表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう恋なんてしない!と思った私は悪役令嬢  作者: 美雪
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/179

78 公式発表



「魔導士に何者かを聞いてはいけません。魔導士の仕事について知りたがってもいけません」


 エリザベートたちが教えてくれたことと同じ答えだった。


「魔導士に心を許してはいけません。面倒なことになるのでね」

「そうなのですか?」


 それは初めて聞いた。


「ルクレシアには教えることがありすぎます。もう少し自分で勉強すべきですが、第二王子と同じ年齢です。少々のことは仕方がありません」


 ヴァン様は怒ると怖い。


 アルード様と同じ年齢でよかったと心底思った。


「まあ、いいでしょう。人生に試練はつきものです。ルクレシアが乗り越えることができるかどうかを見てみましょう」


 嫌な予感しかしない。


「ヴァン様は何かをご存じのようです。教えていただけないでしょうか?」


 私はとっておきのカードを使うことにした。


「以前、わからないことがあればヴァン様に聞くという選択ができると言ってくださいました。私は教えられた通り、ヴァン様に聞きたいです」

「ルクレシア」


 ヴァン様はそっと私の頬に手を当てた。


「どれほどの賢者に聞いても答えがわからない時があります。なぜなら、それはルクレシアが自分で決める答えだからです。正解がわからないのであれば、自分の信じるものを見つけなさい」


 ヴァン様の手が離れていく。


 でも、見放されたとは思わない。


 優しく見守ってくれていると感じた。


「戻りなさい」

「はい」


 見張り塔の中にアレクサンダー様がいた。


「行くぞ」


 アレクサンダー様が部屋まで送ってくれた。


 エリザベートはまだ起きていて、私が戻って来るのを待っていた。


「ルクレシア、どうだったの? 元気がないわ」

「大丈夫よ。ちょっと疲れただけだから」

「本当に? お兄様に怒られたの?」


 エリザベートらしい。


「違うわ」

「まさかとは思うけれど、デート? お兄様とルクレシアがくっつくなら、私は義理の妹よ! 絶対に秘密にするから遠慮なく言って!」


 恋愛に関係させようとするのはゲームの補正なの……?


 私はこめかみをぐりぐり押した。


「全然違うわ。私はアルード様の婚約者候補よ。眠いので寝るわ」

「誤魔化さないで!」

「アレクサンダー様に聞いて。私からは言えないわ。魔導士のことは言ってはいけないからよ。そうでしょう?」


 エリザベートは黙り込む。


 また何か言い出す前にさっさと寝ようと思った。





 古城滞在が終わった。


 私とアヤナはコランダム公爵邸に戻った。


「お母様、戻りました」

「おかえりなさい。疲れたでしょう? アヤナも今日は泊まっていきなさい。忘れ物がないかどうかを確認させるわ」

「はい。コランダム公爵夫人のおっしゃる通りに。寛大で慈悲深いご配慮に心から感謝申し上げます」


 アヤナと一緒に部屋に戻る。


 二人きりになったので、本音を伝えることにした。


「アヤナ、頑張ってね」

「わかっているわ。夕食の時に質問攻めだってことよね」


 お母様がアヤナに泊まっていくように言ったのはただの親切ではない。


 コランダム公爵家が用意した持ち物が全て揃っているかを確認するのもあるけれど、古城でどのようにすごしたのかを詳細に聞き出すためであることは疑いようがなかった。


 私は夏休みに離宮へ招待されたけれど、冬休みは王宮に招待されなかった。


 春休みは古城に招待されたので両親はとても喜んだけれど、全ての招待を受けているアヤナに対しては招待にふさわしい所持品を用意してあげたという恩を売っている。


 当然、アヤナはその恩を返すべく、情報提供をしなければならない。


「でも、今回はイマイチなイベントだった気がするのよ。コランダム公爵夫妻が喜ぶような話題がなさそうじゃない?」

「狩猟の勉強なんて思わなかったわ」

「宴会だって女子だけはさっさと部屋に戻ることになったし、一人部屋じゃないから攻略対象者とのイベントだって起きないし!」

「レベッカと仲良くしていたかどうかを話せば?」

「無難に対応していただけだから。レベッカは口が堅いからダメね。マルゴットはおしゃべりだから、話を引き出しやすいわ」

「そんな感じはするわね」

「ルクレシアこそ、エリザベートと仲良くできたの?」

「もちろんよ。普通に仲良くしていたわ」

「どうしてよ?」

「雷魔法を教えてもらったからかも。私も浮遊魔法について教えたし。あの頃からちょっとずつ仲良くなった感じがするのよね」

「魔法の練習で仲良くなるなんて……ずるいわ!」

「アヤナも同じようにできない?」

「私は光属性しかできないわ。主人公だから当然の設定ね。むしろ、ルクレシアが火属性以外も使えるなんておかしいわ!」

「それはコランダム公爵家が誇る素晴らしい系譜のおかげだと思うわ」

「悪役令嬢はチートでいやねえ」

「チートだったら速攻で使えるようになっているわよ! 私の血のにじむような努力の結果だわ!」


 遠慮がない会話が続く。


 アヤナといる時間は私らしくいられる時間。


 アヤナもそうだと嬉しい。


 こうやってずっと仲良くしていけたらいいなと思った。





 四月。


 二学年に無事進級、特級クラスになるという書類が届いた。


 そのことに喜んだあと、王宮で公式発表があったとわかった。


 それはアルード様の婚約者候補について。


 アルード様の婚約者候補からルクレシア・コランダムがはずれ、新たにレベッカ・アクアーリ、アヤナ・スピネールが婚約者候補になるという内容だった。



 二章はここまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