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一、ハインリッヒの法則


 宮城県郷之上市の警察署に、郷之上西部工業団地の道路で倒れて亡くなっている人がいる、と通報があったのは、十月のとある晴れた火曜日、午後六時頃だった。

 郷之上市は宮城県の県庁所在地である仙台市から三十キロメートルほど北にある。平成の大合併で近隣の町や村を合わせて市になった。自家用車で仙台市に通う勤め人もいるが、仙台のベッドタウンはこの地まで伸びていない。

 郷之上西部工業団地は、当時の郷之上町に働き先が欲しいと、バブル期の町長が最初に計画した。町では郷之上の中心部から五キロメートルほど西にある元農地を工業団地へと整備した。当初は六社ほど工場を誘致したいとしていた。しかし完成した頃、日本はすでに長い不況期に入っており、申し込んだ会社は大道おおみち工業と外崎とのさき精機の二社だけだった。その後の町長、市長は西部工業団地への誘致に熱心ではなく、現在はその二社のみが操業している。

この西部工業団地での事件通報を受けて、郷之上警察署刑事課の枠谷博一は、年下の同僚である静川啓志と共に現地へ向かった。現場はすでに非常線が張られていて、鑑識の作業が始まっていた。死体は道路の中央に仰向けに倒れていた。一見して交通事故、ひき逃げ事件に見えた。被害者は四十代と思われる男性。着ているものは、上はワイシャツとネクタイにスーツ、下はスーツと革靴。サラリーマンらしい。

 現場の郷之上西部工業団地は、水田の中に突如土の地面が拡がったような、長方形の地所である。道路は北を上にした場合、漢字の口の上の横棒を左右に伸ばした形になっている。左右に伸びた横棒は県道で、東は郷之上市中心部に向かう。西はいくつかの集落を経て市内西方、歳日岳の麓を抜けた後に奥羽山脈に向かう。

 現場はその口の形をした道路の左の縦棒に位置していた。工業団地は右の縦棒の東側に前述の大道工業と外崎精機の二区画があり、他には何も建築物はない。つまり、左の縦棒に当たる道路の東も西も空疎な土地だった。


挿絵(By みてみん)


「静川、鑑識と話して状況を確認してくれ。俺は発見者と話をする」

 そう言い置いて枠谷刑事は発見者と思しき人物の方へ向かった。

「すみません、通報してくださったかたですよね」

 発見者と思しき人物は、年齢はおそらく三十代の男性。細身で身長は170センチくらい。顔には眼鏡をかけていた。着ているものは上下ジャージ。腰にはランニングポーチ。靴もおそらくランニング用。ランニング中に死体に出くわしたのだろう。

「そうです」

「お名前は」

「並田仁志です」

「通報していただいた時に話されたと思いますが、改めてお話をお願いします」

「仕事柄、同じ話を何度もするのは慣れていますよ」

 枠谷は思わず顔を上げて発見者の顔をまじまじと見た。仕事柄、という単語が引っかかったのだ。

「どんなお仕事ですか」

「外村精機で品質管理をしております」

 外村精機は、口の形をした工業団地の右側の縦棒の東側に並んだ二ヵ所の工場のうち、南側に建っているほうである。

「ああ、ここの近くの工場で働いているんですね。それで、この道路では何を」

「ランニングが趣味で。会社で仕事を終えると、雨が降っていない限り走っています。夜でもここの道路は明かりがちゃんとついていますし。この工業団地は、道路を一周するとちょうど二キロメートルなんですよ。東西が六百メートル、南北が四百メートル。毎回、二周しています」

「それで、死体を発見したのは」

「午後五時四十八分です」

「正確ですね」

「時計を見ましたんで。走り始めたばかりでした。北側のほうから西に走ってきて、左に曲がって南に向かったら誰か倒れている。近寄ったら息をしていない。さて、何時だ、いま」

「そこでまず時計を見るって、なかなか出来ないことですよ」

「仕事柄、何かアクシデントがあったら、時間、場所、人、作業内容、ついでに温度湿度を確認する癖がついています。外気の温湿度はいま、十五℃六十%ぐらいですかね」

 また仕事柄だ。いったい品質管理とはどんな仕事なのだろうか。

「ああ、もちろん、倒れていた人には触っていません。刑事ドラマでよく触るなって言っていますね」

「それはお気遣いありがとうございます」

「見たら知らない人だなと。間違いなく亡くなっている。それでスマホで110番しまして。あとはパトカーが来るまで考えていました。交通事故じゃないんだろうな、とか思いながら」

