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サヨナラをもう一度〜夏のフェアリーの物語〜  作者: マナマナ


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私はどうしても知りたい

 麦わら帽子がすっかり定番になる。というかこれが自分の目印のような気がするから、昨夜お母さんに無理言って私のモノとしてもらった。

 今日の海も何も変わらない。ホント昨日の続きみたい。緩やかな波が寄せては返す海を見ていると昨夜の葵さんの言葉が蘇る。そんなことはないのは分かっているのに。


「おはよう」


 私が目を閉じて深呼吸している時に後ろから声がかかる。


「おはよう、ラピス」

「良い天気だね」

「うん、昨日と同じ」

「うん」

 私達はしばらく頬に風を感じながら海を見ている。

 蝉の声、潮騒の声、人々の楽しそうな声。そんな声達をただ聞いているとなんだか時が止まったみたいに感じるのはきっと気のせいだと思う。明日になったらそこには昨日と違う同じような日があるだけ。


「読んだよ」

「私も」

「面白かった。でもやっぱり欠けているところは気になる」

「そうだね」

「ねえ、鈴音は何か思いついた?」

「まだ。全然考えてない」

「そうなの?私は考えたよ」

 私はラピスのことを見る。彼女も私のことを見ている。だから自然と視線が合うとニッコリと笑った。私も笑おうとしたけど、どこかぎこちないのが自分でも分かる。


「そうなんだ・・・聞きたいな」

「いいけど。そうだ、鈴音はどっちだと思う?」

「どっちって?」

「どっちがジョバンニで、カムパネルラかってこと」

「考えた。っていうか私もそんなこと思っていた」

「私は鈴音の方がジョバンニだと思った」

「私もそうかなって。でもさ・・・」

「そうだね。だとしたら私はいずれ鈴音の目の前からいなくなる」

「物語の中の話だよ」

 ラピスは、そうかしら、と言ってまた海の方を見る。私も海を見る。そんなのはただのお話だ。実際にそんなことあるはずはない。


「ねえ、夏が終わったらどうなるのかな?」

「夏が終わったら秋になる。秋が終わったら冬が来る。普通なら」

 普通なら。そうだよね。異常気象にでもならない限りそのサイクルは変わるはずがない。ラピスはどうしてそんなこと聞くのかな?

 私にはどうしてもあのことが気になっている。夢の話を現実に持ち込むのはあまりにも対等ではない。けどまだそのことをラピスに聞くのは違うような気がしている。

「またかき氷食べたいな」

「いいよ。行こっか。混んでないといいけど」


 今日はかき氷を食べたらラピスは帰っていった。って彼女がどこに帰るのか、ふとそんなことを思ってしまう。町内会長をやったことのあるタナカのじいさんだって知らないって言っていたくらいだ。それにラピスみたいな子が引っ越してきたなんて話も聞かない。こんな海しかないような田舎の町だからちょっとした変化があればどこかで噂くらいは耳にするはずだ。

 私はそんなことを考えながら家路についていた。そろそろお昼ご飯の時間なのにかき氷のせいでお腹が一杯だった。家に着く手前でクラクションがして振り返ると

「昨夜はごちそうさま」

「あ、葵さん。おはようございます。今から図書館ですか?」

「そう。レポートがたくさんあって大変なんだよね。それじゃ」

 笑顔と一緒に葵さんはギアを入れた。

「あ、あの」

「ん?」

「あの、私も一緒に行ってもいいですか?葵さんが嫌じゃないなら」

 葵さんは頷いてドアを開けてくれた。シートに座ると昨日と同じようにアクセルをフカす。


 図書館に着いて私は葵さんにお礼を言ってそこで別れた。もう一度似たような話がないか関係のないコーナーも見る。けれどやっぱりない。なら葵さんのように外国語の本を読むしかないのだろうか。それには時間と根気が必要だ。

 しかし今になってお腹が空いてくる。お昼いらないなんて言うんじゃなかったな。たしか近くにコンビニがあったような。


 図書館を出て駅に向かう途中にそれはある。一応財布の中身を確かめると千円札が一枚だけ入っていた。お小遣いまであと二日。なら使ってもいいよね。帰りの電車賃だけ残してクーラーの効いた店内に入る。

 店員の声がする。それに私しかいないみたい。適当に店内を見て回る。けれどお昼も過ぎていたからか、お弁当の類いの棚はほとんどカラに近い。入荷するにはまだ時間がかかるかも。でも背に腹は変えられない。ここは他の何かで手を打つしかないみたい。

 私は水とミックスサンドを買って外に出ると・・・目を奪うものがあった。


「あれって・・・」


 太陽の光に反射して余計に目立っていたのは真っ白な帽子。間違いなくラピスのものだ。

 それはちょうど建物の影に隠れる寸前だった。私は気付けたけどラピスは私に気が付いていないみたい。


 思わず買ったものの入ったビニール袋を持つ手に力が入った。私、なんでこんなにドキドキしているのかな?その答えを出す前に足が勝手に動き出していた。


 私は彼女の後を追っていた。

 

 なんとなく悪いことしているみたいな気がする。お願い振り向かないで、ってずっと思っていた。


 かなり距離を取っていたせいか分からないけど、人混みや建物や看板とか、とにかくいろいろなモノに遮られて帽子以外はほとんど見えなかった。けれど特徴のある帽子は常に私の視界に映っていた。

 

 私はラピスの姿を見失うことはなかった。

 

 蝉の声が大きくなっている。まるで世界を包み込むみたいに。

 私はそんなことも気がつかないほどあなたの帽子に釘付けだった。


昨夜は新月。

都内の空は星もあまり見えないので基本真っ黒。

読んでいただきありがとうございます。

見上げる空の先には星のキラメキがあるって空想で

本来の姿を補っている私です。

今はイルミネーションの方がみんなは好きみたい。

空想って楽しいです。

次回も読んでいただけることを星に願っています。

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