんな・・・今はこれがいい。この時期はほぼ毎日食べています。

ビタミン摂って風邪なんて・・・と思っていたのに最近調子が悪い。

年末なのに楽しく過せないのは悲しい。だから治す。頑張って。

皆さまも体調崩さずお過ごしくださいませ。

それでは次回もお会いできたら嬉しいです。

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