「おや、どうしてですか」

「そもそもトラックが行き交えるくらい広い道の真ん中を歩いて、車に轢かれるというのもおかしな話です。トラックが行き交うのをこの場所で見たことはないですが」

 なるほど、と枠谷は考えた。一理ある。それから、と並田は続けた。

「交通事故の死亡事故というのは年にどれくらいあるものですか」

「おととしの統計だと、日本では事故が三十万件、死者が二千六百人くらいですね」

「死者は事故の数のおよそ百分の一ですか。交通死亡事故一件が起こるために、どれだけ車と人が道路で行き交わないといけないんですかね。確率的に」

「それは知りませんが、相当な数でしょう」

「なんでこんなことを言うかというと、ここで交通死亡事故が起こる確率はとても低いということです。この場所は車も人も、とても少ない。先ほども申し上げた通り私は勤務日のうち雨が降らなければ必ず走っています。年に二百日くらいになる。ここ一年、この場所で車を見たのは三回。二回はタクシーです。工場にお客さんを運んでから休んでいたんでしょう。残り一回は車とその車から降りている人を見ました。きょろきょろ左右を見渡していたから道がわからなくなったみたいですね。それくらいしか車がいなくて、ここで交通事故が起こる確率はどれくらいになるのか。しかもそれが死亡事故なのはどうでしょう。刑事さん、ハインリッヒの法則ってご存知ですか」

 彼は交通事故関連の研修で聞いたことを思い出した。

「聞いたことはあります。ええっと、重大事故が一回起こる前には軽微な事故がたくさんあるとか」

「一件の重大事故の背景には、二十九件の軽い事故と三百件のヒヤリとした、ハットした、というヒヤリハット事例が存在するというものです。ところがこの道路では私がここの工場に就職し、年に二百日ぐらい走るようになって十三年半、一例のヒヤリもハットもない」

「何を言いたいんですか」

「交通事故よりも、すでに亡くなっていた人間をここに置いていった可能性のほうが高いのではないか、と言っています。」

 もしそうなら、死体遺棄だ。殺人事件の可能性もある。しかし疑問がある。

「死体遺棄なら、山の中とか人のいないところに置こうとするものでしょう。なぜ道路に置いたんですか」

「ここに近い場所から運んだ。それから、この道路は車も人も滅多に通らないことを知っていた、ということですね」

「それでも公道ですよ。いずれ発見される」

「そう、永久に隠さなくてよい。半日稼げればいい、ぐらいな」

 その時、静川が来て会話に割り込んだ。

「枠谷さん。仏さんの身元がわかりました。大道工業で働いている挟間亮太さんというかたです。社員証を持っていました」

「お隣の工場ですか」

 刑事の枠谷よりも先に発見者の並田が反応した。大道工業の敷地は外村精機の北側に位置する。

「並田さん、隣の大道工業に御存じの人はいますか」

「いいえ。以前は、親善ソフトボール大会を行うなどの交流があったらしいです。でもそれに私は参加していませんし、コロナ禍以降はそうした会社間の行事も全く無くなってしまいました」

 並田は静川のほうを向いて尋ねた。

「できたら、狭間さんがどんな仕事をされているかたか、教えていただけませんか」

「名刺も持っていました。品質管理部の課長さんだそうですが」

「私の同業者ですか。それは……」

「ええっと、枠谷さん、こちらは」

「第一発見者の並田さん」

「同業者、って、並田さんも品質管理部ですか」

 今度は静川が尋ねた。

「ええ。大道工業の隣の、外村精機で働いています。品質管理部の主任をしております」

「並田さん、さっき何か言いかけましたね」

「ええ。大道工業さんの工場内で行われた犯行の可能性があるかな、と」

なぜです、と枠谷が理由を聞こうとしたところで、大きな声がした。

「枠谷さん、鑑識の作業は一通り終わったんで、見に来てください」

 鑑識からだった。

「それじゃ、私はもうこれでいいですか。もう暗いし寒いし、夕飯時になってきましたし」

 並田は帰りたがっていた。

「ええ。今後、またお話をお伺いしたり、ご協力を依頼することがあるかもしれません。よろしくお願いします」

「ええ、それはもちろん。全面的に協力します」

 枠谷が並田の連絡先を聞き、二人はそこで別れた。この男にまた詳しく話を聞いてみたい、と枠谷は何となく感じていた。


「枠谷さん、これは交通事故じゃないよ」

 それが鑑識からの第一声だった。

「首の後ろ、頸椎にトンカチかスパナか何か固いもので後ろから一撃だ。これは車に衝突されたからじゃない。殺人事件の可能性が高い。死体の様子からして、死後十時間は経っている。となれば、亡くなったのは朝の八時頃だ。他に特になければ、もう仏さんを持って行くよ」

 わかった、いま特には何もない。そう言い置いて、枠谷と静川は大道工業に向かい、調査を始めた。大道工業でまだ居残っていた総務課の人に協力を頼んだ。来てもらった男性は芝田と名乗った。大道工業の勤務開始時間は通常は午前九時から午後五時半まで。朝の八時頃と言えば挟間が亡くなったのは勤務時間開始の一時間前。早い出社だ。

