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サヨナラをもう一度〜夏のフェアリーの物語〜  作者: マナマナ


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どこまでが現実でどこからが物語?

 私は再び葵さんの話に耳を傾ける。

「図書館の古い本もケルトに関する本ってことですか?」

「そう。あれは主に妖精達の話がメインなの。鈴音が読んでいたのもその一つ。どう?私の言ったこと理解できた?」

 あの時のセリフは私が何の本を読んでいたか分かっていたんだ。だからあんなこと・・・

 私が軽く頷くと葵さんは話を続ける。

「さっきは途中だったけどケルトの神様ってさ、ほんと日本と似ているの。木や水や火、太陽だってとにかく万物にそれぞれ神様が宿っているって思われてた。これって日本で言う八百万神と似ていると思わない。海外からいろいろな宗教が入ってくる前は目の前にある全てのモノに神様がいるって考えだった。もう一度言うけどさ『お天道様が見ている』って、悪いことはみんなお日様が見ていてバレている。聞いたことない?」

「あります。お婆ちゃんはそんなことよく言ってました。最近だと近所のタナカのおじいさんが言ってた」

「たなか?もしかしてフルネーム田中良治とか?」

「あ〜・・・はい。確かそんな感じだった、かな?」

 葵さんは急に笑い出して

「それ。私のおじいちゃん。そっか、まさかのご近所さんか。世間って狭いな」

「多分です。私達はみんなタナカのじいさんって呼んでます。葵さんって鯵の干物とか好きですか?」

「うんうん。大好き。それ絶対おじいだって。今年も張り切って作ったから早く取りに来いってうるさくてさ」

 確実にタナカのじいさんで決まりらしい。確かにこの世界は意外と狭いのかも。

「今朝釣ったのもらいました。釣れ過ぎだって」

「あれはもう老後の楽しみだよね。ま、そのおかげでウチは干物って買ったことないけどさ。それでさっきまでの話の大筋はこんなところだけど面白い?」

 頷いて答える。私があの時手に取った本。あの中にも最初に吟遊詩人って書いてあった。


「ああ。その話ね。それは私も不思議に思っているし、鈴音と意見は一緒。ここ日本にもやって来た。もしくはどこか他で広まった話が他の人を通じてここまでやって来た。そうじゃないと説明出来ないっていうか納得できないよね」

 私はまだ全部は読んでいないし、目次には知りたい話はなさそうだった。

 もしかして葵さんに聞けば分かるかもしれない。


「実は探している話があるんです」

「それはケルトに関係していること?」

「よく分かりませんけど、妖精の話のことです」

「ま、分かるかどうかは聞かないとね」

 葵さんは少し冷めたコーヒーを飲む。私も残り少なくなっているアールグレイを飲む。

 ラピスに関してはよく分からない。本人はちゃんと実在している。それが夢の中でごちゃ混ぜになっていて、よく分からなくて。

 もっと知りたいと思ったことは本当のこと。こんな話は馬鹿げているかもしれない。けど今はそのことを聞いてもいいと思う人が目の前にいる。確かに葵さんの言う通りだ。


「あの・・・私が知りたいのは夏のフェアリーについてなんです」

「夏のフェアリー?」

「はい。そんな話ってありますか?夏があるから存在しているっていうか」

 葵さんはコーヒーを飲み干して

「残念だけどそういう話は聞いたことないな。ま、私の勉強不足ってこともあるだろうし、もしかしたらどこかにそんな話があるのかもしれないね。今度大学に戻った時、資料室調べてみるし教授に聞いてみるかな。多分、ここの図書館にはなかっただけかもね。でもさ、鈴音はそのことをどこで知ったの?教えてもらえるといいんだけど、ヒントになるかもだから」

 葵さんの顔には興味が溢れている。

 え〜と・・・ラピスのこと、話した方がいいのかな。夢の中でラピスは他の人には見えないって言ってた。でも今朝はちゃんと一緒に朝ご飯を食べたよね?急に現実だったのかが分からなくなる。本当に私はラピスと一緒にご飯をたべたのだろうか・・・それに夏のフェアリー・・・

 なんだか夢が幻となって現実になっているみたい。私が見ているのは誰なの?