会社の社員用駐車場には挟間の自家用車があるという。つまり被害者の挟間は車で出社して、大道工業の駐車場に着いた。駐車場から会社に入るには社員証兼用のIDカードを通す必要がある。だが確認してもらったところ、その形跡がない。挾間は駐車場まで来てから消えたことになる。とすれば、駐車場での犯行かもしれない。

 並田が工場内で行われた犯行ではないか、と言っていたのを思い出した。駐車場も工場敷地内ではある。彼がそう考えた根拠はなんだろう。

 疑問はそのままにして、枠谷等は芝田に駐車場を案内してもらった。すでに暗くなっていたが、幸い挟間の車は駐車場の街灯の近くだった。車には鍵がかかっていた。挟間の車の運転席のドアの外、アスファルト地面に何か黒いものが見えた。

「静川。鑑識を何人か呼び戻してくれ。これは血痕かもしれない。それから、車の指紋も調べてもらおう。ここが犯行現場の可能性がある」

 この車の近くに人が来ないようにしてくれませんか、と枠谷は芝田に頼んだ。芝田は、

「工務に三角コーンと虎テープを持ってきてもらいましょう」

と電話をしてくれた。

「遅くまですみませんね」

と芝田に言うと、芝田は、

「大道工業はホワイト企業ですからね。ちゃんと残業代が出ます」

と言いながら笑った。

 鑑識が二人来たところで駐車場は彼らにまかせて、枠谷と静川は工場内に入れてもらった。工場の商談室で被害者の上司だという品質管理部の勝田部長と芝田、警察側は枠谷と静川の四人で話をした。まず勝田部長に話を聞いた。

「挟間君の件、大変驚いています。今日工場に来ていないんで、最初は何か出張でもあったかなと思いまして。でも出張の話も聞いていない。それなら彼にはまずありえない無断欠勤だろうかと。そうしたら駐車場に彼の車があるという連絡がありました。昼に彼のご家族と電話もしました。普段通りに家を出て何も心当たりはないということです。いったいどうしたのだろうと。道路で亡くなっていると聞いて、ご家族にまた電話しました。挟間君の奥さんがいま警察署のほうに向かっているようです」

「それでいくつかお尋ねしたいのですが」

「何でも聞いて下さい。事件について、とりあえず工場長と相談し本社に連絡もしました。警察には全面的に協力するということで意見は一致しています」

「ご配慮ありがとうございます。早速ですが、被害者の挟間さんが亡くなられたのは午前八時頃じゃないか、という話です。ここの勤務開始時間よりも一時間ぐらい早いですね」

「ああ、それは挟間君の習慣ですよ。毎日彼は八時頃に出社しています。誰もいない邪魔されない時間に書類を見たり書いたり、電子メールを読んだり返事したりしたいのだそうです。事務系スタッフのいるフロアでは、彼が一番最初に来ていることが多いです」

「そうですか。その習慣は誰でも知っていることですか」

「事務系スタッフはみな知っていますし、製造でも彼の担当部署ならたいてい知っています。朝早く狭間君から電子メールが飛んでくるのでね」

「なるほど。現在、その八時頃から挾間さんの足取りが掴めておりません。まず目撃者がいないかどうか調べたいのですが」

「それなら私から一斉メールを工場内に出しましょう。何か情報を持っている人は直接警察署に連絡するように伝えます」

「よろしくお願いします。それから、今日一日、何か変わったことはありませんでしたか。挟間さん宛に電話がかかってきたとか」

「電話は通常のものだけですね。工程を変更したいから見に来てほしいとか。彼が来ていないことを知らない生産技術部からです。ああ、変わったことがひとつありました。彼のノートパソコン、机の上にワイヤでロックされて盗めないようにしてあったのですが、普段と違って斜めに置かれて、机から少しはみ出ていたんです。几帳面な挟間君にしては珍しい」

「誰かが、触った? 慌てて?」

「そう言われると、嫌な気がしますね」

「ちょっと見てきますか」

 芝田が商談室から去っていった。

「挟間さんの仕事はなんですか」

「うちは製造部が第三製造課まであるんですが、挟間君は第二製造課の品質管理を担当していました。プラスチック成型用の金型を作る部署です」

「品質管理とはどういう仕事なんですか」

「顧客の期待するニーズを満たすために品質を守る仕事ですよ」

 何を言っているのか、枠谷にはよくわからなかった。

「具体的には?」

「工場で製品を作る時にあるべき姿というものがあって、それと現実とのギャップを埋める仕事です。一例として、時間をかけるべきところで手を抜くな、みたいな」

 自分が品質管理の仕事内容を理解するには時間がかかりそうだ、と枠谷は思った。

「すみません。もっと話を続けたいところですが、時間がある時にじっくりお伺いします。この辺で署に急いで戻らないといけません」

 被害者の妻が警察署に向かっているのなら、早急に話を聞いておきたかった。

 その時、芝田から勝田に電話がかかってきた。

「そうか。わかった。警察のかたに伝えておく。……挟間君のノートパソコン、持ってみたら少し軽いというので裏返してよく見たら、ハードディスクが引っこ抜かれて無くなっていたそうです」


 枠谷は警察署に向かう途中、鑑識に電話をしてみた。駐車場にあった挟間の車の横にあった黒いものはやはり血痕だった。

 警察署に着くと、挟間の妻がいた。泣いてはいなかったが、憔悴した顔をしていた。

「ご主人をご覧になりましたか」

「はい。まだ信じられないのですけど」

「お悼み申し上げます。こんな時に申し訳ありませんが、ご主人についてお教えください。年齢は」

「主人は四十五歳です。私と結婚して十六年になります」

「昨日から今朝にかけて、何か変わったところはありませんでしたか」

「特には。仕事で疲れたような様子でしたが、それは毎日のことですし」

「お仕事については何か」

「困ったことになってきた、と言っていました。年に何回かはそういうことを言うんです。でもそれ以上のことは話しませんでした。普段から仕事については立ち入った話をしませんし」

「ご家庭のことを教えて下さい」

「中二の長男と小六の長女と私と夫の四人家族です。子供たちはそろそろ反抗期、なのかもしれませんが、特に問題はおきていません。子供の受験とかも、入れるところに入ればいいよという感じで」

「ご主人が誰かに恨まれるようなことはなかったですか。仕事でも、プライベートでも何でも」

「何も。というのは、夫は人づきあいがそんなに得意ではないほうで、仕事と家庭の往復以外はあまり。会社の人たちと飲むということもそんなになく、恨まれるほど他人と関わっていないというか。趣味も家族でたまに旅行をするくらいで」

「普段、家庭ではどんなかたですか」

「普段はテレビの前にいて、そんなに口数は多くないんです。でも時々ニュース番組を見て怒ったりしますね」

「ほう?」

「戦争とか、人殺しとか、性的な事件とか。中でも、強い立場の側が弱い立場の側を攻めるとかいじめるとか強制するとかいうのが腹立たしいらしくて」

「正義の人、ですか」

「ええ、そんな感じです。ふふふ」

 笑みを浮かべた被害者の妻は、次の瞬間、涙を流した。

「どうしてこんなことに……」

 それっきり、彼女は何も言わずに押し殺した声で泣き続けた。


 大道工業の社員から情報提供があり、犯人はあっさりと明らかになった。

「その日は出張があって、資料を会社に置いてあったんで、それを取りに普段より早く会社に行ったんです。八時ちょっと過ぎくらいだったと思います。そうしたら挾間課長の車の近くに砂沼課長の車があって、それで、あれ、砂沼課長の駐車する場所はもっと離れたところじゃなかったかな、と思ったら、砂沼課長の車が走り出して駐車場の外に出ていったんですね。変だな、と思って。ああ、自分は車に興味があるんで、会社の誰が何の車に乗ってどこに駐車している、ってことは結構知っているんです」

 砂沼康介は挟間亮太が担当しているという第二製造課の課長だった。任意で砂沼の取り調べをしたところ、砂沼は自分がやりましたとすぐに自供した。

「挟間が八時に会社に来ることはわかっていました。そこで挟間の駐車スペースの近くに自分の車を置いて、自分の車の影に隠れて待ち伏せしました。車から降りて来るところを後ろから近寄って、スパナで後頭部を殴りつけました。倒れて息をしていないことを確認すると、自分の車の荷室に挟間の死体を入れて、西部工業団地の反対側の道路に捨てました。反対側の道路は滅多に車が来ないことがわかっていたのですぐにはみつからないだろうと思ったんです。それから会社に出社しました」

「何食わぬ顔で普段と同じように働いた、ということですか」

「そうです」

「スパナはその後どうしました」

「自分の車の荷室に入れっぱなしです」

「挾間さんのハードディスクを抜き取ったのはあなたですか」

「はい。挟間の居室に行ったら、まだ誰もいなかったので、急いで抜き取りました」

「どうしてです」

「捜査が混乱するかと思って。それだけです。抜き取ったハードディスクはディスクの部分を粉々にして捨てました」

 実際、破壊されたハードディスクが大道工業のゴミ捨て場で見つかっていた。

 犯行についてはすらすらと話していた砂沼だが、犯行動機を聞くと歯切れが悪かった。

「個人的な恨みです。自分と同期なんですが愛想の悪い奴で……、飲み会に誘っても来なかったし、その頃から気に入らない奴でした。それと……、自分よりも二年早く課長になって嫉妬もありました。それに挟間は自分の課である第二製造課の品質管理担当だったんですが、細かいことにしつこいんです。配線を揃えろとかマニュアルをまとめろとか人が通るところに物を置くなとか。それでずっと腹を立てていて、いつか殺してやろうと思っていました」