「あ、あの、なんて言うか、自分でもよく分からないんです。夢を見たんです」

「夢?・・・夢でもいいから聞かせて」

「はい・・・見た夢ってただの夢じゃないような気がするんです。その、似てるんです」

 葵さんは黙って聞いている。私の言葉を待っている。

「昨日、偶然知り合った女の子に。同い年くらいなのに名前はないって変なこと言うんです。夢の中に出てきた夏のフェアリーもやっぱり同じように名前は必要ないって。だから余計に気になっちゃったっていうか、はい、そんな感じです。すみません、夢と現実がごちゃ混ぜになった話で」

 葵さんは少し考えてから

「なかなか面白い話だね。少なくとも私は今まで妖精のことを調べていたから受け入れることできる。その話ってケルト神話でも珍しくない。というか夢の中の話って現実とどこか繋がっているって当時は考えられていた。だから他の人ならともかく私は一笑に付すことはできない。この件はぜひ調べてみたいと思う」

 そう言ってもらえて少し安心する。夢の話なんて大体が信じないっていうか所詮は夢で片付いてしまう。


 今話していることだけはいつも見る夢とは違う。やっぱりどこか現実と繋がっているのかもしれない。


 こんなこと相談したなんてラピスが知ったらどんな風に思うかな?彼女を変な話に巻き込みたくない。だから私はこのことは秘密にしていようと思う。その意思を葵さんに伝えると

「そうだね、これは鈴音の夢の話だからね。それにその彼女だって本当は鈴音のことをからかって名前を言わないのかもしれないし」


 家までは葵さんが車で送ってくれた。行きと同じように運転を楽しみながら。まだまだ一日はたくさん残されている。太陽だってまだまだ沈む様子はない。ただ角度を変えたにすぎない。

 家の前に着くとお互い連絡先を交換した。エンジン音が大きかったからか、家からお母さんが顔を出す。私のことを見つけて葵さんと挨拶を交わす。葵さんがタナカのじいさんの孫だと分かると

「いつも鯵をありがとうございます。それにしてもこんな大きなお孫さんがいるなんてびっくり。これからも鈴音と仲良くしてください」

「こちらこそおじいと仲良くしてくれてありがとうございます」

 挨拶が済むと葵さんはエンジンをフカして行ってしまう。その後に残された音は妙に静かだった。


 部屋に戻ってから私は図書館から借りて来た『銀河鉄道の夜』を読み始めた。

 ずっと昔の人が空想した話なのに、こんなに時代が過ぎているのに、そこにあるキラメキは鮮やかな色を失うことがない。文字を追っていく度フワフワとした不思議な気分になってゆく。

 私も乗ってみたいと思う。空想の中だとしても、最後に別れが訪れるとしても、真っ暗な銀河を大好きな人と旅をして特別な・・・私はきっとラピスと特別な存在になりたいのかもしれない。その特別ってことが一体どういうことなのか、今はそれは分からないし、なんでそんなこと思うのかも分からない。

 でも・・・・・・そっと指でくちびるを撫でるとそこにはラピスの感触が残っているような気がする。今でもまだ分からない。彼女はなぜあんなことをしたのか。私はどうしてそれを拒むことができなかったのだろう。

 とても自然で当然のことのように目の前を過ぎ去って行った。夢や空想ではない現実なのに。

「会いたい・・・もっと」

 自然と出た言葉と感情だった。私のくちびるがラピスのことを求めているみたいに感じた。


真逆の季節の今は鍋物などがよろしいようで。

読んでいただきありがとうございます。

皆さまはどんな鍋料理がお好みですか?

でも冬に食べるかき氷もオツなものですよ。どうぞお試しあれ。

食べながら夏が舞台のこの物語を考えています。

肉まん片手に立ち寄ってもらえたら嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

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