「それで殺したんですか」

「そうです」

 枠谷は納得できなかった。どんな職場にも気に入らない奴はいるものだ。しかし、配線を揃えろと言われてむっとした、などという理由で、人を殺せるものだろうか。

「何か他に理由はありませんか。砂沼さん。あなたは奥さんも子供もある。大道工業でもそれなりに出世してきた。でもこれからは家族も大変肩身が狭い思いをする。大道工業も内部で殺人事件があって大変評判を落としている。そしてあなたはこれから殺人犯として生きることになる。だというのに、いま話したような理由だけで人を殺せるものですか」

「話したことで全部です。疑うなら精神鑑定でもなんでもしたらいいでしょう」

 取りつく島もなかった。

その後、凶器のスパナは砂沼の自家用車の荷室で見つかり、供述が裏付けられた。


 枠谷はふと、並田の意見を聞きたいと思った。事件発生から四日後、土曜日になっていた。外村精機は完全週休二日制と聞いていた。並田も休みのはずだ。

 最初に状況を聞いた日に教えてもらった連絡先に電話すると、並田の奥さんらしき人が電話口に出た。

「旦那さーん、刑事さんだってー」

 そんな声がした。そののんびりした口調を聞いて、恐らくは平和で平凡な家庭なのだろう、と枠谷は思った。並田が出たので会って話をしたいと申し出た。ご自宅にお訪ねしても良いのだが、と言うと、それは子供が騒がしいからと場所を指定された。

 指定された場所は、郷之上市西部のガソリンスタンドに併設されたコーヒーチェーン店だった。郷之上市中心部にある並田の家と、外村精機郷之上工場の中間地点に当たっていた。枠谷が車で着いてから数分間待つうちに並田がやってきた。

「お忙しいところをすみません」

と枠谷が声をかけた。

「ええ、忙しいんです。ははは。家庭から逃げてきました。休みの日ぐらい子供と向き合ってと妻に言われているんですが」

 聞けば並田は三十五歳。結婚して七年。六歳の長男と三歳の次男がいるという。枠谷よりも一歳年上だ。

「それは申し訳ない」

「いえ、有難いです」

「すみませんが、並田さん自身のことをよく知らないんで、まずそれを教えてくれませんか」

「ああ、もともと仙台市泉区の出身なんですよ」

 地元の私立大学の工学部を出て、外村精機に就職。郷之上工場での採用という。

「最初は製造部で三年。それから生産技術部で三年。その後、品質管理部に異動して、七年半になりますか」

「異動が多い工場なんですか」

「そうですね。見込みのありそうな者ほど異動させる。製造部から生産技術部に異動した時、上司にそう言われました。本当にそう思っていたのか、担がれたのかわかりませんが」

「なるほど。それで品質管理部の仕事を教えていただきたいんですが」

「本来は不具合が出ないように品質を管理するのが仕事です。しかし実際は不具合が出てから対策などのために奮闘することが多いですね。そう言えば、刑事さんとは少し共通点があるかもしれません」

「おや、どういうことでしょう」

「私の父は漫画が好きで実家にコミックがたくさん置いてあるんです。私はそれを子供の頃からよく読んでいました。その中に、警察官が巨大ロボットを動かす漫画がありまして、その主人公に対して、上司がこう言うんですよ。おれたちの仕事は本質的にはいつも手おくれなんだ」

「ほう」

「予防をしたいのはやまやまだが、実際には事件が起きてから動かざるを得ないという意味みたいです。品質管理の仕事は極端な話、列車の脱線事故が起こる前にレールの上の石を取り除ければよかった、レールを点検しておけばよかった、と後で思っても、実際は脱線事故の後始末に追われるようなところがある」

「なるほど。確かに警察の仕事にはそういう面がありますね。私のいる刑事課などは特に。一応防犯にも力を入れてはいるんですが」

「工場も不具合が出ないように様々な活動をしています。品質教育もするし、QC活動もしている。しかしそれでも不具合が出る。出てから客先に謝ったり報告書を書いたりしていると、不具合が出る前にどうにかならなかったのかと思います。客先で不具合が発覚すると大変ですから。どうして発生したのか製造部や生産技術部に聞いて調べて、上司に報告して、対策を考えて、品質管理部の部会で報告して、客先に謝りに行って、そこで発生原因と対策を説明して、社内用、客先用の報告書を作成して、二度と起きないように品質教育で他の部署も含めて実例の報告をする。面倒な話です」

 並田は死体発見現場で、仕事柄、同じ話を何度もするのは慣れていると言っていた。枠谷にはその意味がようやく理解できた。

「しかし、起きてしまった不具合は起きてしまったものとして、手遅れだろうが対処せざるを得ない」

「そう言えば、大道工業の部長さんに品質管理部の仕事をお聞きしたら、あるべき姿というものがあって、それと現実とのギャップを埋める仕事です、と言っていました」

「ああ、それはまさに不具合が出た時の対応方法ですね」

「どういうことです」

「工場で製品を作る時には作業指示書というものがあるんです。つまり作り方を書いたマニュアルです。生産技術部で作製して、製造部と品質管理部で確認して発行する。それに書かれたとおりに作業すれば問題なく製品が作られることになっている。ところが不具合は発生する」

「作る人間がミスしたりとか」

「ええ。それに作業指示書自体が間違っていたり、わかりにくかったりする場合もある。そうした時に、あるべき姿はなんだ、本来どうすべきだったのか、というのを書き出して、実際にはどうだったかも書き出してみる。違うところが必ずある。そこを対策する。例えばですね、ああ、これはうちの話じゃありません。社外秘は話せませんので。例えば、金属板にネジ六ケ所で基板を取り付ける作業があったとします。そのネジが一ヵ所脱落した。しかも外蓋を閉めてから。客先で製品を動かそうとしたら、中でカラカラと音がする。これはもう客先不具合です。原因を調べて対策を取らないといけない」

「ふむ、ありそうな話ですね」

「作業指示書には、担当者は六ヶ所ネジを締めろと書いてある。だから次からは気をつけて六ヶ所全部締めろと上司が注意する。これでは対策になりません。また似たようなことが起きます」

「酒気帯び運転をした人に、罰則もなしに酒を飲んで運転するなと言っているようなものですね」

「罰則はなしです。少なくとも、原因究明の時には対象者を責めないことが基本です。そうでないと、自分を守ろうとして真実を話してくれなくなります。それでは対策が取れません」

「それは失礼しました」

「実際にはどうだったのか。六ヶ所ネジをきっちり締めなければならないのに、一ヵ所締めかたがゆるかったわけです。その締めた時のゆるみをその後は誰も確認していない。それならあるべき姿とは何か。人は必ずミスを犯す。ちゃんと締めなかった可能性を前提に考えなければならない。ダブルチェック、トリプルチェックです。次の工程の人は自分の作業をする前に、前工程でネジをきちんと締めていたか、確認するのです。まだ足りません。検査の人間は蓋を閉めてから外観確認をするだけでした。蓋を閉める前にネジを確認することも必要です。しかし、それだけでは終わりません」

「まだあるんですか」

「そもそも六ヶ所もネジを締めなければいけないからゆるむ所が出る。そんなにネジが必要ですか。ネジを無くすことができれば一番です。それなら忘れることが無い。それで開発にも対策を依頼する。開発は一般に本社の開発部です。工場にあるとは限りません。それで工場と開発部でネットミーティングをして皆で考える。ゼロには出来ませんでしたがネジ締めを二ヵ所まで減らした、とします。一例ですが、こうしたものが対策です」

「手間がかかりますね」

「例えば、六ヶ所のネジの場所を図にしてこれを見ながら全部ちゃんと締めなさい、などという付け焼刃の対策だけでは、図を見ないでまたミスをする作業者が出たりするんですよ。いや、図もないよりあったほうがいいんですけど」

「なるほど」

「それで、もうネジの締め忘れみたいな不具合は起きないな、と思っていると、例えば、製品コードのシールを貼り忘れる、といった不具合が起きたりする」

「ああ、もぐら叩きみたいな」

「私は品質管理部に入ったばかりの頃、上司に言われました。品質不具合は斜め後ろから殴られるような形で起きると」

「斜め後ろ? どういう意味です」

「普通、歩くときは前を見ます。気をつけて歩けと言われたら左右も見ます。でも斜め後ろは見ない。しかし振り返れば見えるんです。真後ろは首を回しただけでは見えない。でも斜め後ろは目線に入る。斜め後ろから殴られて、初めて気づくんです。見ようと思えばそこは見えた、って。見ようと思えば見えたのに見ようとしていなかった。よく不具合が出たら水平展開しろと言うんです。似たミスを起こしそうな工程は全部点検しろと。だからネジで問題が起これば、ネジを締める工程は全部チェックする。しかし、シール貼りは見落とす。シール貼りの不具合が起きてから、ネジもシールも大して変わらないじゃないか、って初めて気づくんです。前工程から来たものに何かを加えることと考えたら大きな違いはない。斜め後ろが見えていなかった」

 これは例えて言えば、オレオレ詐欺の話を聞いた時に、還付金詐欺のようなものも起こり得ると想像しろという話だろうか、などと枠谷は考えた。いや、還付金詐欺はオレオレの斜め後ろじゃなくて右か左ぐらいか。

「それでですね、今回の事件ですけど、新聞で読みましたが、車を出た所で後ろから犯人がスパナで後頭部を殴ったって言うじゃないですか。私はそれが、真後ろからなのか、斜め後ろからなのかが気になるんですね」

 ようやく話が殺人事件になってきたので、枠谷は聞きたかったことを尋ねてみた。

「真後ろか斜め後ろかまではわかりません。それよりも並田さん、最初に現場でお話をした時に、工場内で行われた犯行の可能性がある、って話していたじゃないですか。それはなぜですか」

 並田は十数秒ほど考えこんだ。

「それを話すためには、品質管理部が工場の中でどのように位置づけられているか、から話さないといけませんね」

「位置づけ、ですか」

「私が勤めている外村精機の郷之上工場で一番偉い人は工場長です。しかし、品質管理部は工場長の下にいるわけではない。本社の郷之上工場担当の取締役の下なんです。うちの部長は工場長の部下ではない」

「どういうことです」

「工場というのは製品を作って売りたいわけです。それで利益が出れば工場長以下、工場の人間が評価される。しかし、品質管理部は品質が悪い製品の製造を止める場合がある。工場の生産に関わる人たちと利害が一致しないことがあるんですね。それで工場長よりも大所高所から見る人物の下に品質管理部を置く」

「なるほど」

「例えば、先ほど話したネジがちゃんと締まっているかどうか次工程の人間も確認しろとか、蓋を閉めた後だけでなく蓋を閉める前にも検査しろ、という対策は、工数を余計にかけているのですね」

「工数?」

「時間と手間暇です。それは製造工程にかかる時間を引き延ばすから利益が減る方向に働く。だから製造側がそうした対策を嫌がることがあります。そこで対立が起こり得る」

「つまり、並田さんは、品質管理部の課長である被害者が、工場内の何らかの恨みを買った可能性がある、と言っているわけですね」

「そうです。それで工場内部の犯行、犯行場所も工場内の可能性がある、と思いました。新聞で読みましたが、犯人が個人的な恨みによる犯行だと言っているのは、あまりにも嘘くさいですね」

「それでは何が原因だと並田さんは思いますか」

「それはわかりません。ただ、犯人がこれだけのことをするのですから、よほど隠したいことがあったのかなと」

「何だろう。何を隠したかったのか。念入りに被害者のハードディスクまで壊しているし」

「被害者が品質管理部の人だから、品質の問題が絡むのかもしれません。ただ、それが品質の問題なら、時間がかかるかもしれませんが、明らかになる可能性があります」

「どういうことです」

「ものを作って売る時には、品質・コスト・納期を満たさなければなりません。それはご存知ですね」

「わかります」

「そのうち、コストと納期は売る時に問題になるんです。コストが高いもの、納期に間に合わないものは作っても売ることが出来ません。あるいは売れても儲けにならないことがある。買い叩かれることもある。しかし、品質に問題がある製品は普通に売れてしまうことがあるんです。ただ、買う側が受け取って倉庫にしまって、使う時になって初めて問題があることに気づく」

「品質の問題が発覚するまで時間差がある、と」

「いや、今回の件は殺人事件として大きく報道されていますから、もっと早く問題になるかもしれない。ただし、それを露わにするのは警察ではないかもしれません」

「顧客とか」

「あるいは工場の親会社とか」

「なるほど。いろいろ教えていただいて、ありがとうございました。そろそろ署に戻らないといけません。ああ、並田さんのコーヒー代はこちらで払いますよ」

「いいえ、私の分は私が払います。外崎精機では国や地方自治体相手の仕事もしているんです。そこで官民の癒着があると、ろくなことがないんですよ」


 枠谷は動機が探れないかと思って、加害者である砂沼康介の妻にも尋ねてみた。

「動機などまったくわかりません。夫は仕事の話など家ではしませんでした」

 砂沼の妻は腹立たしそうな声で続けた。

「子供が高校受験で大変な時期に、とんでもなく恥ずかしい事件を起こして、どういうつもりなんだか。私たち、これからは犯罪者の妻と犯罪者の子供ですよ。いったいどんな顔をして街を歩けって言うんですか」

 拘留期間中、砂沼の家族は一度も接見に来なかった。

 加害者の砂沼康介は、動機については個人的な恨みだと同じ発言を繰り返すばかりだった。彼は起訴され、裁判を待つ身となった。


 いわゆる業界紙系ネットニュースに大道工業の名前が出たのは、事件からそろそろ二ヶ月が経とうかという十二月初め頃のことだった。

 大道工業の顧客から、同社製作の金型で成形したプラスチック容器について、精度が出ていないというクレームが入った。同顧客立ち合いで金型製造を行っている郷之上工場の監査を臨時で行ったところ、金型製造の装置が老朽化で、ものは作れるが精度が出ないことがわかった。

 大道工業によれば精度が出なくなったのは一年半前で、同製造装置の製造元によれば、古い装置ですでに部品がなく修理不能であるという。新たに購入すれば数千万円を要する。そこで精度が出ないまま、工場では製造を続けていた。

 なおこれまでの監査では検査成績書も精度が出ているように偽造し、顧客に見せる製造直後と称した金型も、精度が出ている古い物とすり替えられていたことが明らかになった。

二ヶ月前に大道工業郷之上工場では殺人事件があり、世間の耳目を集めていることから、通常よりも監査が念入りに行われたことで事態が発覚した。

 大道工業本社では金型製造装置の老朽化については知らなかったとしている。この点の経緯については、第三者委員会を設置して調査する予定であるという。

 前述の殺人事件では、金型製造担当の課長が同担当の品質管理部課長を殺害している。この事件が今回の一件に関係しているのかという点にも興味が持たれる。

記事はそう結んでいた。


 記事が出てから数日後、枠谷はまたガソリンスタンド併設のコーヒーチェーン店で並田と待ち合わせた。記事を読んだ枠谷が、並田の意見を聞きたいと誘ったのだ。

「こうした事件がなければ、ああした記事は読まなかったと思いますけどね」

 枠谷がまず話を始めた。

「もう警察の手は離れたんですけど、納得がいかないんで大道工業関連の情報は何でも当たっていました。並田さんも読まれたんですね」

「品質関連の記事は、何であれ出来る限りチェックしています」

「事件の裏に、この品質問題があったと、やはり並田さんは思いますか。なんと言うか、並田さんは、こういうことがあると知っていたんじゃないかとすら、思えてくるんですが」

「知っていたわけはありません。ただ、品質管理に携わっている人が殺された、となると品質問題が絡むのかな、とは思っていました。加害者が知られたくないことを被害者は知ってしまったのかなと」

「ああした品質問題は製造業ではよくある話なんですか」

「外崎精機郷之上工場では、工場で品質問題を隠蔽するという事件は起きていません」

 並田は真顔で答えた。

「ただ、様々な品質問題が日本中のあちこちの製造現場で起きていることは確かです。酷いものになると本社が指示して工場全体で品質問題を隠蔽するという事件もありました。工場と本社の品質管理部も抱き込んで」

「今回の大道工業の問題はそこまで大きくなかったと」

「工場の品質管理部に内緒で、製造部が黙っていただけなのか。工場長まで承知だったのか。本社の指示があったのか。見て見ぬふりをしたのか。本当に知らなかったのか、それは記事ではわかりませんね」

「ともあれ、それを亡くなった品質管理部の挟間さんが知ってしまった。それを露わにしようとして製造部の砂沼さんに殺されたのではないか、と」

 亡くなった挟間は正義感の強いところがあった、とその妻が話していたのを枠谷は思い出していた。

「被害者のノートパソコンのハードディスクが破壊されていたという話がありましたね。恐らくは、品質問題隠蔽の証拠が被害者のハードディスクの中にあったんでしょう。真のデータと改ざんしたデータと。だから犯人はそれを破壊した」

「挾間さんが殺されなかったらどうなっていたと思いますか」

「まず挾間さんは、品質管理部の上司に相談するでしょうね。問題は上司も共謀者だった時です。その場合にあくまで品質を守ろうとしたら、通常は本社のコンプライアンスを統括する部署に訴えます。被害者はどういう段階だったのかな。ただ、世の中のコンプライアンス事件の中には、訴えた人間のほうが会社に処分された例もあります」

「酷い話だ」

「大道工業の本社は知らなかったと言っています。もしそれを信用するなら、被害者が本社に訴える前に殺されたんでしょう。実際はどうだったかわかりませんが。裁判で明らかになりますかね」

「裁判所は真実を明らかにする場所ではない、と裁判の関係者は言ったりします。提示された証拠から判断する場所であると」

「それなら明らかになるかどうかは、裁判よりも記事にある第三者委員会がどれだけ本気で調べるかによるでしょうね」

「それにしても並田さん。犯人の砂沼ですが、こうした品質問題の隠蔽のために殺人まで犯すものですかね。仮に社内でばれたとしても、懲戒免職とかでしょう。殺人では人生台無しじゃないですか」

「人生を台無しにしたくなったのかもしれませんよ。仕事も家庭も全部投げ出して、刑務所の塀の中に逃げたくなったのか。一年半もの間、品質問題を隠蔽するのが結構なストレスになっていたのかもしれません。家庭のことはわかりませんが」

 家庭と聞いて枠谷は砂沼の妻を思い出した。彼女は夫を思いやる言葉ひとつ語ることなく、子供の受験と世間体を気にして夫を責めるばかりだった。

「塀の中に逃げるために、日頃から気に食わなかった同期の人間を殺めた、ということですか、並田さん」

「そう考えれば、犯人が個人的な恨みと言ったのも、まるっきり嘘ではないんでしょうね」

 どうもこの並田という人物には教わることが多いようだ、と枠谷は思った。

「またお会いしたいものですね、並田さん」

「いやいや、枠谷さん。また殺人事件に関わるのは真っ平ですよ」

 そう言って並田は笑った。コーヒー代は前回同様割り勘にして、二人は別れた。




参考文献

・ユーキャンQC検定試験研究会/編「ユーキャンのQC検定2級30日で完成!合格テキスト&問題集」ユーキャン学び出版

(この書籍は全章にわたって参考にした)

・ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」小学館



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